人に共通して平等に与えられたのは『伝える術』

小説・エッセイ

公開日:2012/10/25

お手本なしの人生―『1リットルの涙』亜也の詩

ハード : Windows/Mac/iPhone/iPad/Android/Reader 発売元 : 小学館
ジャンル:小説・エッセイ 購入元:紀伊國屋書店Kinoppy
著者名:木藤亜也 価格:594円

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ドラマ化・映画化・書籍化を繰り返し、今もなお多くの人の心で命を燃やし続けている木藤亜也さん。
私が「脊髄小脳変性症(セキズイショウノウヘンセイショウ)」という病を知るキッカケとなったのは、亜也さんが魂を込めて残し続けた言葉たちに感銘を受けた、小学6年生の頃でした。

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亜也さんは、この病気の進行と共に歩くことが困難となり、次第に手足が自分の思い通りには動かず、食事をすることも、喋ることも、文字を書くことも難しくなっていきました。症状は少しずつ、でも着実に進行をし、1988年に25歳という若さで生涯を閉じた今も、彼女の言葉たちが人々に伝わり示してくれることは多くあります。

今作は亜也さんの綴った詩たちが、時折、写真と実際の文字を交えて書かれています。彼女から放たれる想いの数々は、良くハテナが向けられます。そのどれもに「どうして」「なんで」「教えて」と、訴えかけられているようで、ページを捲る指が途端に進まなくなることもありました。そこに並ぶ一文字一文字が“私はここにいるよ”と、脈を打つように存在しているし、言葉が、想いが、悲鳴が、今も生き続けているのです。

方言や亜也さんの口癖、人柄を象徴するかのような、偽りのない真っ白な言葉たちがきっと人々の心を動かしていくのだと、再確認した書籍でした。


「動けん お金も儲けれん 人の役に立つこともできん」
愛知県豊橋市出身の亜也さん。私の縁の地でもあります。亜也さんの言葉が心を抉るようにじわじわと浸食していくのは、私自身も聞き慣れているこの飾らない言葉の言い回しが、作られたものではないことを表しているからです

当たり前を特別なことだと気付かせてくれる亜也さん。こういうひとつひとつの有り難みを、忘れずにいたいです

亜也さんが残してくれた言葉たちは、日々の在り方を見つめ直すキッカケにもなります