待望の続編! 畠中恵のお江戸ファンタジー第2弾は、まさかの凶事で幕開け? 新米猫又たちが巨大な謎に挑む『猫君 りんねの輪』【書評】
PR 公開日:2026/4/24

猫好きにはたまらない。猫はそんなに、という人だってついにんまりしてしまう。
「しゃばけ」「つくもがみ」シリーズをはじめ、数多の妖を描いてきた畠中恵さんが生み出した妖怪・猫又の学び舎での物語、『猫君』(集英社)は可愛さに悶絶するお江戸猫又ファンタジー。2020年の単行本刊行から23年の文庫化を経て、数多の人々に愛されてきたロングセラーだ。
20年生きた猫は人に化け、言葉を操る妖怪「猫又」となる。花のお江戸には、ひそかに猫又たちが暮らす六つの陣があり、将軍様の庇護のもと、江戸城内の学び舎「猫宿」で新米たちが妖怪修業をする――という心躍る設定のなか、その年、猫宿に入学してきたのは、素直で正義感の強い茶虎のみかん、狸にも似たのんびり屋・ぽん太、吉原出身で気立ての良い白花(しろか)、戦闘も気も強い仕切り屋の毬姫(まりひめ)、居丈高ではあるけれど、面倒見のいい黒若(くろわか)……とさまざまな性格を持つ子たち。新米猫又たちは、人の姿に化けるための「化け学」や「猫又史」「忍者体術」など、一人前の猫又になるためのさまざまな学びに挑んでいく。そして仲間たちで力をあわせ、さまざまな難関を乗り越えて無事、二年生に進級! というところから、待ちに待った続編『猫君 りんねの輪』(同)は始まる。だが物語は、冒頭から風雲急を告げる。逢魔が時、江戸城内の急な坂で、笠を被った男に……。
「長、殺された。輪廻の輪に乗った」――という展開が待ち構えている!
前巻『猫君』で最強の存在感を放っていた猫宿の頂点に立つ“猫宿の長”。将軍の相談役も務める彼は、猫又としての長い生のなかで、かつて“魔王”と呼ばれた戦国武将であり、すべての猫又を司る”猫君”だったとも噂されていたのだが……。強大な“敵”は、新米猫又たちも狙い、彼らの明日と猫宿存続を懸けた戦いの火蓋が切られていく。
なぜ“長”は殺されたのか? そして彼を殺めた者とは――? 他の学年の猫又たちは皆、それぞれの陣へと返されたのに、なぜかみかんたち二年生だけが師匠たちとともに猫宿に残ることに? 大きな謎、小さな謎が物語のなかにはぽんぽんと生まれ、さらにみかんたちの前にはまだ猫又にもなっていない仔猫が突如、現れる。
百万の術をつかい、すべての猫又を束ねる英雄“猫君”。いつ生まれるとも知れぬ、その者がついにこの世に現れたのではないかという噂は本当なのか――というのが、シリーズに、そして猫又たちの間に、横たわる謎。前作よりも、ちょっぴり成長したみかんたちは力をあわせ(時に、ふぎゃあと喧嘩をしながら)さまざまな謎に立ち向かっていく。
だが敵もさるもの。そんな敵に対抗するべく、二年生猫又たちが駆使しようと頑張るのが、彼らの持つ《飛び道具》「首玉」だ。時の将軍は11代将軍・徳川家斉。前作で、みかんたちは家斉公から、猫陣や猫宿内の扉を開けるための首輪に付ける“鍵の玉”探しを命じられた。無事、ひとつずつ手にしたその玉は、自身を守る化身ともなる大きな力を持っているのだが、二年生猫又たちはなかなか自分の首玉の力を見出すことができない。火を噴く赤猫、喋りちらかす鸚鵡、持ち上げることもできぬ大きな錫杖、何に使うかもわからない銀杏型の得物……。首玉が化けるものをどのように使うのか、という難問が、彼らの前に立ちはだかる。さらに猫宿の面々は、家斉公の傍にいる態度の大きな謎の僧と関わっていくことになるのだが、彼もまた歴史上、超有名な人物だ。だが、なぜ彼が家斉の治世に存在しているのか? ということもミステリーの渦をつくっていく。
ファンタジーではあるが、実際にいた人物、史実としてあったこと、江戸時代の制度などが、ストーリーに入り混じっているところもこの物語の醍醐味。日常と乖離しないところに軸足を置きながら、猫又たちの活劇は今作でさらに拡大していく。そして前作にもちらりと出てきた、“猫じゃ猫じゃ”の歌で著名な東海道のあの者たちも登場。可愛い! とドキドキと、歴史の隙間が交錯する。何はともあれ、ちょっぴり凛々しくなったみかんたちの成長を見届けてほしい。
文=河村道子
