恋に王道なんてない！？　十人十色の愛し方

私立桜蘭学院の生徒は1に家柄、2にお金。貧乏暇なしというけれど、つまりは金持ちは暇を持て余す。そんな暇を持て余す桜蘭学院の麗しき男子生徒たちが発足したのが「ホスト部」。同じく暇な女子生徒たちをもてなす。

そこに紛れ込んでしまったのは特待生の藤岡ハルヒ。うっかりホスト部にある花瓶を割り、弁償金800万円を払わなければならなくなってしまう。しかし、貧乏なハルヒにそんなお金はなく、返済のためにホスト部に奉公することに。天然のモテ術で着実に指名を増やしていくハルヒだったが、実は女の子で……？

2011年には実写ドラマ化、今年の3月には映画化もされている人気漫画である。ホスト部は当然のことながら麗しの男の子たちが勢ぞろい。それぞれに合ったキャラ作りをしており、もう女子生徒たちはメロメロ。そんなホスト部の面々は、個人差はあるものの、みんなハルヒが大好き。からかって遊んだり、チヤホヤしたり……しかし、普通の女子ならクラリと来てしまうところも、ハルヒはいたって冷静にスルーしていく。

イケメンに囲まれて逆ハーレムの素敵漫画なわけだが、最も強く感じられるのは、人の愛し方はさまざまなんだなぁ、ということである。ホスト部というぐらいだから、女の子たちをその気にさせるのには慣れているホスト部。しかし、気になる女の子を喜ばせようとしてしてもうまくいかない。ハルヒが規格外ということもあるが、おかげで常にヤキモキさせられてしまう。特に、指名率No1の環は愛情表現を全面に押し出しているものの、イマイチ空回り。ハルヒのほうも、その愛情に気付いている様子はなく……。

王道と言われる展開はあるが、絶対に成功する異性の攻略術というものはないんだということが分かる。物語自体はとてもポップでテンポも良い。ラブコメなんて読む気がしない……。辛い恋をしているせいで、そんなふうに思っている人にこそ、処方箋として読んでもらいたい作品だ。