センスのあるナンセンスなヨタ話。それがSF

ライトノベル

公開日:2012/6/18

日本以外全部沈没

ハード : PC 発売元 : オンライン出版
ジャンル:小説・エッセイ 購入元:電子書店パピレス
著者名:筒井康隆 価格:105円

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「もし〇〇だったら…」というのは誰しも1度は思い描くものです。
そして、その想像力がSFという分野を生み出し、今日まで発展させてきました。
もし時間旅行ができたら、もし怪獣が現れたら、もし宇宙人が居たら。そのバリエーションは尽きることがありません。
そんな空想の内のひとつ。
本作は、もし日本以外の大陸が沈没してしまったら、というものです。

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おわかりの通り、小松左京先生の“日本沈没”のパロディでありますが、その様相はまったく異質なものになっています。
ポンピドーやインディラ・ガンジー、毛沢東にニクソン、ローマ法王と、各国の要人達は揉み手すり手で日本の領土をねだり、フランク・シナトラやエリザベス・テイラーなどの映画スターは邦画への生き残りを賭け、必至で日本語を学ぶ始末。
日本人はカタコトの日本語で皆に媚を売られまくり、気づけば貴族階級に等しい存在であり、国連加盟国だって日本のみです。
ブロンソンは工事現場で働き、アラン・ドロンはクラブのボーイです。田所博士は相変わらず酔っ払っています。

と、書けば書くほどホラ話のようですが、事実です。いや、もちろんフィクションではありますが。

著名人の見本市とどんちゃん騒ぎの裏で、痛烈に皮肉られた国家観が入り乱れる様子は本作ならではです。
なんというか、実に清々しい。サイエンス・フィクションというより、スラップスティック・フィクションと言うべきでしょう。
文字通り、世界規模で人類をひっぱたき、読み手の価値観もひっぱたく。

…SFといえば、筒井先生はSFというジャンルについてこんな事を言っています。
「SFはホラ話だと思っている。同じホラふくなら、でっかいホラほどいいわけで、シリアスなSFというのは真面目な顔してヨタとばすあのおもしろさに相当するのだろう。とにかく物事は徹底していたほうがいい」

あぁ、実に痛快見事です。狂気とは対をなす、もうひとつの筒井ワールド。
本気のヨタ話をどうぞご覧アレ!


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