まとめサイトは違法! 話題の転載問題に迫る! 【オタクの法律相談所】

アニメ

更新日:2014/5/23

児童ポルノ禁止法や違法ダウンロード禁止法など、オタク業界でもたびたび話題にあがる法律関連の話題。しかしその実情を正確に、専門的に把握している人は少ないのでは? もしかしたら読者のみなさんも無自覚のうちに、法を犯している人もいるかもしれません。

実際に法律を犯してトラブルに巻き込まれた場合、金銭的にも時間的にも、さらに精神的にも大きな負担となります。そこでアニメコンテンツエキスポやアニメジャパンに出展している「オタク弁護士」こと太田真也さん(神田のカメさん法律事務所)に話を伺い、そういった法的リスクを回避しようというのがこの連載の狙いです。
 

▲神田のカメさん法律事務所の太田先生。今期のアニメでは『健全ロボ ダイミダラー』がお気に入りだとか。

第1回のテーマは、2ちゃんねるの転載禁止で話題になった「まとめサイトの違法性」についてです。

<事件名>
まとめサイト転載事件

原告:ニュースサイト運営会社
被告:無断転載をしているまとめサイト

<要旨>
2ちゃんねるの転載問題によって大きな転換期を迎えているとは言え、いまだに多く存在する「まとめサイト」。しかし、そもそもまとめサイトは2ちゃんねるのスレッドだけでなく、法人が運営しているニュースサイトの記事や個人ブログ、アニメ映像のキャプチャーなどを無断で転載しており、それによってアフィリエイトなどの広告収入を得ています。これは違法なのでは?

さっそく、前述の太田先生に伺ってみました。

――まとめサイトや2ちゃんねるにニュースサイトの記事がすべて、もしくは一部とは言え転載されていることがあります。これは具体的にどういった罪になりますか。

太田:著作権法違反ですね。著作権法というのは刑罰も付いているので、民事上だけでなく刑事上の犯罪にもなります。もちろん「こういった事件が起こりました」みたいな“事実”だけが書かれた記事を転載した場合は、著作権違反とは言えません。ただし現状の多くのまとめサイトが転載しているのは事実だけでなく、独自の創作性があるものなので違法でしょう。

――法律上、転載と引用は別のものとして扱われています。まとめサイトがしているのは前者と捉えていいのでしょうか。

太田:そうです。たとえば出典元の明記や、必要最小限の範囲だけに留めるといった条件を満たせば引用となり、著作権法で認められる行為です。ただし、記事をコピーしているだけとか、元の文章より自分が書いた文章の内容が薄いと無断転載ですね。

――転載した内容が一部でも駄目でしょうか。

太田:駄目です。もちろん転載したのがひと言や一行で、どこから転載したか明らかでない場合は訴えるのは難しいでしょうけどね。

――権利者が損害賠償をした場合、どれくらいの賠償金を請求できるでしょうか。

太田:まとめサイトが転載したせいで減ったニュースサイトの閲覧数や本来入ってくるはずだった収入などを元にして、発生した損害については確実に請求できるでしょう。

――仮に訴える場合、過去にさかのぼっての請求はできるのでしょうか。

太田:請求側がいつ転載されたかを明示すれば、できます。ただ不法行為に基づく損害賠償の場合、それを知った時点から3年で時効になります。なので3年分は確実に請求できるでしょうが、それ以前となると……。「2009年に記事が転載されていたことを今知った」というなら有効でしょうけど、有名サイトの場合だと少し白々しいですよね(笑)

――過去にまとめサイトを相手取った裁判などはあるのでしょうか?

太田:記憶にないですね。もしどこかの権利者が有名サイトを相手に裁判をしたら、大きな話題にはなるでしょう。

――権利者側は記事の差止めを要求できますか?

太田:著作権は強い権利なので、記事の差止めや損害賠償は可能です。

――たとえば記事が転載された2ちゃんねるのスレッドを、さらに転載した場合はどうなりますか?

太田:2ちゃんねるにニュースサイトの記事を転載したスレッドを立てるのも違法ですし、それを転載した人も違法です。

――記事を転載した際に、ネガティブな意見を付け足した場合も何らかの罪になるのでしょうか。

太田:内容次第です。たとえばゲームがあまり売れなかったという記事で「爆死www」というだけでは罪にならないでしょう。しかし制作者の誹謗中傷をしたり、「こんなゲーム買うな」とコメントした場合は「営業妨害」や「名誉毀損」などになる可能性はあります。程度や回数にもよりますけどね。

――ニュースサイトの記事以外に、ブログの記事やTwitterのツイートなどもやはり転載は駄目でしょうか?

太田:ブログは結構な文章量になるので、著作物として扱われるでしょう。事実だけでなく「こう思いました」とか「こう感じた」といったことも書かれているので、創作性があるとは思います。しかしTwitterは140文字ですからね。定型的な言葉を書くことも多いですし、創作性が認められない可能性もありますね。

――これまでTwitterの発言に創作性がある、という判例はあるのでしょうか。

太田:ないですね。ただ、Twitterを引用されて問題にする人も少ないでしょう(笑)。Twitterってリツイートされていくという性質がありますし、ツイートした時点で拡散されてもいいという面があるので訴えるのは厳しいかもしれません。そもそもツイートに「無断転載しないように」と書いていないといけないでしょうしね。

――アニメ誌のフラゲ情報や誌面の一部が掲載される場合もあります。これはどうなりますか?

太田:雑誌を撮影した画像を使った場合は明らかに違法です。ただ「○○アニメ化決定!」といった情報“だけ”をテキストで扱うなら大丈夫です。

――アニメなどのテレビ番組のキャプチャーをして、サイトに掲載するのはいかがでしょう。

太田:アニメの一部だけでも絵自体が著作物なので、勝手に掲載したら著作権違反になります。

――話を伺う限りでは、現在の多くのまとめサイトが違法ですね。なぜここまで違法のサイトが野放しになっているのでしょうか?

太田:まとめサイトのおかげで話題になっているニュースや作品を知ることもありますし、難しいところですよね。個人的には、まとめサイトを見る人がいて、しかも人気があるのは、権利者側の情報提供が足りないのでは、という面もあるのかと思います。たとえばアニメであれば、公式で「アニメ1話分を載せるのは駄目だけど、一部を切り取って載せるのはいいですよ」とするとか。ほかにもまとめサイトが提供しているような楽しみ方を権利者側が提供するようになれば、無断転載を予防できるし、新たなビジネスチャンスにつながるかもしれませんね。

<結論>
以上により、ニュースサイトの記事を転載しているまとめサイトや2ちゃんねるのスレッドは違法であることがわかりました。みなさんも、普段なにげなく観ているサイトが違法サイトの場合、間接的に違法行為に関与していることになりますので、閲覧には十分に気をつけましょう。


ニュース記事や画像、動画コンテンツをまとめる「キュレーションメディア」が台頭する中、改めて著作権法に注目が集まっています。作る側と広める側、それぞれが、共栄共存できるような仕組み作り(ガイドラインや法整備)が急務なのかもしれません。

今後も当連載では、オタクに身近な法律問題を取りあげていく予定です。トラブルに巻き込まれないよう、色々な法律を学んでいきましょう。

<協力>
神田のカメさん法律事務所
http://www.kamesan-law.com/

太田さん出演のCM
https://www.youtube.com/watch?v=ZANViY3Q6zY

(取材・文=はるのおと)