鳥山明の本領を『ドラゴンボール』ではなく『Dr.スランプ』に見た
更新日:2015/9/29
鳥山明といえば、『ドラゴンボール』と『ドラゴンクエスト』(のキャラクターデザイン)なのである、僕にとっては。夢と冒険、仲間との友情、ライバルとの対決、そこで味わうワクワクとドキドキ。男の子にとって大事なことは、大体ドラゴンボールが、ジャンプが教えてくれたのだ。
そんなわけで、世代がちょっとズレるというのもあるけど、僕は漫画『Dr.スランプ』を連載中に週刊少年ジャンプで読んだことも、単行本でも読んだこともなかった。まだアニメ『Dr.スランプ アラレちゃん』のほうがなじみ深い。「キーン」とか「んちゃ」とか言いながら、大きな眼鏡をかけた女の子(ロボット)がウンチを突っついたり、山をふっ飛ばしたりする。このギャグ漫画に対する印象はそんなものだった。
ところが、だ。
鳥山明はこっちが本職なのではないか、とさえ思った。
出し惜しみのないギャグ、しょうもない発明品、奇想天外なキャラクター、それでありながら漂う牧歌的な空気。すべてを下支えするお下品パワー。
初めて読んだのにもかかわらず、ギャグ漫画の原風景(僕にとっての)を見ているようだった。この感覚、同世代の男性諸氏には必ず分かってもらえると確信している。
それと、強烈なキャラクターの陰に隠れがちだが、則巻千兵衛(28歳。そう28歳!)が生み出す発明品の数々にも注目してほしい。
・非生命体透過メガネ
・デカチビ光線銃
・タイムスリッパー
・ホンモノマシーン
・みらいカメラ
・バーバーマン
『ドラえもん』の影響を受けているのだろうが、そこに『Dr.スランプ』ならではギャグ性が加わっていて、実に胸がときめいた。子どもの「こんなのがあったらいいな」という夢が詰まっているのだ。それは、ものごとをおもしろおかしく考えることを改めて教えてくれる。つまらない大人(=僕)に冷や水を浴びせられた気分。
1巻を読み終わった。しかし、ニコちゃん大王もドクター・マシリトもオボッチャマンもまだ登場していない。この先、ペンギン村で「どんなことが起こるかな♪」。実に楽しみだ。
「鼻の穴がないのは、漫画だから」。この手の遊びも各所に見られる
リアルスタイルの則巻千兵衛
則巻千兵衛が発明品を生み出すのは大体一瞬である
発明品の利用法を解説。こちらは「デカチビ光線銃」
とある回の扉絵。めちゃんこ絵がうまい