政策と結果重視の政治評論家が明らかにする「マスコミの寵児」の素顔

小説・エッセイ

更新日:2012/9/26

「橋下徹」ニヒリズムの研究

ハード : Windows/Mac/iPhone/iPad/Android/Reader 発売元 : 東洋経済新報社
ジャンル:ビジネス・社会・経済 購入元:紀伊國屋書店Kinoppy
著者名:森田実 価格:1,296円

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物議を醸す言動は多いが、いまなお大衆の絶大な支持を得ている政治家、橋下徹。その辛辣な発言は海外紙でも報道され、ひとつの勢力として注目を浴びている。しかし、彼の政治論にアジテーションはあれど、未来への具体的な政策が語られることはない。しかも、彼の政策で貧しくなるであろう弱者こそが彼のコアな支持者層であり、その状況はネオリベ的政策に大衆が熱狂した小泉時代に酷似している。

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この本の著者である森田氏は、それらの実情を平易な言葉でひとつひとつ丹念に書き出してゆく。そして橋下氏の人となりを『橋下語録』(産経新聞大阪社会部/産経新聞出版)などの書籍から読み解いてゆく(ここで、書籍の分析は本人の分析となりえないと反論する人がいるとすれば、その反論はまったく無効であるとお伝えしたい。書籍を発表するということ、あるいは本人が書いたものではなくても、原稿に発表の許可を与えるということは、メッセージを発したことに等しいからだ)。

橋下氏は元々マスメディア出演が多い弁護士だった。が、2007年に大阪府知事選に出馬以降、とんとん拍子の御成功ぶりは皆さんご存知の通りだ。彼のタレント時代についてはいっさい触れられていない。ただ、政界デビュー後、マスメディアの後押しで彼の自我が巨大化した過程が指摘されている。巨大化の反対には評価の矮小化があり、その被害にあったのは前大阪府知事や堺市知事であったことも。

既成政党がなぜ彼にすり寄ってゆくのか、彼の人気はどこでどのように作り出されたのかについても緻密に分析され、世相批判としても興味深く読んだ。メディアに流されるのではなく、自分で考えて政治を変えるために投票したい人にとっては必読の書だろう。


火事場泥棒的成功の陰には、もはや慢性的となった大阪府の不況がある

嘘つきと自称していた人物をどこまで信用していいのか

思想調査は重大な憲法違反。しかし「視聴率の取れる」政治家は批判を免れた

TVの恣意的な批判により前大阪市長陣営が冷え込んだエピソードも語られている

橋下には具体的な政策がなく、大阪市政の結果もいまだ出ていない