ワカメちゃんは今パリに住んでいる

小説・エッセイ

更新日:2018/5/14

ワカメちゃんのパリのふつうの生活

ハード : Windows/Mac/iPhone/iPad/Android/Reader 発売元 : 講談社
ジャンル:小説・エッセイ 購入元:紀伊國屋書店Kinoppy
著者名:長谷川隆子 価格:1,080円

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「“居心地のいい場所”を見つけられたのはひとえに伯母のおかげ。」

長谷川たかこ氏とは、国民的アニメ『サザエさん』に登場するあのワカメちゃんのモデルとなった人物だ。父を亡くし、母が実家に戻ったために、伯母の長谷川町子氏と15年間生活を共にしてきたのだという。

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「伯母は『サザエさん』の新聞連載をしていたから、そのリズムで生活が回っていた。伯母は朝から書斎に閉じこもって翌日の4コマを練っている。(中略)家には社員の人も遅くまで出入りしていたし、私は会社と漫画家アトリエで育ったようなもの。」

そこから、彼女は、伯母の取材旅行にくっついてフランスに行ったことをきっかけに、フランスに強く惹かれ、誰一人知り合いのいないパリに住むことを決めた。現在、夫と高校生になる娘と猫、三人と一匹で暮らしながら、執筆の仕事や、フランス・ベルギーのバンドデシネの翻訳などをしている。そんな彼女が、妻、母、一人の日本人といった様々な視点から、フランスでの生活をつづったのが本書である。

ワカメちゃんは今、どんな生活をしているのだろう。そう思いながら読みすすめてみる。

例えばお気に入りのカフェの話。
「私が好きなカフェ、まずサン・シェルピスひろばの『カフェ・ド・ラ・メリー』(区役所カフェ)。パリに住み始めたころ―――つまり25年以上前、何ヶ月かこの近くの屋根裏部屋に住んでいた。その後、1年くらい続いた恋人が裏道に住んでいた。若い頃(!)の思い出が詰まった懐かしい場所。」

例えば娘の授業の話。
「授業時間が一番多いのは国語。ヴィクトール・ユゴーやゾラ、モーパッサンなど文豪の作品を読んで感想文を書いたり、詩の暗誦もよくやっている。私もよく暗誦に付き合い、おかげで詩をたくさん読んだ。」

例えば買い物の話。
「朝市では浮気せずに店を決めて常連になるのが賢い。お店の人が感じがいいだけでなく、初物の苺とかパイナップル半分とか、いつもお土産をもらう。」

このようなタッチで、パリの現在の事情や、フランス人の様子などについて、自分の体験をもとに淡々と語っていく。ひとつひとつの何気ないエピソードや、家族について語る話などは、あたかも、日曜日の夕方のあのお茶の間アニメ番組を思い起こさせる微笑ましいものだ。これを読んで、ワカメちゃんの暮らすパリの日常をのぞいてみてはどうだろう。


伯母・長谷川町子氏との思い出エピソードなども

パリの移民事情など私たちが普段触れない情報も

現在のワカメちゃんとその娘さん

随所にポイントをまとめた図案あり