ヒストリーは始まったばかり。同世代人なら、1冊は読むべきジョブズ本

更新日:2012/9/11

ジョブズ伝説 アートとコンピュータを融合した男

ハード : PC/iPhone/iPad/WindowsPhone/Android 発売元 : 三五館
ジャンル:ビジネス・社会・経済 購入元:eBookJapan
著者名:高木利弘 価格:1,543円

※最新の価格はストアでご確認ください。

アップル信者でもない私がこの本を手にしたのは、単なるミーハー的な興味があったからです。
確かにアップル製品はかっこいいしすごいけど、若くして亡くなった才能、というぐらいにしか認識しておらず、彼の亡き後、この手の本や記事が増えるのもマーケティングから言えば当然のこと。そんなクールな気持ちで読み始めたのですが。総合評価に5をつけてしまうほどの読後感でした。

advertisement

ヒストリーはその人が亡くなってから始まる、という言葉を実感した1冊です。ジョブズのサクセスストーリーは、映画や漫画にしてもおもしろそうな成功あり、挫折あり、数々の逸話あり、それだけでもおもしろい。でもこの本が読者に伝えようとしているのは、彼の人生への三面記事的な興味ではなく、いかにジョブズの視点と執念と哲学が私たちの日常生活に影響を及ぼしているか、及ぼそうとしているか、ということ。その製品づくりに貫くビジョンの広汎性、人類の将来の「ものの見方」「感じ方」までをも変えてしまう可能性を含んでいます。

アップル製品に貫かれる美学は、日本の禅の思想や職人意識にも共通するものが多いとあって、私たち日本人はことにグイグイと彼のやり方に惹きこまれてしまう。実際のジョブズは相当に波があって気性の激しい人だし、自分が「こうしたい」と思ったことは、何が何でも押し通す(座り込んで動かない、という手段もたびたび)その意地の強さ、傲慢さ、尊大さ。「こういうボスだったらやだなぁ」と思うシーンも満載です(笑)。それでもなお、魅力とカリスマを放ってやまないジョブズ。その影響力は彼が作ったモノや思想がいかに私たちの未来を変えてゆくか、そのすごさだと思うのです。

自分で作った会社を追い出されても、あきらめない、盲目的な信念の強さ。挫折から返り咲く執念。彼の業績は一過性のものではない、こんな風に何かに賭けた人生は本当に幸せなのではないでしょうか。


若かりしころのジョブズ。プレゼン力は天性のもの

iPhoneの発表。スマートフォンの登場は確かにコミュニケーションの仕方をラディカルに変えました

仕事一辺倒な人だったわけではありません。プライベートも波乱万丈

著者の考察が冴える最終章