陽のハリポタと対をなす、陰のファンタジー児童文学超大作

小説・エッセイ

公開日:2012/9/18

ダレン・シャン1 奇怪なサーカス

ハード : PC/iPhone/iPad 発売元 : 小学館
ジャンル:小説・エッセイ 購入元:電子文庫パブリ
著者名:ダレン・シャン 価格:712円

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やはり『ハリー・ポッター』と比べてしまうのは、凡人の性といいますか。ファンタジー児童文学作品といえば『ハリポタ』があまりにも有名ですが、書店でもよく見かける、こちらも人気の『ダレン・シャン』。ハリポタと違って「ダークだ」「不気味だ」などと評されますが、遅まきながら電子書籍で初読しました。

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読んでみて面食らったのは、私だけではないでしょう。よくハリポタと比べたもんだと思いました。確かに同ジャンルにカテゴライズされるのかもしれませんが、作風は真逆。ハリポタが優等生作品なら、ダレン・シャンは悪ガキ作品。確かに、ハリポタにも悪ガキは登場するし、ダークなシーンや不気味・過激・グロい描写もありますが、ダレン・シャンのように主人公やメインの登場人物がここまで明確に悪意を持ってウソをついたり、人を陥れたり、盗みを働いたりするまではいかないでしょう。
「子どもは純粋でかわいい」という幻想を持っている大人ほど、リアルな子ども像にショックを受け、ハリポタに「いい子ぶりっこ」と抵抗感を抱く斜に構えた子どもならダレン・シャンにこそ「わかるわかる」と共感を持つ。いわば、ハリポタを陽とするなら、ダレン・シャンは陰。そんな作品です。

本作は現代で起こるバンパイアの物語です。超大作シリーズの第一作目である本作では、『奇怪なサーカス』のタイトルどおり、サーカスが大きな舞台になります。ただし、そこはダレン・シャン、普通のサーカスではありません。フリーク(=異形)のサーカス。つまり、異形の者たちを見世物にするショーなのです。登場するのは、不気味な狼人間や、ガリガリでガイコツそのものの男であったり、顔中からひげを出し入れ自由な奇妙な女、など(こんなサーカスの開催はPTAから苦情が…というような一幕はリアリティ重視の作中でもしっかりとなされています。さすが!)。そして、登場するフリークには本物のバンパイアが混じっており、主人公のダレンは望まず日常の生活を手放すことになります。

いつの世も、大人が勧めるものより、「ダメ」と規制したり禁止したりするものに興味を持つのが子どもの特性。なぜなら、子どもは好奇心が旺盛で、同時に本質を見抜く目を持っているからです。「この内容はアウトだろう」「この表現は子どもにとって有害では?」がオンパレードの本作を、勇気がある人はぜひどうぞ。


「ぼくは昔からずっと、クモが好きで好きでたまらなかった」。はじめに長々と語られる、主人公のクモに対する執着心。これはフラグです

ページの中にフリークサーカスのチラシ画像が。こういう遊び心が感じられる仕掛けも読者の心をくすぐる

チラシをアップ

フリークのサーカスに行くか行かないか。善悪の間で揺れ動くが、結局は、友人の「行こうぜ!」の一声で決心。主人公たちの運命も決まる