髙木雄也さんが選んだ1冊は?「生命という深いテーマを掘り下げたラストに、僕は本気で泣きました」

あの人と本の話 and more

公開日:2025/3/14

※本記事は、雑誌『ダ・ヴィンチ』2025年4月号からの転載です。

 毎月3人の旬な有名人ゲストがこだわりのある一冊を選んで紹介する、ダ・ヴィンチ本誌の巻頭人気連載『あの人と本の話』。今回登場してくれたのは、髙木雄也さん。

(取材・文=松井美緒 写真=booro)

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「僕はもう3回読みました」と髙木さんがお薦めしてくださったのは、2009年に第54回小学館漫画賞少女向け部門を受賞したヒット作『BLACK BIRD』だ。

「少女マンガは普段全然読まないんですけれど、たまたま書店で1、2巻を買ったら面白くて。絵もきれいだし。すぐに全巻揃えました」

 妖が見える女子高生・実沙緒と彼女の初恋の人、天狗の長・匡との運命の恋は、少女マンガほぼ初体験の髙木さんにとって、新鮮だった。

「女の子ってこういうお話にドキドキするんだ、と思いました。匡もめちゃめちゃかっこいいんですよね。これがモテる男なんだなと。クールだけど優しくて、仕草一つ一つに大人の色気があふれている。笑いの取り方もモテそのもの。男として、勉強になりました」

「勉強」であるのみならず、物語そのものにも、強く惹かれている。

「ラストは本気で泣きました。実沙緒の健気さと強さが、僕はとても好きです。彼女と匡の愛を通して、生きるとは、生命を未来に繋ぐとは、という深いところまでテーマが掘り下げられている。あのラストが見たくて、僕はこの作品を読み返してしまうんですね」

 髙木さんは今、主演ミュージカル『アメリカン・サイコ』の稽古に余念がない。本作は、髙木さんにとって2本目のミュージカルとなる。

「1本目は僕の実力不足で本当に苦しかった。でも2本目を期待してくださるファンの方が意外と多くて。ならば、これまでの出演作とは方向性の違うものに挑戦してみようと。サイコパスというキャラクターも、演じてみたいと考えていたんです」

 髙木さんが演じる主人公・パトリックは、昼はウォール街のエリートビジネスマン、夜は猟奇的連続殺人犯という二つの顔を持つ。

「殺人鬼の物語ですが、歌も踊りも麗しくスタイリッシュ。楽しんで観ていただける舞台になっています」

 その麗しさのために、演出の河原雅彦さんはキャストに「マッチョ&美ボディ通達」を出したそう。

「お稽古でいっぱいいっぱいで、体作りとの両立は厳しい闘いです」

 本作は、ブラックコメディ的要素も面白いと、髙木さんは言う。

「パトリックが持っている自己顕示欲や承認欲求は、誰の心の中にもあるものでしょう。もちろん、現代の僕らの中にもあるはずです。すごく普遍的で、人間的な部分もお見せできればと思っています」

スタイリング:寒河江 健

たかき・ゆうや●1990年、大阪府生まれ。2007年、Hey! Say! JUMPのメンバーとしてデビュー。近年の主な出演作に、ドラマ『ザ・タクシー飯店』『女王の法医学〜屍活師〜2』、ミュージカル『ブロードウェイと銃弾』、舞台『東京輪舞(トウキョウロンド)』『星降る夜に出掛けよう』『裏切りの街』など。

『BLACK BIRD』(全18巻)
桜小路かのこ 小学館フラワーC 429〜528円(税込)
幼い頃から妖が見える高校生の原田実沙緒は、百年に一度生まれる「仙果の娘」だった。その血肉は妖に不老不死を与え、花嫁に迎えれば一族に繁栄をもたらすという。彼女をいつも守ってくれたのは、初恋の人・匡。しかし彼も、実は“天狗”の長だった。妖と少女の激しくも切ないファンタジー恋物語。

PARCO PRODUCE 2025ミュージカル『アメリカン・サイコ』
脚本:ロベルト・アギーレ=サカサ 作詞・作曲:ダンカン・シーク 原作:ブレット・イーストン・エリス 翻訳・訳詞:福田響志 演出:河原雅彦 出演:髙木雄也、音月 桂、石田ニコル、中河内雅貴、原田優一、玉置成実、秋本奈緒美、コング桑田、大貫勇輔ほか 東京公演:3月30日~4月13日(新国立劇場 中劇場) 地方公演:大阪、福岡、広島で公演予定
●80年代末のNYウォール街。エリートビジネスマンのパトリックには、夜になるとシリアルキラーに変身する裏の顔があった。

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