10代の繊細な心情を短歌と短編小説で表したキラメキボックス

小説・エッセイ

公開日:2012/9/21

ハッピー☆アイスクリーム

ハード : PC/iPhone/iPad 発売元 : 集英社
ジャンル:教養・人文・歴史 購入元:電子文庫パブリ
著者名:加藤千恵 価格:378円

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2001年、17歳にして短歌集『ハッピーアイスクリーム』を世に出して、作家デビュー。10代の繊細な心情を5・7・5・7・7の5句体で表した処女作は、同年代だけでなくオトナまで幅広い層の支持を集めました。本作『ハッピー☆アイスクリーム』は、『ハッピーアイスクリーム』に収録された短歌に5編の短編小説を加えたリミックス版。

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青春の「甘酸っぱさ」「もどかしさ」「恥ずかしさ」「不安」「孤独」「ドキドキ感」などが、平易かつ繊細に描かれた、透明感あふれる短歌+短編集です。作者がつむぐ言葉一つ一つを形容すると、まさに宝石のように「キラキラ」。このきらめきに触れた『ハッピーアイスクリーム』のファンが「定期的に何度も読み直したくなる」というのに、納得してしまいます。

「上手い短歌」「共感を呼ぶ短歌」と、短歌を乱暴にも2つに分けるとしたら、本作は間違いなく後者に当たります。

そもそも、詩歌というのは、早熟の作家を生みやすいジャンルだと言われています。石川啄木、中原中也、金子みすゞ、宮沢賢治など、早い時期から詩歌の才能を発揮した国内作家はみなさんの知るところでしょうし、海外に目を移すとアルチュール・ランボー、ポール・ヴェルレーヌなどが代表的な例でしょう。

私事で恐縮ですが、私が教えているクリエイティブ系専門学校・作家専攻の学生たちは、語彙力強化の目的も兼ねて、授業毎、川柳制作に取り組んでいます。出来上がる作品を見ると、「こんな着眼点もあるのか」と驚かされることが珍しくありません。

短歌や俳句、川柳などは音のリズムに制約があることから、語彙の豊かさや句のつなぎ方などテクニックが重要ではありますが、制約があることで逆に、作者の偽らざる素直な気持ち、言うなれば心の中に眠っているすっぴんの言葉が、知らず知らず紙の上に引き出されるのかもしれません。

傷心なリアル高校生、青春時代をふと振り返ってみたくなったオトナともに、本作の一読をオススメします。


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