とらのあなは世界のクリエイターに通ず。【オタクの社会科見学】

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更新日:2014/4/9

夏と冬、年2回のイベントを欠かせないオタク諸君であれば必ずお世話になっているであろうショップ「とらのあな」。書き手側としても読者側としても、オタク活動には必要不可欠な場所である。
 

▲秋葉原の代名詞的存在「とらのあな」

そんな皆さんのオタ活動に欠かせない「とらのあな」はどんな会社なのだろうか? そしてどんな人が働いているのだろうか? 前回のグッドスマイルカンパニー社の取材に引き続き(https://ddnavi.com/news/167078/)、今回はとらのあなを運営している株式会社虎の穴の持株会社である「ユメ(ノ)ソラホールディングス株式会社」にオタクの社会科見学と称して潜入した。

ここで少々おさらいをしよう。我々がお世話になっているショップ「とらのあな」は株式会社虎の穴が運営している。その株式会社虎の穴が平成25年10月に持株会社制(ホールディングカンパニー)に移行。そして新たに設立されたのがユメ(ノ)ソラホールディングス株式会社だ。ちょっとお勉強的な話になるが、株式会社はもちろん株を所持している。複数の会社の株をまとめて持っているのがホールディングスという会社。それぞれの会社は存在しているのだけれど、とりまとめている会社が別にあると考えよう。

そんなユメ(ノ)ソラホールディングス社の本社所在地は千葉県市川市にある。最寄駅からタクシーに乗り込み「とらのあなまで~」とお願いすれば連れて行ってくれるほど認知されている。

まず、取材班の目に飛び込んできたのが圧倒的な広さの倉庫。思わずはしゃいでしまいそうになったが、こちらはまた後述するとしよう。そのままエントランスへ…そこにはとらのあな自社企画商品が勢ぞろい。
 

▲自社企画の商品がズラッと並ぶエントランス。

どんなオフィスで働いているの?と社内が気になるところだが、実は一部内勤スタッフの引っ越し作業のまっ最中(2014年2月10日現在)。新オフィスは秋葉原になるとのこと。さらに明るくキレイな環境で働けるそうだ。

さて、早速“中の人”の話を聞いてみよう。今回取材に快く応じてくれたのは、経営企画課に所属している清水氏。明るい笑顔が印象的なさわやかイケメンである。
 

▲この人…どこかで会ったことある!という読者もいるかも

──ユメ(ノ)ソラホールディングス株式会社の事業内容を教えてください。
ユメ(ノ)ソラホールディングスでは、ユメ(ノ)ソラグループの経営戦略策定・システム構築・管理業務が主な事業内容となります。グループ会社の株式会社虎の穴だけに焦点を当てると、ショップ事業とイーコマース(通販)事業、個人出版事業が主な内容です。虎の穴は”同人誌の販売”というイメージが強いかと思いますが、弊社ではそれだけではなく、クリエイターの育成支援体制を整え、活躍の場を広げる応援をしているんですよ。他にもグループ会社のツクル(ノ)モリ株式会社で音楽事業やソーシャルゲーム事業も行っています。

──ホールディングス化されたのはなぜですか?
今までの虎の穴の強みである、クリエイターとの連携力、さらにクリエイターが創造活動を行う環境を整備し、一緒にコンテンツを生み出す器となる事で、どの会社も真似することができない力になると考えました。それを実現する為に、「経営資源の選択と集中」「事業単位での収益性向上」など、全てを満たす手段として、当グループは平成25年10月からホールディングス体制になりました。分かりやすく言うと、日本の様々なクリエイターを育て、より良いコンテンツを世の中に出していくためにグループ全体で協力していこうといったイメージです。
例えば、AQUAPLUS・LEAFのゲームブランドでお馴染みのアクアプラス社。今回、資本業務提携を行い、グループ企業となって頂いたのですが、アクアプラス社の魅力あふれるコンテンツを、ユメ(ノ)ソラグループの企画・製造・物流を通じて発表の場を広げていこうという試みとなります。優秀なクリエイターさんの活躍の場を広げて、どんどん世界へ羽ばたいてもらうというのがが目的です。

──それが新オープンした「とらのあな 秋葉原店C」にも関係があるとか?
はい。2013年11月に秋葉原3店舗目のとらのあな秋葉原店Cがオープンしました。みどころは先述したアクアプラス社のグッズ。ここでしか手にできない限定グッズも発売中で、どんどん新作が入荷していますよ。
 

▲とらのあな秋葉原店C・アクアプラスのグッズコーナー

──お店の話で思い出したのですが…あのかわいいイラストはどなたのデザインなんですか?
お店のキャラクターの“とら”たちはむっく氏のデザイン。愛嬌があってかわいいですよね。他にも女性向けイラストはマシュー正木氏のデザインです。
 

▲オタなら誰しも一度は見たことがあるはず

──少々個人的なお話しを。清水さんが入社したきっかけは?
5年ほど前に、以前の会社を退職したのがきっかけです。前職はマンガとはまったく関係のない仕事でした。転職活動期間、とりあえずアルバイトをしようと思って…せっかくなので好きなマンガに関わる仕事がしたいなと。次の仕事へのつなぎの気持ちもありましたが、これまたせっかくならばと社員登用のある「とらのあな」を選びました。

