自意識過剰なヒロインだらけ!? 昆布わかめ最新作、ヒロインたちが「私のこと好きじゃなかったのかよ!?」と勘違いしまくる新感覚ハーレムラブコメ【書評】
PR 更新日:2026/8/19

期待して、勘違いして、その結果なにが生まれるのか。それは「自意識過剰」だ。そんな自意識過剰をそのまま放置しておくと、なんと“恋”が発芽する。なぜなら恋はだいたい勘違いから始まるからだ。
そんな自意識過剰から始まる恋物語は、読者にとって珠玉のラブコメディとなる。
星の数ほどあるだろう“かわいい女子とのラブコメ”作品に、最近新たに加わったのが『私のこと好きじゃなかったのかよ!?』(集英社)だ。作者は昆布わかめ先生。TVアニメにもなった『ジャヒー様はくじけない!』『最近雇ったメイドが怪しい』(共にスクウェア・エニックス)をご存じの方なら、キャラクターデザインの良さは説明不要だろう。多くのラブコメの中でも、本作はひときわ輝く作品になりそうだ。
そんなかわいい女の子“たち”が大活躍する本作。そう、この物語はいわゆるハーレムラブコメなのである。
自意識過剰なヒロインだらけ。心の中で叫ぶのは「私のこと好きじゃなかったのかよ!?」

主人公は高校2年生の岡部かずあき。彼は中学3年生のときに失恋し、そのショックで当時の志望校に合格できなかった。失恋相手は姉の友人で、かずあきと非常に仲が良かったが、いきなり結婚してしまったのだ。
「俺のこと好きじゃなかったのかよ……」
かずあきは「二度と恥ずかしい勘違いなどしない」と心に誓い、今は毎日机に向かい勉強にあけくれている。そんな生活を続けていたら友達の一人もいなくなる……はずだが、彼には積極的に話しかけてくる人間がいた。
まずは、何だかんだとかずあきに話しかけてくる仁科ひな。明るくかわいい彼女は1年時から同じクラスで「今年も私が君を独り占めやね」「2年連続同じクラスで隣の席は運命やんなあ」などと、からかうように思わせぶりなことを言ってくる。なお、彼との会話のちょっとした言葉にドキドキしている。おそらく最もチョロい。
今年彼と同じ高校に入学してきたのが年下の幼馴染・久遠(くおん)るい。彼女はスタイル抜群・容姿端麗・スポーツ万能で、女子が告白したくなるほどカッコいい人気者……だが二人で会うと親しすぎる雰囲気を出して迫ってくる。一番思い込みが激しい、二面性があるヒロインである。
かずあきが家に帰ると、従姉・猪上(いのうえ)さとりが待っている。彼女は名門大に通う女子大生だ。優秀で一見ストイックな彼女は、かずあきが目指す理想のひとつであった。そんな彼女は彼の部屋で家庭教師をしていた。その実「思春期ボーイを悶々とさせてやりますか」などと考えていた。強い妄想癖がある女性である。
そして佐野きあら。彼女は2年生になってかずあきとの距離を突然詰めてきた。ストレートにグイグイくるきあらは、連絡先のメモを渡してくるし彼と一緒に帰りたがる。そして「かずくんと呼びたい」などとお願いしてきて、かずあきがOKするとニコニコになる。
きあらとかずあきが話している様子を見た三人のヒロイン、ひな、るい、さとりは、心の中でこう叫んでいた。
「女の子の友達がいるみたいだけど、私のことが好きじゃなかったのかよ!?」
彼女たちは全員「かずあきは自分を好き」だと思っている。勘違いをしているのだ。
一方かずあきは、無自覚な言動で彼女たちを惑わせるが他意はない。彼は彼女たちの「彼に好意のありそうな」言動に動揺しつつも勘違いはしないとかたく決意している。
全員悪人、ではなく全員(ほぼ)自意識過剰。感情はすれ違ったままの不思議なハーレムラブコメの行方は。
感情が嚙み合わないハーレムラブコメ、ヒロインレースに勝つのは誰?

物語序盤では物語の展開は明らかになっていないが、この時点で恋のヒロインレースを予想してみたい。
チョロすぎて心配になるひな、幼馴染枠で感情重めのるい、年上妄想おねえさんのさとり、それぞれ“おもしれー女”で魅力的だが、実はきあらが強いと感じる。8話までは何故か彼女だけ心理描写がなく。かずあきにも読者にも内心が分からないのだ。しかも彼女は、彼の過去を知っているらしいのである。7話では「かずくんが優しくていい人って……知ってたから、ずっと仲良くなりたいと思ってた」と言っており、かずあきはさらっと流していたがかなり意味深だ。
とはいえ、かずあきは失恋のトラウマを抱えており、「心はかき乱されても、どうせ勘違いだ」と強く思い込んでいる。自意識過剰な彼女たちがいくら匂わせても、自意識過剰な彼に好意を意識させることは難しい状況だ。
ただ、そう遠くない未来に本作は進展すると予想している。
ヒロインたちは「彼がどう思っているか」ではなく「自分がどうしたいか」を考えた時、ハッキリした行動に出るのではないか。そしてそれは、きっとかずあきのトラウマを消してくれるはずだ。かずあきはその時、恋に向き合わなければならない。悩みぬいて出すのはどんな答えなのか。
自意識過剰なヒロイン三人と、謎めいたヒロイン一人が少年を四方向から取り囲む新機軸の“すれ違い”ハーレムラブコメは、本来なら交通整理が必要である。
とはいえ、彼女たちは自ら信号を無視して突っ込んでいくタイプだ。最初に正面衝突するのは誰なのか――。
ぜひ一緒に、ハラハラしつつ笑いながら見守っていこうではないか。
文=古林恭
