【道枝駿佑×生見愛瑠 対談】「私たち自身も、最初はお互いに距離感を探りあっていた」初共演の二人が語る、撮影の軌跡とは?
PR 公開日:2026/3/17
※本記事は、雑誌『ダ・ヴィンチ』2026年4月号からの転載です。

自分には何もないと、未来に希望を抱くこともできずにいた春人。発達性ディスレクシア――生まれついて文字の読み書きは難しいが、ギターと歌声で音楽を奏でる綾音。出会いが人生を美しく変えていく二人を、道枝さんと生見さんはどう演じたのか。
道枝さん(以下、道枝):(生見さんが演じた)綾音は、猫みたいな女の子でしたよね。クラスの誰とも話さないのに、いきなり自分のために歌詞を書いてって迫ってくる出会いのシーンもそうだけど、全体的にミステリアスで、つかめない。でも、いろんな角度から球を投げてきて、受け止めてほしいと思っている。そんな彼女に戸惑いながら、探るように球を受けて、おそるおそる投げ返して……っていう、春人の感情をつくっていくのが大変でした。全身で、全方位で、アンテナを張っていなくちゃいけなかったから。
生見さん(以下、生見):三木監督からはまさに「猫のようにあまり何も考えず、自分自身の陰の部分をさらけだしてほしい」って言われていたんです。自分では陰を抱えているつもりはなかったけど、初めて会ったとき監督から「いや、持ってるでしょう?」って言われて(笑)。
道枝:人見知りですしね。って、実は僕もそうだから、本読みのころはあんまり目が合わなかった(笑)。
生見:私たち自身も、最初はお互いに距離感を探りあっていましたよね。でも、春人と綾音を演じるために、もう少し仲良くならなきゃと思って、二人が路上ライブに挑むシーンを撮る頃に私が「みちおって呼んでもいいですか?」って聞いて。そしたら「じゃあ、めるおって呼ぶね」と言ってくださったあたりから、打ち解け始めた気がする。
道枝:いやいや!「私のことはなんて呼びます?」って聞くから「めるる」って言ったら、生見さんが「そこはめるおでしょう!」って言ったんだよ。
生見:そうか、それで監督はみきおって呼ぶと決めたんだっけ(笑)。現場が終わった今は、恥ずかしくてみちおもみきおも呼べないけど。
道枝:呼べないんだ(笑)。
生見:その後、路上ライブの動画が拡散されていると同級生から教えてもらって、二人で目を合わせて驚くシーンがあるんだけど、あそこで初めて目が合った気がします。綾音にとっても春人との距離がぐっと近づいた瞬間で、なんてきれいな目をしているんだろうと思ったことを覚えています。試写を観たときも、綾音と視線が合う、合わないにかかわらず、道枝さんの目のお芝居に引き込まれる瞬間がとても多くて。繊細な感情を、こんなにも色を変えて表現できるのが本当にすごいなって。
道枝さんの目の芝居から伝わってくるものがあった
道枝:それはやっぱり、生見さんのお芝居に引き出してもらえた部分も大きかったと思います。春人は、誰よりもまじめで優しい男の子なのに、自分には何もないと思っているし、どこか暗い影を背負っている。想いを口にするのが苦手だからこそ、詩を書く時間が唯一の癒やしだった彼が、その詩を必要としてくれる綾音と出会ったことによってどんどん外に開かれていく感じが、僕は人間らしくて好きでした。僕も、あんまり想いを言葉にするのが得意じゃなくて、かわりに歌詞を書いているところもあるから、春人の「言葉にできない気持ちを文字に込める人がいるんだよ」というセリフがすごく心に刺さったな。演じていていちばん、感情移入できた瞬間でもあった。
生見:私は、けっこう思ったことはその場で伝えちゃうタイプ。
道枝:そういう、生見さんのもつまっすぐさと、素のあたたかさが、綾音と重なりあっている感じもよかったよね。
生見:ありがとうございます。出会ってからの10年を描いているから、ずいぶん長い時間を追いかけているようだけど、映画で観ていると意外に短いんですよね。だから、一つひとつのシーンでどんな想いの変化があったか、意識して演じないとなかなか観てくださる方に伝わらない。道枝さんの目のお芝居に惹かれたのは、言葉にしなくても毎回、切実に伝わってくるものがあったからだろうな。
道枝:あと僕は、高校時代を演じるときは、未熟さが伝わるよう、あたふたした所作で演じていたんですよ。大人になってからは声のトーンを下げて、少し余裕が生まれたような感じで。どれくらいうまくいっているかわからなかったけど、試写で観たら、思いのほか10代は動きがクイックでよかった(笑)。
最後のライブシーンではリハですでにぐっときていた
生見:逆に綾音は、出会った最初はいちばん大人っぽくなるように意識していました。発達性ディスレクシアであることを周囲に隠し、春人に出会うまでは、誰のことも信用していなかったし、頼ることもできなかった彼女が、どんどん心を柔らかくして、むしろ子どもみたいになっていく。そうすることで、春人がどれほど彼女にとって大事な存在かも伝わるんじゃないかなと思ったから。
道枝:発達性ディスレクシアのことを僕はこの作品で初めて知りました。確かにみんなと同じように読み書きできないことでつらいこともたくさんあると思うけど、綾音に同情したり、おおげさに扱ったりせず、個性のひとつとして向き合える春人でいたいなと思っていました。
生見:実際に当事者の方にお会いしてお話をうかがったとき、「発達性ディスレクシアであることは忘れてほしい」と言われたんです。おっしゃるように、それは個性のひとつにすぎないのだから、と。ないことにするのはおかしいけど、そのせいで綾音から何かが奪われているわけではない、むしろ人生に何かを与えてくれるかもしれないものなんだと、だんだん思うようになりました。
道枝:そういう綾音の歌だから、みんな、心を打たれるんだと思う。ライブシーンでは、ドライ(カメラなしのリハーサル)のときからぐっときちゃって。そしたら、監督から「もう本番でいいよね」と言っていただきました。おかげで、本番で新鮮に感じ入ることができました。
生見:知らなかった!
道枝:パフォーマンスもすばらしかったけど、それまで積み重ねてきた二人の日々が一気に押し寄せてきちゃったんだよね。あと、試写を観ていちばんぐっときたのは、綾音がデビューのために東京へ行くシーン。新幹線のドアが閉まったあと泣き崩れている綾音を見て「そうか、あんな顔をしていたのか……」って。
生見:私は終盤で春人が、その場にはいない綾音に話しかけるシーンがあったでしょう。あそこでめちゃくちゃ泣きました。一緒にいられる時間ばかりではなかったけど、想いあう二人の姿に、観る人が何かを感じとってくれたらいいなと思います。
取材・文:立花もも 写真:田形千紘 ヘアメイク:miura(JOUER)(道枝さん)、吉田美幸(生見さん) スタイリング:壽村太一(道枝さん)、中井綾子(生見さん)
みちえだ・しゅんすけ●2002年、大阪府生まれ。アイドルグループ「なにわ男子」のメンバー。22年、事務所に入るきっかけでもあったドラマ『金田一少年の事件簿』にて主演をつとめる。ほか出演作に映画『青春18×2 君へと続く道』、ドラマ『マルス-ゼロの革命-』『キャスター』など多数。
ぬくみ・める●2002年、愛知県生まれ。CanCam専属モデル。21年に俳優デビュー。映画『モエカレはオレンジ色』で日本アカデミー賞新人俳優賞を受賞。出演作にドラマ『くるり~誰が私と恋をした?〜』など。4月29日より出演映画『SAKAMOTO DAYS』公開。
