大谷翔平、マツコ、滝沢カレンの愛読書は? 意外な選書から素顔が見える『有名人の愛読書、読んでみました。』【書評】
公開日:2026/3/24

読書好きは、誰かの愛読書に心惹かれる。紙の書籍や電子書籍に書かれている概要も購入の決め手になるが、SNSなどで誰かの愛読書紹介を目にすると、その一冊に寄せた想いに胸を打たれ、手に取りたくなる。
『有名人の愛読書、読んでみました。』(ブルボン小林/中央公論新社)は、そんな出会いを何度も味わえる一冊だ。本作は、大反響を呼んだ『あの人が好きって言うから…-有名人の愛読書50冊読んでみた』(中央公論新社)の第二弾。著者は、大谷翔平や吉沢亮など、名だたる有名人の愛読書を紹介。愛読書を通して、彼らの人間性も考察する。
芸人顔負けの笑いを提供する“滝沢カレン”の愛読書は…?
本書では、有名人をあいうえお順に並べて愛読書を紹介しているため、探しやすい。ひとり当たりの紹介文は3ページほど。隙間時間にも楽しみやすい。
著者いわく、意外と恋愛小説を愛読書にあげる有名人は少ないのだとか。例えば、独特な言葉選びで芸人顔負けの笑いを取る滝沢カレンは、『霧のむこうのふしぎな町』(柏葉幸子:著・竹川功三郎:絵/講談社)という絵本を薦めているのだが(初出:Web「小説丸」2020年11月5日公開)、これがなんとも彼女らしい一冊なのだ。
同作は、風変わりな町で夏休みを過ごす少女・リナの体験記。リナはへんてこりんな住人たちと交流し、生活を楽しむ。ファンタジーなのに冒険ではなく、“生活”が描かれているところが面白い。
どんな住人にもフラットに接する、リナ。その寛容さや強さは、どんな相手にも臆さない滝沢の姿と重なる。もしかしたら、人格形成に関わるほど、同作は強く響いたのかもしれない。
なお、読了前の行動も彼女らしい。
「物語が終わってしまうのが嫌だったから、途中まで読むと霧を探しに外へかけ出すんです。まぁ、夏だから霧はないんですけど(笑)」
愛読書にまつわるエピソードでも、“カレン節”を披露してくれた滝沢。今はどんな本を手に取り、どう楽しんでいるのだろうか。
『チーズはどこへ消えた』だけじゃない“大谷翔平”の愛読書
世界的ベストセラーとなった『チーズはどこへ消えた』(スペンサージョンソン:著、門田美鈴:訳/扶桑社)が、メジャーリーガー大谷翔平の愛読書であることは大きな話題になった。
だがその後、新たな愛読書が判明。経営者向けの言葉が詰め込まれた『成功への情熱』(稲盛和夫/PHP研究所)だ。著者は監督的な立場の指導者から推薦されて読んだのだろうと考察。愛読書からも、大谷の素直さが伝わってくると話す。
実は同書、新装版はビニールカバーつきの文庫サイズであり、角マル処理されている。こまやかな気遣いが感じ取れる本を愛読書としてあげるところからも大谷の人徳が感じ取れるだろう。
ビジネス書ではあるものの、高圧的ではない語り口で謙虚さの大切さを説いてもいるという同作。経営者以外も、自分を省みる一冊になりそうだ。
中学生の“マツコ・デラックス”が読みふけった意外な愛読書とは?
ストレートな物言いなのに、なぜかネガティブな印象を与えない。マツコ・デラックスには、そんな魅力がある。マツコの愛読書はWeb「新刊JP」で、小説家の中村うさぎ氏と対談した際の読書についての会話から著者が推理。
中学生の頃から、ビジネスノンフィクションばかり読んでいたというマツコ。著者が推理した一冊『西武王国 堤一族の血と野望』(上之郷利昭/講談社)には、西武グループの流通と鉄道のトップをそれぞれ担った兄弟の競争が描かれている。
兄弟は、創業者である父への愛憎や心の屈折を企業成長のエネルギーに転化。兄弟が繰り広げる人間ドラマや、ふたりの異なるやり方なども同書の見どころだ。
著者は多角的な視点が詰め込まれている同書を愛読していたことが、マツコらしいと綴る。
ときに遠慮のない発言でマツコさんは毒舌家と評されるが、毒というより彼女はいつもなにかの「観点」を示そうとしているようだ。
持論を押し付けすぎず、物事を多角的な視点から見ているからこそ、マツコの毒は視聴者に不快感を与えにくいのかもしれない。愛読書を知ると、辛口コメントの裏にあるマツコの気遣いが見えたような気がした。
本書では他にも、二段組で600ページ以上もある小説を愛読書に挙げる乃木坂46の元メンバーのギャップに驚かされたり、GENERATIONS from EXILE TRIBE、EXILEの元メンバーである関口メンディーの独特の読書スタイルがわかるなど、新発見の連続。多くの著名人が愛読書に挙げる“有名人愛読書のボス”と言える一冊も明かされている。
出会いの季節でもある、春。ぜひ本書を手に取り、新たな本との出会いも楽しんでほしい。
文=古川諭香
