病院てどんなふうに回転してるの? その疑問にズバリ答える

公開日:2012/11/11

病院は、めんどくさい〜複雑なしくみの疑問に答える〜

ハード : PC/iPhone/iPad 発売元 : 光文社
ジャンル: 購入元:電子文庫パブリ
著者名:木村憲洋 価格:599円

※最新の価格はストアでご確認ください。

僕はある病のため、月に一度、近所の大病院に通院している。子供の頃その病院に通ったのを思い出すと、待合室に疲れた顔の大人が溢れ、だらしなく椅子に崩れかかかって居眠りするおじさんや、長い待ち時間をやりすごすため弛緩した顔つきになったおばさんや、とにかく、澱みたいになってよどんでいた。

advertisement

診察がすんでも、会計の前には長い列がとぐろを巻いてお金を払い終わる頃には成人してしまうのではないかと思った。だがまだ災禍は終わらない。薬局で薬をもらうにはカタツムリさながらに進む掲示板の数字をじっと見つめていなくてはならないのだった。

今はその影もない。デジタル化が導入され、予約診療が原則、電子カルテで診察するから待ち時間ときたら10分。会計の列もうんと縮まり、薬も処方箋をもって向かいの薬局でもらうからまことにスムーズ、快適の一字。いやもっとも、僕のかかる科の絶対患者数が少なめという条件はあるのかもしれないが。

それでもまだ病院てやつに対して懐へしまった切実な疑問はある。診療費は負けてもらえるのか、だ。いまだ掛け合ってみたことはないけれど。

で、そういった、病院というシステムに関するもろもろの疑問にお答えしましょうというのが頼もしい鬼と金棒が本書なのである。病院の経営構造と、医療の場での裏幕と、両方が明瞭にかつ細やかに書かれていておもしろいと同時につい膝を打ってしまう。

負けてもらえるかどうかは残念ながら書かれていなかったものの、診療費不払いが往々にして起きている事例は書かれていた。それによると、経済的に困窮して払えないケースの他に、「払う気がない」というのがあるらしい。実に勇気があるなどといっている場合ではなく、八百屋でバナナを買って代金を払わないのかとも聞きたくなった。たぶん、高い健康保険を納めていて、その上また金を取られるのかなんてのがその言い分だろうと憶測するが、これも本書で繰り返し論じている、病院側の料金体系についての説明不足に原因があると私は踏んだ。

また、医師と看護師の報酬はどのくらいなのかにも触れている。年収で、医師が3000万くらい、看護師が500万くらいのところもあるらしい。が、私は看護師の収入はあまりに少ないといつも思っている。医師は税制面での優遇もありながら高給なのに、入院した時など毎日の患者の身の回りは看護師がつとめてくれる。24時間体制で。そりゃあもう大変な仕事だ。給料上げろと、安田講堂に立てこもる日が来てもおかしくないと思う。看護師への優遇を切に祈る。

そのほか、入院患者を早く退院させる方向になっていることの謎。処方箋のスタイルで薬局と医院を分けていることの謎。などなど病院に関する疑問が氷解するのである。

なお、「安いMRI」があるという記述にはけっこう驚かされた。


病院にまつわる多くの疑問を全ページで解き明かしてゆく

すべて質問形式で進められていくのもわかりやすい

当たり前とはいえ、この病院構成の図を見たときためいきがでた。患者、1番上じゃない