学園モノで「女の逞しさ」を描き続けた少女漫画家が送る、中華の新境地!

公開日:2012/11/6

二の姫の物語

ハード : PC/iPhone/iPad/Android 発売元 : 小学館
ジャンル:コミック 購入元:eBookJapan
著者名:和泉かねよし 価格:432円

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本作は、現在全国の書店を賑わせている和泉さんの『女王の花』の礎となったとも言える読みきり漫画。和泉さんと言えば、『そんなんじゃねえよ』『ダウト!!』『メンズ校』などで、今も昔も少女達から揺るがぬ人気を誇ってきた漫画家のひとりです。恋に生きる「女の逞しさ」おもしろおかしく、しかし巧みに描き続けた方。
小学館が誇る少女漫画界の女王がデビューから10年、「プロとして求められるものを優先させてきたが、デビューから10年が経ち、そろそろ描きたいものを描いてもいいだろう」と手を出したのが、本作、中華時代モノなのです。

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千里の馬(才のある者)と呼ばれていた青推【せいすい】が、愚図姫の異名を持つ二の姫に仕えるところから物語は始まります。次の王候補である「一の姫」でも、甘え上手の愛され上手な「三の姫」でもなく、愚図でのろまで臆病者の「二の姫」に忠誠を誓い、彼女を立派な姫に育てようと決心するのです。
愚図姫サクセスストーリーかと思いきや、ここはモチロンの少女漫画、しっかり恋愛展開もございます! お互いを恋しく思う2人なのですが、そこにそびえる身分の違いという壁。そんな中、戦場で命の危機が! こういう王道展開ってやっぱり燃えますよね~(笑)

和泉さんといえば、文頭にも書いた通り、「女の逞しさ」を描くのが非常に巧みな方です。特に、普段は控えめな主人公が窮地に立った時の「雑草魂」から来る魂の叫びが素晴らしい。それに魅了されるからこそ、少女達はこぞって和泉漫画を読むのです。そしてそれは、学園モノではない本作でも、これまでとはまるで違う展開で遺憾なく発揮されました!

とある場面で二の姫が開き直って(才に目覚めて)からの、ファン待望の和泉節! 四面楚歌の状況から二の姫を逃がすために、しんがりを買って出る青推。初めて荒げられた“愛する者を護るため”の“上に立つ者として”の二の姫の言動に、身震いせずにはいられません。「待ってました、姫かっけえぇ!!」と思わずガッツポーズを取ってしまいました(笑)

『女王の花』では主人公の生い立ちや野望、王族としての立場、身分違いの恋愛の葛藤、立ちはだかる国々の争いなどが、これホントに少女漫画か? と疑いたくなるほど深く、感動的に描かれています。本当は星5つにしたかったのですが、読みきりの本作と長編の『女王の花』を比べると…というのを鑑みた上で星4つにさせていただきました。「思ったよりも展開がサラッとしてたなぁ」と思われた方は、ぜひそちらも読んでみてください。


ハッとするような美しいイラスト。男性向けの絵が苦手で歴史モノを読まなかった少女達を見事に惹きつけます!

父親に愚図姫に仕えろと命じられ、全力で拒否する青推少年

宮女ふぜいに無礼な口をきかれて、布の裏に隠れてしまう幼い二の姫

二の姫を一の姫に「無能」と罵られた青推の言葉「我が志は天に届かずとも 地を舐めはいたしますまい 我が主は二の姫様にて 主をいじめる無礼者に下げる頭が どこにござりましょうや」

二の姫を死地から逃がすためにしんがりを買って出た青推。それに対する二の姫の反応が素敵なのです!!

「永遠の忠誠を」。青推の涙の理由は――?
(C)和泉かねよし/小学館