モノクロで撮られるとバレるよ【対談】北野武×荒木経惟

芸能

2015/4/20

  • (撮影:野村佐紀子)
  • 男 ―アラーキーの裸ノ顔

    荒木経惟写真展「男 ―アラーキーの裸ノ顔―」

 雑誌『ダ・ヴィンチ』に掲載されている写真家・荒木経惟による連載「アラーキーの裸ノ顔」が連載200回を突破した。連載第1回はビートたけしこと北野武だった。最初の撮影は1997年2月25日。再びの撮影は2014年12月19日。『ダ・ヴィンチ』5月号では2人の対談を収録。時を経て、もう一度対峙したふたりが男の顔、男の人生について語り合った。

【北野】(これまでのファイルを一枚一枚見ながら)見てて飽きないのがすごいよね。普通は飽きるでしょ、顔だけだから。普通のグラビアは、それじゃ間が持たないからだんだん服を脱ぎだすんだけど、これはモノクロの顔だけなのに全然違うんだよ。えらく面白いんだよなあ。

【荒木】 連載が始まったのは17年前か。自分では最初に「写真は最後は男の顔だ」と思って始めたんですよ。さらせばいいってもんじゃないけど、男の顔っていうのは男の裸、人生なんだよね。だから『裸ノ顔』っていうんです。たまに勘違いしてすぐ脱ぐヤツもいるけど(笑)。

【北野】 うん。

【荒木】 これは野坂昭如さん。実は特攻隊のアレだって、こういう飛行服みたいなの着てさ。「女の子はちょっと、はいはいどいて」って突如おちんちん出して。

【北野】 あそう(笑)。

【荒木】 うん。だからもしかしたら、顔かおちんちんかもしれないね、戦う男の肖像っつうのは。あれはつまりそう言いたかったんじゃないのかな。まあ、錆びた鉄兜みたいな亀頭でしたよ(笑)。

【北野】 アハハ。いいねえ。

【荒木】 こっちは勘三郎さん。勘九郎時代のね。着物のあわせが逆になってるのは、歌舞伎座の鏡の中の顔なんです。

  • 五代目中村勘九郎

    五代目中村勘九郎
    (2000年8月15日撮影)

【北野】 荒木さんのモノクロの写真っていうのは色を感じるよね。被写体の人が勝手に自分で色をつけてる感じがあるんだよ。

【荒木】 あ、さすがだな。嬉しいね。そうなんだよ。本人がペインティングした顔なんですよ。だからどのくらい向こうから色気、男気を発信できるかだよね。

【北野】 勘三郎もちゃんと勘三郎の色を出してるもんなあ。モノクロで撮られるとバレるっていうのはあるよね。その人の人生とか生き様が結構出ちゃう。見るわれわれにも、その人に対する自分の感覚があるじゃない。

【荒木】 見た瞬間にね。

【北野】 そう。写真の裏を読んでしまうっていうのはあるかもね。この高田純次も、本当は強面にカッコよく見せたいんだろうけど、お笑いの時にやるような顔になっちゃって、そういうのが全部写ってるから。

【荒木】 男の滑稽感っていうのも魅力だからね。そういうおかしみがないと面白くない。「いとをかし」っていうのがないとね。

【北野】 この久世(光彦)さんなんかすごいよね。誰が見ても久世さんだもんね。このポーズなんだよね。この目つきと。

【荒木】 これはね、撮影が一旦終わって、そうしたらヘビースモーカ―だからタバコ吸いたいって言い出して、それがいいってまた撮らせてもらったんです。本人も「今日は遺影を撮ってもらう気で来たけれど、いやあ、これはちょうどいい」なんて言ってたら、本当にそうなっちゃった。掲載される前に突然亡くなったから、家族に連絡してこの写真を遺影に差し替えることになったんです。だから気をつけないとアブナイ。あたしが撮ると、その後で……。

【北野】 くたばっちゃう(笑)。

【荒木】 まあ、撮る側としては相手の生気を吸い取っちゃうぐらいの気持ちだからね。オブジェや偶像にしたんじゃ〝死〞だから、そのちょっと手前にしたい。動態を撮りたいんだな。向こうの生きる力、生きてるっていうのをバッと引っ張り出さないと。

【北野】 人間には違いないけど、見ようによっちゃ、こいつはゴリラで、こっちはオランウータンってぐらいの差があるよね。ああ、こんな顔もあるんだって、こっちが写真見て想像させられるっていうか、見たことないよ、こんな顔っていうのもあって、だから面白いんだろうな。

【荒木】 男にはいろんな魅力があるってことですよ。それを表現してるから、顔で。その人の根性でさ。そこにただいれば、それが出ちゃうんだな。男は、だからやってきた過去を背負ってないとダメだよね。過去がないと未来が見えないんだよ。生きてるって感じが出てこない。

【北野】 過去ってのはベクトルで考えりゃ、弓の絞り方とおんなじだよね。荒木さんの場合は、過去をグーッと絞って放した瞬間の男を撮るわけだから、過去がこれっぽっちしかなけりゃピョンって撮れちゃうし、ギューッと絞ってれば、放した時、グーンと行く。顔見れば、その人がどれだけ正直か、初速を見れちゃうんじゃないの。

【荒木】 写真撮る人間は、だから受容体なんですよ。向こうから来るものをどれだけ受容できるかにかかってる。表現って言葉があるけど、表現してるのは被写体だからね。みんな、これ、自分で表現してるじゃない、精いっぱい。こっちはその一番いいところをパッとすくう。見えるっていうか感じるんだよね、来たぞっていうその顔をね。

取材・文=瀧晴巳/『ダ・ヴィンチ』5月号「男―アラーキーの裸ノ顔―」特集より一部抜粋

<開催概要>
ダ・ヴィンチ創刊20周年記念事業
荒木経惟写真展 「男 -アラーキーの裸ノ顔- 」

2015年4月24日(金)~5月6日(水・休)
11:00~21:00  入場無料
表参道ヒルズ 本館地下3F スペース オー
※4月26日(日)~20:00、5月6日(水・休)~18:00

主催:「アラーキーの裸ノ顔」実行委員会
協力:株式会社写真弘社/株式会社東京スタデオ/丸栄タオル株式会社
協力:株式会社クラフト
企画協力:内田真由美
問い合わせ: 03-3497-0310( 表参道ヒルズ 総合インフォメーション)

<写真集情報>※好評発売中!

男 ―アラーキーの裸ノ顔

男 アラーキーの裸ノ顔
荒木経惟 
KADOKAWA メディアファクトリー 5000円(税込)

ダ・ヴィンチ

『ダ・ヴィンチ』2015年5月号

KADOKAWA メディアファクトリー
定価650円(税込)

・第1特集 “愛”と“継承”の物語『NARUTO―ナルト―』
岸本斉史描き下ろしイラスト
岸本斉史×堀越耕平
竹内順子、杉山紀彰、中村千絵
・第2特集 男 アラーキーの裸ノ顔
北野武×荒木経惟