いったいいくらもらっているのか、AV女優の経済学

公開日:2012/9/6

職業としてのAV女優

ハード : PC/iPhone/iPad 発売元 : 幻冬舎
ジャンル: 購入元:電子文庫パブリ
著者名:中村淳彦 価格:820円

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どうもアダルトな世界のお金の流れというのは謎めいたところがある。巷にきらめく風俗業からアダルトビデオまで、ワンタスクあるいはビデオ1本のギャラはいくらぐらいなのか、給料制かそれともトッパライか(トッパライというのは一仕事終えたらその場で現金で払ってもらう税金不明の芸能用語である)、だったら申告はどうしているのか、ボーナスや社員旅行は? とあふれる妄想に絶え間がない。

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なんか物凄い高額だったらどうしよう。まあ、どうしようというほどのことでもないが。そこで本書は、アダルトビデオ界において、女優さんたちが受け取るお金の話をまとめたものだ。アダルトビデオの経済学といった感じ。

まず話は、AV女優をめぐる状況からスタートする。90年代、アダルトビデオは社会のセーフティーネットの役割を果たしていたのだという。落ちこぼれたり、行き場がなかったりした人が、生活を維持するために飛び込む場所としての機能を持っていた。だからそこで働く女優さんたちの思いは、著者によれば、「早くぬけ出したい」「お金を稼いで足を洗いたい」というものだったそうだ。ところが最近は、仕事への恥ずかしさや後ろめたさはいっさいなく、「もっと長く続けたい」と考える人が圧倒的に多いらしい。

また、AV女優になるきっかけも、昔は路上にスカウトマンが立ち勧誘したものだったが、今は募集をかければいくらでも女性は集まってくる。しかも昔と違い、ギャラは1本数万円という報酬で、とてもそれだけで生活を営むには足りないのである。なんで? という謎は本書でお読みいただきたい。

さて、女優さんたちのギャラ。AVについて知らぬ人はまったく知らぬだろうけれど、業界にはおおまかに3つのステイタスがある。「単体」「企画単体」「企画」というものだ。「単体」とは、たとえばタイトルに名前が出たりして、女優さんの魅力だけで売ろうとするパッケージ。「企画単体」とは、さまざまなフェチを演じた上で「その道」のプロとして活躍する、いってみれば「色物」だ。「企画」は、フェチシズムがメイン、女優さんの魅力は二の次で時には複数の女優と共演という形になったりする。で、この3つをさらに5つの例にわけで、具体的な金額を示しているところなんか、長くこちら方面の取材を続けてきた著者の独壇場だ。

たとえば、デビュー半年でメーカー契約が継続中の人気単体女優の場合。DVD撮影のギャラは200万だが、それは事務所に払われ2割から3割が女優さんの懐に入る。あわせてプロモーションの雑誌撮影や握手会のギャラを込みで、月収95万円いったところ。もちろんこのあとこの女優が売れるか、鳴かず飛ばずかで金額は上がりも下がりもするというわけ。このギャラ、高いのか安いのか。とにかく、エロティックな想いでなく、純粋にこの「職業」に興味を持たれた方は、読んでご損のない1冊である。


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目次は細かく立てられ、情報量も豊富