テレビアニメも国内外で大好評! 農業系学園ラブコメディ『のうりん』白鳥士郎氏インタビュー【後編】

アニメ

公開日:2014/1/15

現在、テレビアニメが絶賛放映中の『のうりん』。前回のインタビューでは原作者である白鳥士郎さんに、作家までの道のりと作品の魅力について語って頂きました。今回はアニメの話を中心に、取材先の苦労やこぼれ話、今後の『のうりん』の展開など、引き続き声優の養成所に通う新人声優高野麻里佳(こうのまりか)がお送りいたします。

──アニメ化決定を聞いたときの心境は?

白鳥:本当にアニメ化して大丈夫かなぁ……と。まさかするとは思っていなかったので、ありがたい話だと思ったんですが、あまり現実感が無かったです。絵で魅せている他の深夜アニメと比べれば、『のうりん』は言葉で表現しているので、まだ上品だろうと思いました。※すでに第1話を視聴したのですが、そこまで問題のありそうな演出はなかったです。
※編集部注:インタビューは2013年11月に実施

──制作については何か注文を出したり、関わっていらっしゃいますか?

白鳥:ヒロインの中沢農のセリフの方言について脚本にチェックを入れたりしましたが、その他の制作については、すべてお任せしています。大沼監督を始め、原作の魅力を精一杯引き出そうと努力してくださるスタッフの方々ばかりなので安心してお願いしています。

──ドラマCDと同じキャストになるとのことですが、キャストさんに期待している、もしくは要望などはありますか?

白鳥:声優さんにはあまり詳しくなく、キャストの選出もお任せしてしまったのですが、良い方々に集まっていただけました。周囲からは「声優陣が豪華ですね」と反響が高かったです。人気の声優さんにやってもらえると注目度が違いますので、声優さんの個性を出して演じてくださるのが作品にとっても、ファンの方にとってもよいのかなと思います。アフレコ現場を見学してみると、原作では描写できなかった合いの手やアドリブを入れていただいて、キャラクターの空気感といったものを表現されていて、「実際にいたらこういうキャラクターになるのか」と感銘を受けました。

──アニメならではの見どころはどのあたりでしょうか?

白鳥:実際にキャラクターが動いて方言で喋るところ。そして岐阜の自然の描写が素晴らしいです。モデルとなった農業高校やその周辺には何度もロケハンを行っていて、地元民ならすぐに見て場所が分かるくらいに背景が作りこまれています。それと、なにより胡蝶さんの巨乳が揺れます!(笑)

──アニメを楽しみにしている読者に向けて一言おねがいします。

白鳥:実際に登場人物たちと同じ農業学校に通っているような気分で、作品世界に浸って楽しんで頂けたら幸いです。



のうりんと言えば、やはり作業服。この日も作業服でインタビューに望む白鳥さん

──それでは、アニメ以外のお話もお伺いしたいのですが、ブログの更新は大変ですか?

白鳥:ブログは取材に行って原稿を書くまでの情報整理に用いています。絶対にやらなくてはいけない作業なので大変という思いはないです。作品に使えなかったけれど書きたいネタ、誰かに伝えたい言葉を書く場所でもあります。ブログにメールアドレスを公開してからは、取材がスムーズに通ったり、本職の農家さんや獣医さんからも作品への指摘や意見を頂いたりしたこともありました。

──取材はどのように行っていますか?

白鳥:興味があったら書籍やネットで調べて、作業現場に電話やメールで取材依頼を出します。民間の施設では取材を断られることが多いのですが、公共機関であれば概ね快く取材を受けて頂けます。農業大学校を取材した時は、校長先生が作品を読んでくださっていて、アドバイスを受けたりもしました。農業系のレストランや直売所などでお客さんとして訪れて、話を聞くのが一番楽ですね。取材から帰ってきてからも文献資料を調べ直して、わからないことがあれば後日確認を取ったりします。

──農業を取材していて、とくに印象深い思い出などはありますか?

白鳥:アヒル農法の取材に行った時、僕には寄り付かないのに飼い主の先生にすごく懐いていて、車に乗って通りかかっただけでもちゃんと先生を見分けて寄ってきていました。アヒルはそこまで頭がいいのかと感心しました。ホルスタインを初めて見た時は、黒毛和牛よりもはるかに大きく、ゴツゴツした体格にびっくりしました。田植え授業の時、生徒さん達とトラクターやコンバインに乗った体験は楽しかったです。和牛能力共進会では参加者も観覧者も含めて集まった方々の牛にかける情熱と愛情に感動しました。

──自分では農業などはされないのですか?

