老舗の若旦那たちが『和菓子のアン』の世界を再現!【『アンと青春』刊行記念イベントレポート】

文芸・カルチャー

2016/3/6

 50万部突破の人気ミステリー小説『和菓子のアン』(坂木 司/光文社)。その続編となる『アンと青春』の刊行を記念して、2月26日(金)、光文社にてオリジナル和菓子の試食会が開催された。

『アンと青春』は、デパ地下にある和菓子店「みつ屋」でアルバイトをする梅本杏子(アン)と、個性豊かな店員たちの日常を描いた作品。今回のイベントでは作品にちなんで作られたオリジナル和菓子が、来場した書店員らに披露された。

今回、オリジナル和菓子の制作を手がけたのは、全国の和菓子店の若旦那たちからなる「本和菓衆(ほんわかしゅう)」。和菓子界をもっと面白くすることを目的に、4年前に結成されたグループだ。「和菓子は難しくて地味なもの、という従来のイメージを変えてゆきたい」。発起人であるである田中屋せんべい総本家(岐阜県大垣市)の田中さんは話す。
本和菓衆のユニークな活動には、著者の坂木司さんも以前から着目しており、それが今回のコラボにつながったという。

試食会では「はじまりのかがやき」「お菓子の本→本のお菓子」「蓬莱山ロール」など、独創的な和菓子が数多く紹介された。

(左)お菓子の本→本のお菓子(右)はじまりのかがやき

「はじまりのかがやき」は新作『アンと青春』で重要な役割を果たす菓子を再現したもの。和菓子には珍しい濃いブルーを使い、季節感を巧みに表現した羊羹だ。「中が透けて見えるるぎりぎりの青を追求しました。山形の乃し梅本舗佐藤屋さんの力作です」(田中さん)。

田中屋せんべい総本家(岐阜県大垣市)・田中さん

「お菓子の本→本のお菓子」は、岐阜県の老舗・御菓子つちやの槌谷さんが、開いた本をイメージして作った華やかな上生菓子だ。桜の花びらが載っているのは、「本が出たことを皆さんとお祝いしたいから」という。

岐阜県の老舗・御菓子つちやの槌谷さん

大きな饅頭に小さな饅頭が隠れている「蓬莱山」は、別名「子持ち饅頭」とも言われる縁起物のお菓子で、『アンと青春』にも登場する。今回のイベントでは、それをロールケーキ状にした「蓬莱山ロール」が関東初お目見えした。島根県松江市の「彩雲堂」が送ってくれたものだ。ジャンボサイズのロール饅頭に、ピンク、黄緑、黄の3色のミニロールが隠れているカラフルな一品。目と舌を同時に楽しませてくれる職人技に、来場者たちの笑みがこぼれた。

蓬莱山

会場には著者の坂木司さんに加え、デザイナーの石川絢士さんが姿を見せ、トークを行った。6年ぶりの続編となる『アンと青春』について、坂木さんは「1作目のアンは『みつ屋』でバイトを始めたばかり。2作目では仕事にも慣れてきて、自分の将来について考え始めます。このシリーズでは女の子の成長を描いてゆきたい」と語る。
シリーズの装丁を一貫して担当してきた石川さんは、今回お披露目されたオリジナル和菓子に興味を惹かれたようで、「3作目があるならぜひカバーに使ってみたい」と話した。

さらに、ファンにとって嬉しいこんな告知も。4月6日(水)から12日(火)の一週間、東京の日本橋三越本店においてアンが働く「みつ屋」を再現するイベントが開催されることが決定した。ここに紹介した3品や、「みずのいろ(和菓子のアンの景色)」「辻占」「曲水のエン」などのオリジナル和菓子、作品に登場する上生菓子を再現した商品を販売する。(注:紹介した御菓子は、一部のみの販売となりますので、ご了承ください。)
「毎日来ていただいても違った出会いがある。そんなイベントになる予定です」(槌谷さん)。「みつ屋」を体感できるまたとないチャンスだ。

ファン待望の新作リリースに、リアル版「みつ屋」の登場と話題に事欠かない「和菓子のアン」シリーズ。2016年もエンタメ界の話題をさらうことになりそうだ。

取材・文=朝宮運河