過激でサディスティックな車椅子美少女がウソと“能力”で名探偵ぶりを発揮する

ライトノベル

公開日:2012/8/1

月見月理解の探偵殺人

ハード : PC/iPhone/iPad/Android 発売元 : SBクリエイティブ
ジャンル:ライトノベル 購入元:BOOK☆WALKER
著者名:明月千里 価格:473円

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正真正銘のラノベなのに、本格ミステリーで推理小説なのが、本作『月見月理解の探偵殺人』です。

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ヒロインは月見月理解。「つきみづき・りかい」と読みます。ヒロインの名前的にも表紙絵的にもラノベらしく、「理解の萌え属性はなにか?」なんて思ったとしたら、読者はそこから騙されています。ツンデレどころか、言うこと成すことが過激でサディスティック。挑発的。感情を逆なでする。萌えのカケラもないほどに、憎々しいヤツなのです。それなのに、なぜか魅力に引き込まれていく。

理解の不思議な魅力は、怪我と病気による2年ぶりの復学で…つまり年上女子の新しいクラスメイトであり、車椅子少女である、という新奇な設定に頼るものではなく。自己紹介の際に、「俺はお前らのような能なしどもと仲良くする気など、これっぽっちもねえ」と、美少女にも関わらず三白眼に近い目つきと毒々しい笑みをもって言い放つギャップ(さらに俺女である)に依存するものでもなく。出会って早々、主人公(男子高校生)にちゅーをしてくるエキセントリックさ頼みでも決してなく。呼吸をするようにつく嘘と明晰な頭脳、さらに“能力”を駆使して名探偵ぶりを発揮する補正に任せたものでもない。

思うに、理解の言動にはどこか影を匂わせるところがあり、不安定さ…危うさがつきまとう。本作はミステリーであり推理小説なので、物語のナゾが徐々に解明されていく様が非常におもしろいところではありますが、じつはそれ以上に「理解とはどういう人間なのか」を解き明かしていくところに、読者は興味を引かれるのでは。物語のラストでは、読者が納得する秘密が暴かれます。

デビュー作とはみじんも気づかせない、第1回GA文庫大賞・奨励賞を受賞したクオリティに、思わず舌を巻くはず。


本編前のこの絵(理解)は、うん、かわいいんですよ

雰囲気のある章タイトルデザイン

初めて顔を合わせるはずなのに、なぜか主人公を知っている様子の理解

顔ではなく唇を突如合わせた理解。主人公もクラスメイトたちも、あ然