駅マニアふたりがお薦め駅舎を一挙紹介。熱い鉄魂が待合室から溢れ出る!

更新日:2012/6/26

すごい駅

ハード : PC/iPhone/Android 発売元 : KADOKAWA / メディアファクトリー
ジャンル:ビジネス・社会・経済 購入元:BookLive!
著者名:横見浩彦 価格:669円

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テツ(鉄道ファン)にもいろいろあって、「撮り鉄」「乗り鉄」「車両鉄」「時刻表鉄」「模型鉄」「廃鉄」などに分類されるのだそうだ。では、駅舎が好きな人のことは何と呼ぶのだろう? 駅鉄? とまれ本書は、そんな駅好き二人がお薦めの駅舎を紹介する対談集である。

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対談する二人は、かたや秘境駅訪問家の異名を持つ牛山隆信氏、かたは日本全線前駅乗降達成者(!)の横見浩彦氏。この猛者たちが「ここはすごいぞ、いっぺん行っとけ」という駅を95カ所を紹介している。数が多いだけあって一駅に費やされる文字数は少ないが、どこも写真付きだし、短いぶんお薦めポイントが明確だ。分類は「木造駅舎の駅」「一風変わった駅」「景色の素晴らしい駅」「秘境駅」「海辺の駅」「オイシイ駅」「終着駅」「鉄道ファンなら訪れたい駅」「記憶に残る駅」の9項目。

珍しい食堂や美味しい喫茶店などが併設されている「オイシイ駅」などは鉄道に興味がなくても思わず行ってみたくなるし、「景色の素晴らしい駅」も同様。面白いのは「一風変わった駅」の項目で、神奈川県鶴見線の海芝浦駅は、改札を抜けると東芝京浜事業所の敷地内のため関係者以外は「出られない駅」だという。そんな駅があるのか! また「海辺の駅」の項にある神奈川県東海道本線の根府川駅には関東大震災の殉難碑があるそうだ。地滑りによって流された当時のプラットホームが今でも海中に眠っているという。

だがしかし、そんな興味深い情報や一般読者向けお役立ち情報はごく一部である。あとはひたすらテツ魂がほとばしる! ここの待合室は泊まるのにいいとか、愛媛県松山市に行ったら大手町のダイヤモンドクロッシング(路面電車と私鉄線が直角に平面交差する場所)だけ見ればいい道後温泉も松山城も要らないだとか。読書好き・ミステリファンにはお馴染みの松本清張の超有名作に出てくる駅も紹介されるが「記念碑もあるけど、ぼくらは小説とかはよくわからない」と一刀両断。そのくせ鉄道職員が命を張って逆走列車を止めた三浦綾子『塩狩峠』についてはきちんと解説するという…。

つまりはテツ同士が気楽に語り合う居酒屋トークを聞いているようなものなのだ。非鉄に媚びない姿勢が気持ちいい。「タブレット閉塞」「アプト式」「Ωループ」「逆Z型スイッチバック」などの用語がばんばん飛び出す(解説のあるものとないものがある)。でも次第になんとなくわかってくるから不思議だ。ただ、言葉の意味はわかってもそれのどこが良いのかは非鉄には皆目わからないのだが(笑)、そでいいんだろう。本人も巻末で言っている。「常識人から見ると『なんてバカバカしい行為なんだろう』と思われることでしょう。ですが、本人たちはその行為が楽しくて仕方ないのです」と。なるほど納得。興味深い各駅の情報もさることながら、対談するふたりの楽しそうな雰囲気がやけに読者の印象に残るのが、その証拠である。


目次にはずらり駅名が。「特牛」という難読駅名や、宮崎県にあるのに「福島高松駅」というややこしい駅も

紹介されたすべての駅の写真つき

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※画面写真は紀伊國屋書店BookWebのものです