石川啄木の短歌が「今の言葉の歌」に!! とにかくおもしろくて笑えます

公開日:2012/5/21

石川くん

ハード : PC/iPhone/iPad 発売元 : 集英社
ジャンル:小説・エッセイ 購入元:電子文庫パブリ
著者名:枡野浩一 価格:432円

※最新の価格はストアでご確認ください。

「石川くん」と言われて、すぐに「石川啄木」を思い浮かべる人は、まずいないと思います。「石川くん」なんて言ったら、ちょっとなれなれし過ぎますものね。

ところが、「石川くん」というタイトルのこの本は、歌人である枡野浩一さんが、石川啄木への愛と尊敬を込めて、石川啄木の短歌を紹介したものなんです。「愛と尊敬を込めて」と書きましたが、その愛情の裏返しといいますか、この本で著者は、「石川くん」をちょっとからかったり、石川くんの遊び人ぶりを暴露したりしています。

advertisement

「友達が俺よりえらく見える日は
花を買ったり
妻といちゃいちゃ」

これが本書で紹介される1作目の短歌。この本ではまず、枡野浩一さんが、石川啄木の短歌を現代風にわかりやすく、そして、ちょっとおもしろく、書き換えているんです。書き換えた短歌の後には、元の短歌が縦書きで、そして、さらにその後に、横書き(カタカナ)で記されています。石川啄木の短歌は、「当時の普通の言葉」が使われているという点で実験的な作風として知られていたのですが、その石川啄木が今の時代に生きていたら、どんな言葉で歌をつくるのだろうと考えた著者が、その短歌を「今の言葉の歌」に変身させてみたというわけです。

この本、とにかく、おもしろく、笑えます。エッセー風の文章で短歌の解説や石川啄木の仕事ぶり、私生活がつづられているのですが、女好きで、仕事をさぼりがちで、繊細で甘えん坊の「石川くん」の様子がおもしろおかしく語られます。若くして初恋の人と結婚し、ろくな稼ぎもないままに、妻子をほったらかし、女遊びにうつつを抜かす「石川くん」…。でもなんだか憎めない、非凡な才能の持ち主。そんな石川くんの姿が、朝倉世界一さんによるかわいらしいイラストで随所に描かれていて、この本をさらに楽しいものにしています。

本書は、インターネットの「ほぼ日刊イトイ新聞」に2001年5月から7月にかけて、連載されたものが元になったものです。ちょっとした空き時間に1話づつ読むのにもぴったりですよ。


第1回「石川くんと妻」から始まる本書。タイトルにはずらっと「石川くん」の文字が並びます

まずは「今の言葉の歌」に変身した「石川くん」の歌が登場

次はオリジナルの「石川くん」の歌

その次はカタカナ横書きの「石川くん」の歌

このゆるーい感じのイラストがなんともいいですね