本物はブームとは関係なく始まっていた

公開日:2012/7/26

のりりん (1)

ハード : PC/iPhone/iPad/Android 発売元 : 講談社
ジャンル:コミック 購入元:eBookJapan
著者名:鬼頭莫宏 価格:540円

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ぶっちゃけ、物語は頭文字Dの旋律に、自転車を乗せたような話です。身も蓋もないけどさ。でも、そんな2匹目のドジョウ狙いの安い作品だと思ってもらっては困る! それだけは先にいっておきます。著者の自転車にかける思いは、深く、年季の入ったものだから。だからこそ主人公、丸子は巻が進むと自転車勝負をするのだが、彼が超えなければならない壁は高く険しい。まぁ、主人公に厳しいっていうのはバトル要素があろうとなかろうと、物語の基本ではありますけどね。

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絵柄はね。最近のアニメ絵を見慣れている目には、違和感があるかもしれない。
でも、決して下手なわけではない。それは自転車の絵を見れば分かること。キャラに癖があるだけで、デッサンはちゃんとしているから。それに何より、漫画としての完成度が高いですよ。だから知らず知らずのうちに気分はすっかり自転車族です。

子どもの頃って、漫画やアニメの影響を受けやすいですよね。おそらくそれと同じ現象が味わえます。ママチャリでもいいから、無性にペダルをこぎたくなるんだよねぇ。そして街を駆け巡っているロードに、自然と目がいくようになっている自分に気づく。

折も折。大震災以後、自転車ブームですよ。ひねくれている人だと、逆に触れたくないという気持ちが働くかもしれないけど、「どれ、はじめてみようか」という素直な人にはいい機会だと思うな。自転車を買わないまでも、関連書籍は多いです。知識を仕入れてから読み直すと、また違ったおもしろさが味わえる漫画です。もちろん、実際に走ってみればもっとこの作品を楽しめるんじゃないだろうか? なんて、都合のいい、買い物のいいわけを考えたりさせられる漫画です。


自転車を毛嫌いしていたローリング族の丸子だったが…

輪のひとこと(+免許取り消しの処分で)自転車をはじめることになる

通学はもちろん、しょっちゅう自転車に乗っている輪。ロードだけでなく、こんな自転車も乗りこなす

嫌いだったはずの自転車の魅力が、丸子の視点で丁寧に語られていく名場面 (C)鬼頭莫宏/講談社