さぁ、映画館でも海賊の時間だ! 待望の劇場版『モーパイ』レビュー!

アニメ

公開日:2014/3/1

とらのあな
最近公開され大ヒット中の『THE IDOLM@STER MOVIE 輝きの向こう側へ!』や『TIGER & BUNNY -The Rising-』など今年も続々と劇場版アニメが公開中だ。どちらもTVアニメの続編として製作されており、元々の作品のファンはもちろん、劇場版で新たなファンを生み出すほどの勢いを見せている。

この2作品に続けとばかりに、2月22日から公開がスタートしたのが『モーレツ宇宙海賊 ABYSS OF HYPERSPACE -亜空の深淵-』(以下『劇場版モーパイ』)だ。TVアニメも大人気を博した作品だけに、2012年のTVアニメ終了直後に発表された劇場版の公開を、首を長くして待っていたファンも多いはず。今回はそんな『劇場版モーパイ』のレビューをお届けしよう。


3月下旬に発売予定のコミック版より

●劇場版で魅力をさらに爆発させるキャラクターたち

笹本祐一氏の人気SFライトノベル『ミニスカ宇宙海賊』を原作とするTVアニメ『モーレツ宇宙海賊』(以下『モーパイ』)は、その堅実な作りと魅力的なキャラクター、わかりやすくも濃く魅せてくれるSFストーリーで大きな人気を獲得する作品となった。その劇場版となる『劇場版モーパイ』の一番の魅力も、やはりキャラクターたちの活躍だろう。

快活で天真爛漫、それでいて冷静沈着と、かわいらしくもカッコいい主人公・加藤茉莉香の魅力はスクリーンでも爆発している。女子高生でありながら、海賊として宇宙海賊船弁天丸の船長もこなす茉莉香だが、劇場版ではその姿を見ていて安心感を覚えるほどになっている。頼れる主人公というのはやはりいいものだ。

茉莉香の友人であるチアキ・クリハラやグリューエル・セレニティ、グリュンヒルデ・セレニティ、そしてひと癖もふた癖もある弁天丸クルーももちろん劇場版に登場し、活躍を見せてくれる。それどころか茉莉香が部長を務める宇宙ヨット部の面々も、卒業生を含めて全員が登場するのには驚かされた。しかもほとんどのレギュラーキャラにちゃんと見せ場が用意されているので、ファンにはたまらないはずだ。

劇場版のキーマンである新キャラの少年・無限彼方がストーリーにどう絡んでくるかも見逃せない部分だ。彼方は『劇場版モーパイ』のもうひとりの主人公ともいえるキャラクター。偉大な父を持つがゆえに苦悩する彼を、同じく偉大な海賊を父に持つ茉莉香がどう導いていくのかも本作の見どころだ。

●劇場版でもがっつりとSF

宇宙海賊船・弁天丸での戦闘やハッカー同士の電子戦といったSFバトル展開も『モーパイ』の魅力のひとつ。劇場版では宇宙を駆ける弁天丸の姿を大スクリーンでを楽しむことができる。

亜空間が物語の重要な鍵となっている『劇場版モーパイ』は、TVシリーズ以上にSFらしい展開が繰り広げられる。と言うと少し敬遠してしまう人もいるだろうが、そこはさすが『モーパイ』。SF部分をわかりやすく構成しているので、苦手だという人もすんなり楽しめるはずだ。亜空間を深海に見立て、宇宙をよりはっきりと“大海原”として描いているところは『モーパイ』の海賊らしさを際立たせている。

『劇場版モーパイ』のSF展開をより華やかに彩るメカの活躍も忘れてはいけない。弁天丸を筆頭に、登場する宇宙船やメカニックのデザインはどれも秀抜。その中でも、特筆すべきなのは映画のクライマックスに登場する、とあるメカだろう。『宇宙のステルヴィア』や『機動戦艦ナデシコ』を生み出した佐藤竜雄監督らしいメカの魅せ方に筆者はすっかりシビれさせられてしまった。そのメカがどんなものなのかは、ぜひ自分の目で確かめてみてほしい。

TVシリーズから継承された魅力を、劇場版らしくさらにパワーアップさせた『劇場版モーパイ』。ファンなら必ず大満足できる映画に仕上がっている本作だが、今回初めて『モーパイ』に触れる人たちも存分に楽しめるだけのパワーを持っている。興味をもったかたは、映画館で茉莉香船長とともに宇宙の大海原、そのさらに深淵への冒険へ旅立ってみてはいかがだろうか。

文=鈴木悠太