猫たちと季節のごはんを描いた12か月のイラストエッセイ。「キビナゴの天ぷら」などレシピも載っていて、旬の食材がひと目で分かる!【書評】
PR 公開日:2026/5/27

春はたけのこをゆで、夏は梅を漬け、秋は栗をむき、冬は大根を干す。そういう旬のものを味わう暮らしに憧れる人は少なくないだろう。すでに少しは実践しているという人もいるかもしれない。けれど、忙しさにかまけているうちに、気づけば季節はあっという間に過ぎ去ってしまう。「えー! あの食材の旬ってもう過ぎちゃったの?!」と、がっかりしたことのある人も多いのではないだろうか。
そんな「旬を逃さず、季節を味わいたい」という人におすすめしたいのが、『トラネコボンボンの台所ごよみ 今日はニャに食べる?』(トラネコボンボン、中西なちお/文藝春秋)。料理人であり、イラストレーターでもある中西なちおさんが描く、猫たちと季節のごはんをめぐるイラストエッセイだ。
1月から12月までの旬の食材を描く



“トラネコボンボン”とは、2007年から中西なちおさんが主宰する、店舗を持たない「旅するレストラン」のこと。テーマや場所に合わせてさまざまな料理を届ける一方で、シュールで愛らしい猫が登場するレシピ本やグッズでも、多くのファンを惹きつけてきた。ここ数年は、中西さんは、ふるさとの高知へと足場を移し、市場で買い物をしたり、山や海へ出かけたりしながら、旬の食材を活かす料理を楽しんでいるという。本書では、そうした日々の台所時間をもとに、愛らしい猫たちを主役に、1月から12月までの旬の食材や野山、海の恵みが、のびやかな文章と絵で綴られていく。ああ、ページをめくるだけで、どうしてこんなにもおなかが空いてくるのだろう。
たとえば、6月。重石をのせて数日かけて漬けた白瓜の、カリンカリンの歯ざわり。追熟中の梅が台所いっぱいに放つ、甘く青い香り。ほんの短い旬を逃すまいと仕込む、杏のシロップ漬け。味噌汁に入れるために刻んだ茗荷の、鼻に抜ける爽やかさ。皮ごと薄く切って梅甘酢に漬けた新生姜を思い浮かべれば、こちらまで鼻の奥がツンとしてくるような気がするし、豆鯵の南蛮漬けを紹介したページでは、「それとビール」のひと言に、思わず喉が鳴る。読み進めるうちに、「そうか、この食材もこの時期が旬なのか」と気づかされるのも楽しい。季節の恵みを見つけ、それを食べる喜びに自然と胸が弾む。

また、実際のお料理に活かせるのもいい。猫たちの絵に添えられた短い文章には、いつもの食材の意外な使いかたや食べかた、組み合わせ、調理のコツなどがさりげなく忍ばせてある。たまに、詳しいレシピも載っているから、読んでいるうちに台所に立ちたくなってしまう。たとえば、1月のキビナゴの天ぷら。高温で揚げて、ウスターソースでいただくという意外な取り合わせに、食いしん坊心がくすぐられる。小さな魚ならではの香ばしさとカリッとした軽やかな食感を想像するだけで、早く作ってみたくてたまらない。

釣られたばかりの魚の色、木にいっぱい実った杏、
斜面に生えそろう蕗、カゴいっぱいに収穫した柑橘。
食材の一番良い瞬間は、どれも美しくておいしく、
飽きることがありません。
そう語る中西さんの毎日に憧れずにはいられない。猫たちとともに綴られる12か月は、なんておいしく、なんて愉快なのだろう。春夏秋冬の食卓を彩る料理は和洋さまざまで、どれも食欲をそそる。青菜の餃子、おうちの卵チャーハン、春のおうどん、初鰹、栗のプリン、芋餅――思わず食べてみたくなる料理が、ページのあちこちにちりばめられている。おしゃれで愛らしい絵柄と、自由気ままな猫たちの姿が、その豊かな時間をいっそう愛おしいものにしてくれる。お料理が好きで、猫が好きで、食べるのが大好きな人にとって、この本ほど、満ち足りた気分にさせてくれるものはない。食べることの喜びと、季節を味わう楽しさを、ごちそうのように届けてくれる。そんなあたたかな一冊を、あなたの食卓にもぜひ。
文=アサトーミナミ
