YouTube登録者72万人の精神科医が教える「AIメンタルケア」。具体的なプロンプトでメンタルの不調が改善?【書評】
PR 公開日:2026/5/24

モヤっとした時にすぐ気持ちを吐き出せ、アドバイスをくれるAIは良き相談相手のように思えるものだ。だが、一方で使い方を誤れば、依存や孤立など深刻な問題が生じる危険性がある。
心の専門家ではない私たちがAIに相談する時には一体、どんな点に気をつければいいのだろうか。『精神科医が教える AIメンタルケア入門』(益田裕介、株式会社Kaien/翔泳社)は、そんな疑問を解決する一冊だ。
著者・益田裕介氏は、YouTubeチャンネルの登録者数が72万人超えの精神科医。本書では、イラストも交えながら、AIの基礎知識やAIでのメンタルケア法を分かりやすく解説している。
■AIメンタルケアの第一歩は「自分史」を作ること
まず、事前知識として頭に入れておきたいのは、AIを使ったメンタルケアは医療行為ではないということだ。AIは病名の診断はできず、必ずしも正しい回答を出すとは言えないため、AIの回答を鵜呑みにしないようにしていきたい。すでに医療機関にかかっている人は通院を止めないようにしてほしいと著者は話す。
また、自分がAIでのメンタルケアができる状態であるか知ることも大切な事前準備。「目を閉じて、深呼吸を5分間続けられる状態」を目安にしてほしい。
著者いわく、AIメンタルケアの第一歩は“ありのままの自分”を知ることなのだそう。そこで、著者が勧めるのは、AIを使って“自分史”を作ることだ。自分の考え方の癖や傾向を知るヒントが詰まっている自分史は、私という人間を理解することに繋がるからだ。
AIを使う時は投げかけるプロンプト(指示文)に悩むことも多いが、本書には見本のプロンプトが記載されているので、初心者でも安心して取り組める。
・幼少期を振り返りたい時のプロンプトの例
あなたはカウンセラーです。私の子ども時代について詳しく振り返りたいと思います。一つずつ質問をして、私が思い出せるように手助けしてください。急がずに、じっくりと時間をかけて進めてください。
真面目な人ほど、悩んだ時には「なぜ、私はこんな考え方をしてしまうのだろう…」と自分を責めてしまうこともあるもの。そんな人こそ、自分史を通して自分を知り、悩みを違う角度から捉えるきっかけを得てほしい。
■個人で決断が分かれやすい「トロッコ問題」を解決するには?
AIは便利だが、離婚や転職など個人の価値観によって決断が左右される問い(トロッコ問題)には決断を下してくれない。質問する側はもどかしい気持ちになってしまうこともあるのではないだろうか。
だが、実はトロッコ問題は医師であっても最終的な決断はしてはならない問題なのだそう。意見が割れ、考えなくてはならないことが多い問題であるからだ。
トロッコ問題を解決するために大事なのは、納得できる決断を見つけること。著者は「パーソナル哲学」を知り、トロッコ問題と向き合ってほしいと話す。
パーソナル哲学とは、人生における重大な決断や価値判断に迷った時の行動指針となる、個人の価値観体系のことだ。自分史の制作などで、ある程度AIに「自分についての会話ログ」が溜まってきたら、自分について整理してもらい、パーソナル哲学の獲得に取り組むのもおすすめだという。
こちらも本書に具体的なプロンプトが記載されているので、ぜひ参考にしてみてほしい。パーソナル哲学は、自分の価値観の土台とも言えるもの。自分がどんな人間か理解できていれば、トロッコ問題に直面した時も自分と対話しながら後悔しない決断を下しやすくなるはずだ。
なお、AIメンタルケアをより極めたい人は、代表的な精神療法をAIで学んでみよう。本書には、自分の考えが偏っている気がする時に行える認知行動療法や不安や恐怖が大きくて辛い時におすすめの暴露療法など、様々な精神療法が学べるプロンプトも記載されている。
もちろん、これらは専門家による治療の代替ではなく、あくまで補完的な学習として捉えることが大切だが、自分が置かれている状況の捉え方を変えるきっかけを与えてくれるかもしれない。
また、著者はAI依存症の見極め方や予防法も分かりやすく解説。AIは基本的にユーザーを褒めるように作られているため、依存症を防ぐには「褒め言葉は必要ないので、淡々と回答してください」など、あえて否定的なプロンプトを使うことも大切なのだとか。
良き相談相手となってくれるAIとの付き合い方や距離感を見つめ直すこともできる本書、多くの現代人に届いてほしい。
文=古川諭香
