金正男氏の素顔から見えてくる北朝鮮

公開日:2012/9/21

父・金正日と私 金正男独占告白

ハード : PC/iPhone/iPad/WindowsPhone/Android 発売元 : 文藝春秋
ジャンル:ビジネス・社会・経済 購入元:eBookJapan
著者名:五味洋治 価格:1,155円

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金正男との150通ものメールのやりとりに成功したジャーナリストが記した、「ドキュメンタリー」といえる一冊。空港で偶然に金正男を見かけた記者が自分の名刺を渡したという、シンプルなきっかけにもかかわらず、金正男がじわじわと記者に心を開いてゆき、二人の間に記者・取材対象者という絆以上のものが育ってゆく様子が実は、この一冊の醍醐味のひとつでもあるかもしれません。

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金正男が、メールの終わりに必ず、相手の健康を気遣ったり、よい休日をという一フレーズをかかさないこと、なかなかのユーモアセンス。故国の状況如何で中断されてしまい、消息がわからなくなってしまうやりとりの不安定さ。その中でも、「放蕩息子」「酒好き」「女好き」「刺青をしている」などなどマイナス材料のイメージばかりで固められていた正男氏の素顔が見えてくる、手記の迫力が満載です。

記者が韓国語を扱えるというのも、素晴らしいエッセンスとなって光っている気が。何より、正男氏のメールの翻訳がとても丁寧で、記者の正男氏に対するリスペクトの姿勢がうかがえます。その上で、記者として突っ込んだ質問を加えてゆく、そのプロの手法が素晴らしい。五味氏は結局、正男氏に1度、ロングインタビューに成功、その後も一度、二人で杯を重ねる機会を得ています。二人の会合の際の状況描写から、正男氏の孤独も垣間見え。

ゴシップ的な興味本位で手に取った本だったのに、「うーん…。人生は深い」と思ってしまうような、意外性も高く、北朝鮮時事問題に興味がない人でも十分に楽しめる一冊です。北朝鮮にまた別のイメージを重ねるためには必読の書。


海外生活が長い正男氏は、三代世襲もスパッと批判

もちろん、自由に発言をすると「警告」があり、メールが途切れることも

二人が会うシーンは、メールのやりとり主流の本書ではどきどきな場面
(C)Yoji Gomi 2012