骨のある物語、かかってこいっ! という人に

ライトノベル

公開日:2012/7/24

サクラダリセット CAT,GHOST and REVOLUTION SUNDAY

ハード : PC/iPhone/iPad/Android 発売元 : KADOKAWA / 角川書店
ジャンル:ライトノベル 購入元:BOOK☆WALKER
著者名:河野裕 価格:609円

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別名、キャラクター小説といわれるようなライトノベルなんだけど、たまにキャラクターに依存しない小説もあるんだよ。という見本のような小説です。簡単に言ってしまうと、同じ3日間をぐるぐると巡る話です。ああ、タイムスリップものね。そんな風に思って読み始めると、裏切られます。いい意味で。

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物語はSFではなく、時間を3日分戻すことも含めて、すべて特殊能力によって引き起こされる事件を追っていくミステリー小説のような構成なんですよ。3日間を2回繰り返し、最後に1日送るので、ちょうど1週間のお話です。が、この世界にはいろいろとお約束がありまして。もっとも重要なのは、能力には「なにができるか」のほかに、「どっちが優先されるか」という上下関係のようなものがあります。「リセット」の1言で、状況は「セーブ」した地点に戻るのですが、そのことに気づけるのは「リセット」されてもそれ以前の世界の記憶を持ち続けることができる主人公ケイなど、ひと握りの人物だけ。だから、「世界は3日分死ぬ」というコピーになるんですな。

たぶん、「能力バトル」ものと読む向きもあるでしょう。でもちょっと異質ですよ。確かに、各キャラクターがそれぞれ能力を持っていて、それにはいろいろ細かい制約があって、ぶつかり合ったり協力したりして物語は進行します。でもね。これは評価指標の「入りやすさ」とも関係しているのだが、ライトノベルでバトルものだったら(いや、ライトノベルでなくても)、冒頭に倒すべき敵が示されないとまずいですよ。無目的な戦いになっちゃうから。

そして最初にいったように、主人公のケイもヒロインの春埼も恐ろしいほどに無個性なんですな。ふたりの視点を行き来しながら進んでいくのに、視点が切り替わったことに気づかないほど。とても中性的で、達成したい目的らしい目的もないままに進んでいくという、なんとも奇妙な話。それがいつの間にか、生きるか死ぬかの話にまで広がるのだから、よく練られた構成だよなぁ。


「なかったことになる」というタイムトラベルの解釈

特殊能力があって当たり前の街、という設定

その能力には、物語の構成上とても重要な約束事がある

猫助けから始まった能力を巡る話は、3日間を繰り返すたびにエスカレートして…