──そして、今ここでスーツを着て取材を受けている、と。
そうですね。アルバイトで入って、そこでありがたいことに働きぶりを認めていただけました。リーダー的な役割になった後、町田店の店長を経て本社勤務をしています。雇用形態もアルバイト→契約社員→正社員と変わっていきました。

──ちなみに、アルバイトはどこの店舗で?
秋葉原店Bです。しかも私、入社早々BLフロア担当でした(笑)腐男子だったわけではなく、たまたまスタッフの配置の関係上任命されて。当時は…ヘタリアが流行ってました。BLに詳しかったわけではないので、とにかく衝撃と刺激を受ける日々。それと同時に乙女の方々の想像力に圧倒されました。
私だけでなくアルバイトの面接を受けたときの状況によって、任されるフロアやコーナーはさまざま。一応面接の際に希望はお聞きしますが、それ以外になる可能性も。このコーナーじゃなきゃ絶対に嫌だ!とこだわりの強いタイプの方は厳しいかもしれませんね。
 

▲清水氏の接客を受けた腐女子の方々も多いのでは

──BLフロアのお客さんはどうでしたか?
普通の女性が多いですよ。街ですれ違っても腐女子だとは気付きませんね。あとは…最近は家族連れも多いです。長期休み期間はお母さんとBLフロアにくる小中学生も。メディアでBLが取り上げられているので、以前よりもコソコソする必要がなくなってきているのかもしれません。
先程少しだけお話ししましたが、町田店店長時代は土地柄キャバクラ嬢のお客様もいらっしゃいましたね。盛り髪ヘアーのキレイなお姉さんが、ご出勤前にBL本を大人買いしている姿が印象に残っています。

──働く環境はいかがですか?
前職と比べて実感しているのは、風通しの良さ。以前は社長なんて雲の上の存在。この会社では役員や上司の方が積極的にコミュニケーションを取ってくださるので、非常に働きやすいです。
上司との関係も良好。気軽に相談に乗ってもらっています。新規提案もしやすい環境なので、やりがいも感じると思います。部署をまたいでの交流もあるので、社内はいつも明るいですよ。

──話は変わりまして…今、いちばんアツいタイトルを教えてください。
アツいタイトルは「艦これ」です。他に人気なのは…すぐに思い浮かばないほどの一強ぶり。名前とキャラクターデザインなど、必要最小限の設定が「if」の世界を妄想させやすい。そんなところが創作魂に火をつけているみたいですね。一大ムーブメントを起こした「東方Project」のときを思い出します。女性向けは「黒子のバスケ」と「Free!」、あとなんといっても「進撃の巨人」の3タイトルが人気です。

最後に…どうしても巨大な倉庫内が気になる取材班。今回は特別に薄い本が非常に厚く連なっている倉庫を撮影させてもらった。

気になるのが倉庫内に掲げられている駅名。これは以前倉庫で働いていた担当者が鉄オタだったことが理由。さまざまな駅名が飛び交う、なんとも不思議な空間だ。
 

▲駅名で場所を把握できるようになっている。


▲スタッフさんたちが手作業で出荷作業中

ここでは今まで見たことのない高さの本棚が。夏と冬のイベント前後では、本棚のすべてがいっぱいになるそうだ。
 

▲天まで届きそうな本棚。コミケ前は上まで…。

関東の「とらのあな」へは自社物流で配送。鮮度の高い商品が次々と旅立っていく。
 

▲ここから全国の店舗へと配送されている。

さて、ユメ(ノ)ソラホールディングス社の一員となって働くにはどうしたら良いのかを聞いてみたところ、3つのパターンがあるという。
1つ目は清水氏と同じく店舗のアルバイトからスタートするパターン。繁忙期には求人がかかりやすいのでチェックしておこう。2つ目は中途採用。それまでの経験を活かし、最初から社員となるパターンだ。
最後の1つが新卒採用。ユメ(ノ)ソラホールディングス社では今年入社の新卒者はFaceBookで募集を行った。いわゆる大手新卒就職サイトを使わず、もっと意欲のある人材を集めるための試みだ。2015年3月入社の募集はまだ開始されていないが、新しいことを模索中とのことなので、チェックしておくべし。

どんな人物が求められているかは、誠実・謙虚・感謝・愛情・胆力・責任感・積極性を重視しているとのこと。現場の清水氏にさらに突っ込んで聞いてみたところ、「好き嫌いをせず、何にでも意欲的な人物」が良いとのこと。アニメやマンガが大好きなのは非常に良いことではあるが、そればかりではダメ。視野が広く、チャレンジ精神に溢れた人物を求めているそうだ。

今後もクリエイターの心強い窓口になってくれるであろうユメ(ノ)ソラホールディングス社。具体的に今後の展開を聞いてみたところ、国内のクリエイターはもちろん海外のクリエイターも応援してきたいとのこと。グループ全体で日本中のクリエイターが活躍する為の窓口であり、出口となり、彼等が集まり新しいことを産み出せるようなプラットフォームを構築していきたいと展望を語ってくれた。今後の新たな展開を待とう!

これからも、「アニメ部(ツイアニ)」では、ヲタクの社会科見学シリーズを随時行っていく予定だ。もし、「この会社の裏側を知りたい!」「この仕事に興味がある」など、リクエストがあれば是非送って欲しい。

取材・文=shioko

ユメ(ノ)ソラホールディングス株式会社

・オフィシャルHP
http://yumenosora.co.jp/