SUPER BEAVER渋谷龍太のエッセイ連載「吹けば飛ぶよな男だが」/第59回「この顔にピンときたら」
公開日:2026/5/27
街中で声を掛けてもらえる機会が増えた。ライブに来てくれる人、音楽を聴いてくれる人、自分たちのことを好きでいてくれる人がいてこそ、我々は楽しく音楽が出来ているので、心の底からおかげさんです、という気持ち。だからそんな人から声を掛けてもらえると、とても嬉しい。
そりゃもちろん、私もなんの予定もなくぶらぶらしていることはあまりないので、何かしらの予定があって歩いている。なので、物凄く急いでいる時もあったりするが、その時以外はできる限りの応対はさせて頂きたいと思っている。延々とお話をしたりするのは実際問題難しいが、握手をしたり写真を撮ったりなんかは大変に光栄に思うので、是非ともお受けしたい。それがもしもその人の、これからの生活の糧になったりするようなことがあれば、一生懸命活動していて良かったなア、と思える。
ただこれは、一概に私に限った話であって、別の誰かも同じとは限らない。苦手に思う人も、訳あってお断りしている人もいるので、しっかりと見極めて欲しい。その人の意思と、その場の状況を判断した上で声を掛けるのが良いのではないか、と私は思う。
いやはや、少し前からしたら全く考えられない題材のエッセイだ。ただ、声を掛けてもらえる回数が増えれば増えるほど、考える機会が増えていく。嬉しいことも、難しいことも。
もちろん嬉しいことが殆どなのだが、若干拗らせているなア、と感じることもあるはある。それは、ありがたいんだが、その線越えたら駄目じゃね、みたいなこと。先日、なんの相談もなく急に動画を回されて、「**ちゃん(おそらくその方の知人)にメッセージください」と言われた時は正直辟易した。他の事例もたくさんあるが、なんとなくこういった系譜のものが多い。好意の向け方、表し方の話ね。どれだけ好いてくれていたとしても、不意にカメラを向けられたりしたらあまりいい気持ちはしないでしょう、私も一応は人間であるということをお忘れなく。マナーってより、モラル。
あア、なんと贅沢な提唱。ありがたいが故に出てくる由々しき問題提起。大丈夫、こういったことにすら、根幹は感謝であるからして、そこら辺は揺るぎないよ。いつもありがとう。
あと、これは微々たることと思っているので、なんてことはない世間話程度に受け取ってもろて、というのが、名前間違い。案外多い。
これ、仕事の現場だったら結構大変だが、私生活において、そしてこちらが一方的に知ってもらっている場合においては、これもあくまで私に限った話だが、なんてことはないと思っている。
そもそもバンド名さえ覚えてくれてりゃかなりありがたいので、個人個人の名前まで覚えてもらわなくても構わんよ、ってな具合。だから「SUPER BEAVERのボーカルの方ですよね?」とか「SUPER BEAVERさんですか?」とかいった類の声掛けは正直全然悪い気はしない。むしろバンド名だけは把握している、というマス層にまで広がったという証拠に他ならないので、私は初めてこのような形で声を掛けてもらった時、「きたきたー」と小さくガッツポーズをした程だ。
ただ一歩進んで、ありがたいかな個人にまで興味が及んでいる方において、その及び方が一歩に満たない場合、「渋谷龍太」という割と間違えにくく覚えやすい名前も、微細な変化をすることがある。
吹けば飛ぶよな男だが (単行本)
しぶや・りゅうた=1987年5月27日生まれ。
ロックバンド・SUPER BEAVERのボーカル。2009年6月メジャーデビューするものの、2011年に活動の場をメジャーからインディーズへと移し、年間100本以上のライブを実施。2012年に自主レーベルI×L×P× RECORDSを立ち上げたのち、2013年にmurffin discs内のロックレーベル[NOiD]とタッグを組んでの活動をスタート。2018年4月には初の東京・日本武道館ワンマンライブを開催。結成15周年を迎えた2020年、Sony Music Recordsと約10年ぶりにメジャー再契約。「名前を呼ぶよ」が、人気コミックス原作の映画『東京リベンジャーズ』の主題歌に起用される。現在もライブハウス、ホール、アリーナ、フェスなど年間100本近いライブを行い、2022年10月から12月に自身最大規模となる4都市8公演のアリーナツアーも全公演ソールドアウト、約75,000人を動員した。さらに前作に続き、2023年4月21日公開の映画『東京リベンジャーズ2 血のハロウィン編 -運命-』に、新曲「グラデーション」が、6月30日公開の『東京リベンジャーズ2 血のハロウィン編 -決戦-』の主題歌に新曲「儚くない」が決定。同年7月に、自身最大キャパシティとなる富士急ハイランド・コニファーフォレストにてワンマンライブを2日間開催。9月からは「SUPER BEAVER 都会のラクダ TOUR 2023-2024 ~ 駱駝革命21 ~」をスタートさせ、2024年の同ツアーでは約6年ぶりとなる日本武道館公演を3日間発表し、4都市9公演のアリーナ公演を実施。2025年4月に結成20周年を迎え、SUPER BEAVER 自主企画「現場至上主義 2025」を4月5日、6日にさいたまスーパーアリーナで行い、さらに、6月20日、21日に自身最大規模となるZOZOマリンスタジアムにてライブを行うことが決定。
自身のバンドの軌跡を描いた小説「都会のラクダ」、この連載を書籍化したエッセイ集「吹けば飛ぶよな男だが」が発売中
