大河ドラマ『べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜』とマンガ『日に流れて橋に行く』を繋ぐ、商品を手に取る喜び【日高ショーコ×森下佳子対談】
更新日:2026/4/27
――虎が三つ星の存在や流行を伝える手段としてカタログ本をうまく使うエピソードがありますが、蔦重も本を通して流行を生んでいるなど、本が持つ力が大きいことも、2作品を通して改めて感じました。
日高:本は自分の世界を広げてくれるものだなと思っています。自分の人生はひとつしかないけれど、本を読むことで自分とは違う生き方を感じられるし、知識も広がっていく。それによって世界の見え方も変わると思います。
――三つ星の従業員の時子にとってはカタログ本がまさに世界を広げてくれていました。

日高:はい。『べらぼう』でも蔦重の本を読んだ人たちが楽しそうな表情をする場面が多くて、そのカタルシスがすごい。あと蔦重と敵対関係だった松平定信が最後に耕書堂の本を全買いするシーン、大好きです(笑)。
森下:小さい頃や学生時代はお金がないので厳選して1冊を買っていたじゃないですか。定信のあのシーンは、私も大人買いできるようになったときの喜びを思い出しました(笑)。
日高:さまざまな問題で対立していた中でも、本当は全部買いたかったのだろうなと思えて、愛しく感じました。
森下:ありがとうございます! 先ほど日高先生が本について“世界を広げてくれるもの”とおっしゃっていましたが、私も同じように思います。それに“その人と対話している気持ちになる”は、私が本が好きな理由です。描かれている時代や舞台が違っても、読んでいくうちに同じ視点になれる感覚が好きです。あと本の装丁をながめているのも好きです。
日高:わかります! 楽しいですよね。
森下:紙質なども含めての装丁だと思うので、電子書籍の普及により書店で実際に手にする機会がないのは少し寂しい気持ちもあります。
日高:確かに。電子版にも場所を取らなかったりと良さはたくさんありますが、実際に手に取れる書店で選ぶ楽しさは忘れないでいたいです。今まで全然興味なかったジャンルの本を装丁に惹かれて手にとるのは、お店に行かないとなかなかないこと。
森下:後から考えると“この本、なんで買ったんだっけ?”というのはあります(笑)。お店の棚をながめていたからこその出会い。それは、書店だけでなく、百貨店にも同じことが言えるかもしれません。実店舗での出会いはこれからも大切にしたいです。
日高:文化が人を育てることは『べらぼう』を見て、改めて思いました。戯作者・山東京伝が描いた顔に“惡”“善”と描いた悪玉と善玉の表現なんて、今みても斬新で面白い。
森下:黄表紙『心学早染草』に出てきたキャラクターですね(笑)。素晴らしい表現ですよね。漫画のルーツにも思えるというか。
日高:そうだと思います。これを読んで“面白い”と思う人たちが、江戸時代にもいっぱいいたということですよね。本をはじめ、美術や服など、文化がないと人は育たないと思うので、身近に触れられる書店や百貨店はこれからも在り続けてほしいです。
取材・文=上村祐子
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