袋とじ装丁の絵本『岐阜 美濃の昔ばなし』は子どもが見たらトラウマに!? 北海道から九州まで、そこでしか買えない”郷土本”が話題!

文芸・カルチャー

2016/11/18

 9月23日~25日に東京国際展示場で「東京国際ブックフェア 2016」が開催された。23回目となる今回は、初の試みとして「郷土出版パビリオン」と題するスペースを設け、全国の地元書店による展示がなされていた。

 スペースは1ブロックをぶち抜くほどの広さ。両側は壁(書棚)、その間を自由に人が行き来できるようにされていた。

 展示本は北海道、東北、関東、北陸、東海、近畿、中国、九州と地域ごとに分けられており、それぞれその場で購入できるとあってかなりの賑わいだ。

観光情報が充実
 北から順番に見ていくことにしよう。まずは北海道・東北地域だ。

 郷土資料本が多いのでは? と予想していたのだが、どちらかといえば観光やその土地柄についての情報を伝える書籍が充実している様子。そのまま南下して東北の展示本も同様だった。

 充実しているのは本の種類と内容。例えば、通りすがりの観光客であれば入らないような居酒屋や料理店、でも地元の人にとってはここでしか味わえないものがあるとっておきの情報が掲載されていた。「ああ、こんな楽しみ方もあるのか」という発見があり楽しい。

 地元出版社(企画集団ぷりずむ)が刊行している隔月刊誌『あおもり草子』の背表紙にある表示は「通巻234号」。現在でも号を重ねており、1979年から37年間という長い期間にわたり、青森を形作っている人の思いを伝え、「青森を記録する」ことにこだわった情報を発信し続けていることに驚く。

 宮城出身者にたまらないであろう書籍も見つけた。河北新報出版センター発行の『ごっつぉうさん―伝えたい宮城の郷土食』は、地元料理のレシピを心温まる写真とともに掲載。故郷の味を再現して家族や友人に振る舞えば、きっと話に花が咲くだろう。

 地元産業である酪農についてや地域について学べる絵本、倉本聰さんによる帯の巻かれた『笑説 これが北海道弁だべさ』なども陳列されており、「全国の書店で取り扱っていないとはもったいない!」と感じた。

意外な品ぞろえの関東から東海

 次に関東や東海、北陸の郷土本を見てみたい。

 意外や意外、「郷土資料本」の展示が多い。神奈川県でも歴史ある鎌倉についてならまだしも、昭和の町田市についての歴史をひもといた本などもあり味わい深かった。

 東海地方で気になったのは『岐阜 美濃の昔ばなし』という絵本。袋とじ装丁の和本なのだ。独特で大胆な挿絵は、幼少時に見たら強い印象を残すに違いない、と感じるほど。まさに“ザ・郷土本”を体現するかのような作品だ。

歴史を感じる近畿・中国・九州地方

 近畿地方には京都・奈良など歴史上重要な役割を担った土地が多いため、歴史を伝える郷土資料本と観光情報雑誌が書架に多く陳列されていた。

 興味深かったのは、現代の地図に時代ごとの古地図を重ねて見られるようにして、歴史を感じながら観光できるよう工夫されているものがあったことだ。新創社発刊の『京都時代MAP』と題するこの書籍は安土桃山編、平安京編、幕末・維新編などがあって楽しい。

 中国地方の書架では、なんとも豪華な書籍を発見できた。『山陰の神々 神々と出会う旅』と題する今井出版発行のこの書籍は漫画家の安彦良和さんが帯のイラストを担当しただけでなく、代表作『ナムジ』やその続編『神武』のモデルである古事記の舞台となった地を巡る紀行文を収録しており、ファンでなくとも入手したくなってしまう一冊。

 温泉や建造物としての教会についてなどの観光情報、資料本、歴史書などがほどよく陳列されていたのが九州から の書架。神話の時代から近代まで地域地域でさまざまな色を持つ九州らしい品ぞろえだった。

郷土本を身近に感じてほしいから

『郷土出版パビリオン』に出展したのは全国にある書店のネットワーク「書店新風会」会員書店。このようなブックフェアで個別に出展しても、ブースが小さく見過ごされがちだったが、今回のように比較的広いスペースに集まることで「大勢のお客さまに来てもらえた」と新風会関係者。用意した書籍の傾向がバラバラなことについてたずねると「それぞれの書店が““イチオシ””のものを持ってきた。だから、ある地域には郷土資料本が少なくて、ある地域には観光情報の本ばかり、というわけではない。それぞれのこだわりが見られるのも楽しいんじゃないでしょうか」と教えてくれた。

 このような試みは、東京国際ブックフェアにおいてはじめてのこと。故郷を離れ、東京という地で暮らしている人にとってみれば「ふるさとの訛なつかし停車場の……」とうたった石川啄木よろしく、自分のルーツに出会えるかのような展示。予想以上の大繁盛ということだったので、来年も同パビリオンの展開を期待したいものだ。

取材・文=渡辺まりか