日本が世界に誇るアニメ監督、今敏! 漫画家時代の1作!

公開日:2012/8/27

海帰線

ハード : PC/iPhone/iPad/Android 発売元 : 講談社
ジャンル:コミック 購入元:eBookJapan
著者名:今敏 価格:540円

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有史以来、人類は地球上のありとあらゆる場所を踏破、開拓してきました。そしてアマゾンの秘境や極圏と、地上を調べ尽くした後、その眼は宇宙へと向けられたわけですね。衛星軌道や月への到達を始めとして、ついに先日、探査機キュリオシティが火星に到達。凄い時代になったものです。

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―――とはいえ、地球上にもまだ未知の領域は残されています。特に海は、地球表面の70%を占めているにも関わらず、全体のほんの10分の1ほどしか分かっていないといわれています。いやぁ、ロマンですね。このロマン溢れる海が本作『海帰線』の舞台であります。

星野之宣のブルーホールや諸星大二郎の海神記などなど、海洋SF漫画は沢山ありますが、本作はどっちかというと海神記より。日本の漁師町を舞台に、「海人の卵」という古来から伝わる謎めいた御神体を巡る物語。海洋信仰をモチーフにした民俗SF作品ですね。

諸々はさておき、特筆すべきはやはり、本作が故・今敏監督の漫画だという所でしょう! 皆さんご存知の様に、アニメ映画『パーフェクトブルー』、『千年女優』、『東京ゴッドファーザーズ』に『パプリカ』の、あの今敏監督であります。(あと老人Zと妄想代理人も。ご存じない方は、すぐ作品をご覧になるか、日本人を辞めましょう)

ビルがグシャァっと崩れたり、街がドカンドカン爆発したりはせず、なんのことはない日常描写が多い本作ですが、1コマ1コマ、実に丁寧に描写されています。拡大してみても、描線がメチャクチャ綺麗。まるでアニメを見るようだ! というと、とっても薄っぺらく感じてしいますが、本当にアニメを見ているようなんですね。メリハリやリズムが絶妙にコントロールされていて、止まっているのに動いているっ! ページを捲るたび、コマを読み進む度に、今敏の映像ワールドに引きこまれ、5ページごとに監督の死を悼む気持ちに包まれたほどです…。なにやら関係ないところで涙腺が緩くなってしまいましたが、本作はそれほどに今敏そのままだなー! と感じました。

海人の卵とはなんなのか。そもそも海人(うみびと)とはなんなのか。実在するのか? と、テンポよく謎が謎を呼び、一気にダーッと読めてしまいますが、読めば読むほど遺作の『夢みる機械』が待ち遠しくなって、待ち遠しくなって…。


代々伝わる海人の卵

この横顔がまさしく今敏

犬もなぜか横文字で吠え出すぞ!
(C)今敏/講談社