白鳥:取材で農業体験などに行ったら作業を手伝ったりはするのですが、プライベートでは意識的にしないようにしています。体験してしまうと「自分はこれを知っているんだ」という固定観念に捕らわれてしまい、作品が画一的になってしまうのが怖いんです。取材した農家さんや生徒さんの言葉や体験談をほぼそのまま活用して取り入れています。そのほうが意外性も出て、物語世界の広がりが出るんじゃないかなと思っています。

──『のうりん』といえば木下林檎と中沢農のダブルヒロインですが、もし選ぶならどっち派ですか?

白鳥:ヒロインのどちらかに肩入れすると、主人公との恋愛で贔屓していると読者に思われてしまうので、どちらも選べません。それもあってヒロイン・良田胡蝶さんが一番お気に入りです。動かしやすくてネタに絡めやすいところがイイですね。登場するだけでも巨乳ネタで笑いを作れるので、いじり甲斐があります。

──今後の展開でやってみたいことありますか?

白鳥:読者の方々から「農業って楽しそう」という感想をよくいただくのですが、農業は決して楽しいことだけではないと思います。農業を学んでいても将来には様々な選択肢があり、農業以外の道に進むこともあります。いまは農業が楽しくても、いつか将来について悩まなくてはいけないことも伝えたい。そうしたことを含めた就職活動の話を書いてみたいですね。

──このシリーズはどこまで続くのでしょうか?

白鳥:書くことがなくなるまで続けたいです。結末は漠然と考えていましたが、シリーズ開始時から農業を取り巻く現実の環境や、ライトノベルの流行なども変化してきているので、現在では揺れています。でも、できる限りハッピーエンドを目指したいです。


アニメ化の喜びを語る白鳥さん(左)と、右奥が高野、手前がライターの愛咲

──イラストレーターが切符さんに決まったときのお気持ちは?

白鳥:担当編集からイラストレーターが切符さんに決まったと知らされて、イラストを取り寄せて拝見しました。可愛らしい絵柄で、構図を使った遊びが思い浮かびました。初対面の時、こちらのイメージを伝えるとその場で持参したiPadを使って指一本でスケッチを描く姿に驚き、信頼感を抱きました。

──切符さんと打ち合わせはどのように進めているのでしょうか?

白鳥:普段は担当編集を通してやり取りをしていますが、いつも自分のオーダー通りに合わせてくれるので、自分たちにはこの方法が合っているんだと思います。切符さんでなければ自分もこんなに自由にできなかっただろうなと感謝しています。

──マンガ化したときの状況を教えて下さい。

白鳥:マンガ化が決まった時に、作画の亜桜まるさんから農業高校へ取材に行きたいと言われまして、アシスタントや編集者を含め10人くらいで見学ツアーを組みました。みなさん農業がとても面白かったようで取材中も楽しんでいただけました。当時すでに2年間ほど取材に通っていて、自分も農業高校に愛着が湧いており、学校を好きになってくれたのが嬉しかったです。

──最後に告知などがありましたら、お願いします。

白鳥:本日『のうりん』8巻が発売になっております。ドラマCD附属版も同時発売します。アニメイトさん限定で1巻の特装版も出ます。2月には切符さんのイラスト集も出版され、『のうりん』の書き下ろし短編も収録されています。こちらもどうぞよろしくお願いします。

──白鳥士郎さん、ありがとうございました。

一つの作品を作り上げるまでに手間と時間をかけた取材作業の大変さ、そしてたくさんの農業に関わる人々の農業にかける思いが伝わってきました。 このインタビューを読んだ後に、放映中のアニメ『のうりん』を改めて見てみると、また違った楽しみや面白さが見出せるかもしれません。


原作を持っての記念撮影。やはり作業服が似合う白鳥さんと今回も勉強になった高野

のうりん

・アニメ 『のうりん』公式サイト
http://www.no-rin.tv/

・のうりんのぶろぐ
http://thurinus.exblog.jp/

・原作情報
『のうりん』はGA文庫より1~8巻発売中!


また、ヤングガンガンコミックスよりコミックが1~4巻発売中!


ビックガンガンコミックス 『のうりんぷち1巻』 2014年1月16日発売予定!


『切符イラストレーションズ(仮)』 SBクリエイティブより、2014年2月発売予定!


このほか、続々と発売を予定しております!

今後ののうりんの展開に期待しよう!

■インタビュアー紹介

<高野麻里佳>

2月22日生まれのA型。マウスプロモーション附属養成所に所属。代々木アニメーション卒。憧れの声優は大谷育江さん。

・高野麻里佳 twitter
https://twitter.com/marika_0222

(インタビュー=高野麻里佳、編集=愛咲優詩、撮影=山本哲也)