ショートアニメの代名詞、竹書房のアニメ担当に突撃インタビューしてみた。【前編】

アニメ

公開日:2014/3/18

アニメと言えば30分番組、というのも今は昔。最近では15分や5分、はては3分の番組も増えています。その数、今期だけで10本前後。

なぜこのようにショートアニメが流行っているのか、その草分け的な存在である竹書房のアニメプロジェクト班長・木村淳さんに話を伺いました。同社がなぜショートアニメを手がけるようになったのか、名物キャラクターのしばいぬ子さんが生まれた理由は――ショートアニメ好きはぜひご覧を!

――アニメプロジェクト班長ということですが、具体的に何をされているのでしょうか?

木村:いわゆるプロデューサーですね。アニメの企画を立てて、お金を集めて、アニメを放送して、パッケージやCDを発売するという流れを管理しています。

――竹書房作品のアニメ化は、どのように始まったのでしょうか?

木村:4コマ編集部と一緒に何かできないかという話が持ち上がったのが始まりです。それで2009年に『ゆるめいつ』をアニメ化することになったのですが、4コマ編集部と違って、私が所属する映像企画部はDVDのパッケージを販売して回収しなければならない。そこで過去の類似するOVA(オリジナルビデオアニメーション)の販売数を調べて目標と予算が決まり、まずはFLASHアニメで提供することにしました。
 

▲竹書房ショートアニメの第一弾『ゆるめいつ』。2012年にはテレビアニメにもなりました。

――そのころだと、他社ですが『這いよる! ニャルアニ』もFLASHアニメで作られていました。そういう流れがあったのでしょうか。

木村:『這いよる! ニャルアニ』は販促として流している印象でしたが、私達は同じFLASHアニメでもパッケージで回収するというのが第一目標でした。ただ続けていくうちに弊社も欲が出てきて(笑)、地上波に進出するころにはパッケージだけでなく、原作の購入者を増やしたい、増刷したいという考えも出てきましたね。

――それ以降も流れが続いたということは、『ゆるめいつ』の反響は大きかったのでしょうか。

木村:そうですね。『ゆるめいつ』の主演が桃井はるこさんだったのですが、彼女と関係性が深い“とらのあな”さんがすごく協力してくださいました。当時『ゆるめいつ』は全国的な認知はなかったものの、秋葉原ではすごく人気が高くて原作も売れていて。そこで熱狂的なファン向けのOVAを作ったら売れるんじゃないかな、という予測もありましたが、これが当たりましたね。

――それはヒットですね。

木村:ネットで色々な作品が観られる今と違って、パッケージがもう少し売れていた時代でしたしね。比較的まだ商売が成り立ちやすかったので、調子に乗っちゃいました(笑)

――同年に同じくOVAの『けものとチャット』を挟んで、2011年から本格的にアニメに進出します。

木村:『ゆるめいつ』と『けものとチャット』だと、全国的な人気は後者なんですけど、秋葉原で人気が高い前者のほうが原作の売り上げが伸びました。それでもう一度OVAで『ゆるめいつ は?』という続編を作りました。この時に注目されるようにBE@RBRICKを付けた特装版なども用意して『ゆるめいつ』と竹書房の存在をアピールしたのですが、さらにもう一歩踏み込んだことをしようという話が社内でありまして。それでテレビアニメを意識し始めました。

――第一弾に『森田さんは無口。』を選んだ理由は?

木村:『森田さん』も全国的にはまだ無名でしたが、秋葉原で原作が売れているからというチョイスでした。『ゆるめいつ』の前例があったからの判断ですね。ただ企画する前に、本当にこの作品をテレビアニメにしていいか反応を見るため、まずOVAを1本出したんです。これはFLASHではなく通常のアニメでした。

――OVAとテレビアニメの間が短かったので、同時に進めていたのかと思っていました。ずいぶん周到に準備を進めていたんですね。テレビの放送時間を5分枠にしたのはなぜでしょう?

木村:30分の放送をする場合、電波料が本当にすごいんですよ。いくらキー局ではない地方局とはいえ、胃がキューっとなってしまうくらい(笑)。そのリスクを減らすために、ショートアニメで作ることにしました。

――『森田さんは無口。』での新要素として、本編後の情報コーナーがあります。あれはなぜ生まれたのでしょう?

木村:音響製作会社のダックスプロダクションさんが色々とブレーンになってくださったので、CMを打つことになったんですね。でも普通のCMを打ってもあまり注目されるない。そこで番組の一部の情報コーナーとして面白いことをしようか、となりました。

――そこで『しばいぬ子さん』を起用した理由は?

木村:当時『しばいぬ子さん』はまだ単行本にもなっていなかったんです。でも内容は抜群に面白くて、雑誌ではフルカラーで掲載するくらいイチ推しな作品でした。それでしばいぬ子さんに色々な商品を紹介させてみようと。今思うと、人じゃないキャラクターで使い勝手がよかったし、思わぬ人気が出てよかったです。
 

▲「資本主義の犬」と呼ばれたしばいぬ子さん(中央)。木村さんにとっては「予想だにしないネーミングだった」そうです。

――しばいぬ子が出ないときがあったり、商品も『仮面の忍者 赤影』とか紹介したりと、変わったコーナーでした。

木村:弊社としてはあそこで商売する気はなく、ダックスプロダクションさんと視聴者へのサービスだったんですよ。なのでどんな商品でも紹介していいことになって、ダックスプロダクションさんがいい意味で悪ノリしてくださいました。

――しかし『しばいぬ子さん』はのちにテレビアニメ化されるほどの人気になりました。

木村:5分より短い、3分枠の1分半アニメなんですけどね(笑)……それでもきちんと面白い作品になってよかったです。

――当初は竹書房だけで制作していましたが、2012年1月スタートの『ポヨポヨ観察日記』から製作委員会になりました。

木村:弊社もテレビアニメで本格的にヒットを作っていこうとなり、この『ポヨポヨ観察日記』では1年間続けるチャレンジをしよう、と。この原作は当時でも10巻以上出て衰えることなく人気がありました。30分枠のアニメを1年間し続けることはリスクが高いのですが、5分枠アニメなので1年間放送できる期待は大きく、長くやるならゲームやアプリ、主題歌CDなどの展開もしていきたいと思い、各会社に賛同いただき製作委員会でやれることになりました。パッケージにマフラーやぬいぐるみ、ビーチボールなど色々特典を付けられたのもタカラトミーアーツさんが参加してくださったおかげですね。

――その後も色々な原作がアニメ化され、現在の『お姉ちゃんが来た』に至る、と。

木村:『お姉ちゃんが来た』は「妹系のアニメが結構あるのに、なんでお姉ちゃん系はないんだ」という話が巷でありまして。「いやいや、お姉ちゃんでも萌えるものはあるぞ!」と考えて、アニメ化を決めました(笑)
 

▲竹書房の最新ショートアニメ『お姉ちゃんが来た』。本当に本当に、お姉ちゃんがかわい過ぎるアニメです。

――そういう風にテーマを設けてアニメ化を決める場合もあるんですね。

木村:『お姉ちゃんが来た』は原作の安西理晃先生初の4コママンガだったので、結構チャレンジな選択でした。おかげさまでニコニコ動画の再生数も多く、視聴者による評価も非常に高く、作品がよければ視聴者には受け入れてもらえるんだな、とわかりました。

まずは竹書房のショートアニメの歴史を振り返ってもらいました。次回はショートアニメの特徴、そして今後の展望を伺ってみます。お楽しみに!

(取材・文=はるのおと)

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