欲にまみれた世界で少年が手に入れたかったものとは…

公開日:2012/6/17

異域之鬼 (1)

ハード : PC/iPhone/iPad/Android 発売元 : 講談社
ジャンル:コミック 購入元:eBookJapan
著者名:由貴香織里 価格:540円

※最新の価格はストアでご確認ください。

舞台は帝都・東京。大震災から2週間後に奇跡的に救出された孤児・ソラト。男爵家の跡継ぎ我藍(がらん)の計らいで神近男爵家の使用人として引き取られることになる。我藍とソラト、そして我藍の許嫁の清らは身分の垣根を越え、友情を誓い合う。しかし、永遠の命と最高の権力を欲した神近男爵のたくらみによって、その友情は変化していく…。

advertisement

著者・由貴香織里さんと言えば、個人的に『天使禁猟区』が思い出される。禁じられた切なき恋、抗うことのできない運命…。まだ2巻までしか読むことができていないが、かつて感じた心を絞られるような痛みを感じさせられる作品だ。

最初は不穏な空気を感じさせつつも、3人の穏やかで楽しげな雰囲気が描写されているが、じきにその様子には暗雲が立ち込め始める。我藍は清らを愛していて、清らは…そしてソラトは…。空回る恋心がなんとも切ない。

人は嫉妬する生き物だし、自分の欲のためになら手段を選ばないことも多々ある。大なり小なり、私たちだってそうだ。しかし、それがエスカレートすると自分の欲の前では人のことなどどうでもよく、思いやりも優しさもすべて忘れて鬼と化す。その欲に抗うための小さな愛はなんとも美しく、儚い。

欲の権化と化した神近男爵によって、ソラトたちの関係はいとも簡単に崩壊してしまう。そして、「ワルプルギスの悪夢」ののちにソラトが選んだ道とは…。

天使、悪魔。
過去、現代。

さまざまな線が絡み合う中でソラトが手にするのは愛か絶望か…。
幼き背徳の愛が心をつかんで離さない。


マイペースで能天気な清ら

清らと我藍を常に見守るソラト

優しい我藍だったが…? (C)由貴香織里/講談社