行政書士が教える“ご先祖の調べ方”。家系図をつくって、自らのルーツを900年分さかのぼり!【書評】
公開日:2025/4/19

NHKの大河ドラマが話題になるたび、ふと思う。自分という人間は、どんな人たちの縁が繋がって生まれたのだろう…と。たくさんの繋がり合いの先に私という人間がいるのだと心で納得できたら、何者にもなれない自分を少し許せそうな気がする。
『家系図つくってみませんか?』(丸山学/ポプラ社)は、そんな風に自分や家族のルーツを知りたくなった時に役立つ、“ご先祖探し本”だ。
著者の丸山学氏は自らのルーツを900年分たどったことを機に、家系図作成業務を本格化した行政書士である。本書では依頼人のご先祖探しに奮闘した実例を交えつつ、わずかな手がかりから自分のルーツをたどる方法を具体的に解説している。
ご先祖探しをしたくなった時、家紋からルーツを探りたいと考える人は多いのではないだろうか。だが、著者いわく、家紋は届け出の義務がなく、好きなように変更しても咎められなかったため、ルーツを示す絶対的なものであるとは言い切れないそう。
ご先祖探しの第一歩として著者が勧めるのは、最寄りの役所で現在取得できる最古の戸籍「明治19年式戸籍」を取得することだ。
実は2024年3月1日に施行された「戸籍の広域交付制度」により、自身の直系にあたる人たち(※父・母など上に繋がる関係の人たち)の戸籍であれば、全国どこの役所からも他地域に保管されている戸籍を取得できるようになった。ご先祖探しは、これまでよりも手軽に行えるのだ。
本書では図解を用いつつ、古い戸籍の読み解き方や戸籍のさかのぼり方など、役所に行く前に知っておきたい事前知識も詳しく解説しているので、初心者でも戸惑うことなく、調査が進められるだろう。
明治時代までの戸籍取得にかかる費用はその家によっても異なるが、ひとつの家分だと1万円弱であると著者は話す。戸籍をたどる前には父方の先祖だけ調べるなど、自分が満足できる方針を決めておくことも大切だ。
そして、戸籍の取得と並行して行いたいのが、「国会図書館デジタルコレクション」の利用である。デジタルコレクションは国立国会図書館で収集・保存している郷土誌などのデジタル資料をネットで無料で検索・閲覧できるサービスだ。
祖父母や曽祖父母の名前と共に生まれ育った市町村名などをキーワード検索すると。関連情報が表示されて意外な一面を知ることができる。
ちなみに、デジタルコレクションは自身が興味を持っている偉人の名前を検索するのも面白い。時代を感じさせる資料の数々を目にすると、教科書に出てくる偉人が身近に感じられ、大人ならではの日本史の勉強ができる。
こんな風にご先祖調査を楽しみ尽くし、戸籍の取得も終えたら、いよいよ家系図の作成にチャレンジ。著者いわく、初めて家系図の作成にあたる時は関係が理解しやすいよう、手書きがおすすめなのだとか。
本書内では事実婚や養子など、家系図の作成時、表現の仕方に悩みやすい関係の記載例も学べて、心強い。
自分のルーツが可視化できる家系図作成にハマった方は、本書内の中級編・上級編のご先祖探しも楽しんでみよう。より掘り下げた家系調査では古文書を読み解くことが必要な場面も出てくるかもしれないが、実は古文書に書かれたくずし文字は、AIアプリで解読できるのだとか。現代ならではのテクノロジーも駆使しながら、家系調査を思う存分楽しんでほしい。
先祖探しは究極の自分探し。先祖を知るということは、自分を知ることでもある。そんな著者の言葉は、自分の在り方に悩んでいる方にも深く刺さる。どんな人々の縁によって自分という人間が生まれ、今があるのか。本書を参考にしながら私もそれを見つけ出し、生きていく意味を考えたい。
文=古川諭香