50代からの「女じまい」は超ポジティブ! 阿川佐和子と伊藤比呂美に学ぶ、親の介護や加齢のモヤモヤを乗り切る極意【書評】

文芸・カルチャー

PR 公開日:2026/6/19

サワコと比呂美―女じまい
サワコと比呂美―女じまい(阿川佐和子・伊藤比呂美 / 中央公論新社)

 子育てがそろそろいち段落する代わりに親の介護が…こういうの、オンナも50代になればありがちな現実だ。いくつになっても家にまつわる雑事はややこしく、さらには冠婚葬祭も年相応にこなさねばならず(特にぐっと増えるのが葬儀関連・涙)、「母として」「妻として」「娘として」などなど、役割の使い分けもいろいろ複雑に。まだ老け込みたくないけれど、どうしていいかもわからず…つまり、なにかと「めんどくさい」。

 作家の阿川佐和子さんと詩人の伊藤比呂美さんの本音対談集『サワコと比呂美―女じまい』(中央公論新社)は、そんな日々にうへぇとなりそうなオンナたちに元気を与えてくれる一冊。テレビや対談で人前に出ることも多く、作家である厳格な父のもとで育った比較的常識派の阿川さんと、子連れで渡米し、海外生活も長い自由人の伊藤さん。かなりタイプが違うお二人がオンナの人生につきまとう悩ましい雑事についておおらかに語り合うのだが、年齢を重ねた余裕だろうか、お二人とも「私はこう!」と自らの生き方に肯定的なのが気持ちいい。ゴーイングマイウェイな大先輩(しかも経験豊富な)の数々の実感のこもった経験談は「あ、そんな感じで大丈夫なんだ」とこちらの気持ちも軽くしてくれる。

「自分の親だけ介護を担当する時代」になってきた

 たとえば第1章の「初老のわれらのカラダ事情」では、忍び寄る老いを「しかたないわよねー」と認めた上で、ブラジャーやつけまつげをやめてラクになった話や、「何を着たらいいのか問題」(これ、ある程度の歳になるとみんな悩みます)についても語り合う。ちなみに伊藤さんは「ユニクロの黒と白のシャツだけに決めた」と潔く、阿川さんは「ちゃんと『流行はわかっている』と感じさせた上で、あえて流行りものは拒む」と高度な姿勢。若い頃のように「●●じゃなきゃダメ」的な感覚に縛られることなく、それぞれのスタイルを受け止める心の余裕が素敵です。

 また本書には、親の介護と死、葬儀、さらには親しい人とのお別れなど、歳を取るほどに多くなりがちな話題も多く取り上げられている。お二人ともひと通り体験されており、「まだ親の介護は娘がやる雰囲気だった。今は(夫の親の介護には手を出さず)自分の親だけ介護を担当する時代になってきてよかった」「最後のひと息まで見守れたから泣かずに見送れた」など、経験者だからこその言葉が印象的。「婚家の墓に入りたいか」と気になる話題もあれば、「平服とあったので偲ぶ会にピンクの上着で出てしまった」(阿川さん)、「親の骨をコーヒーミルで細かくして散骨した」(伊藤さん)など驚きのエピソードも多数あり。どうしても前例に縛られがちな話題だけに、あっけらかんとしたお二人のおしゃべりに「そういう考え方してもいいのかも」とこちらの視界もフラットになる。

 それにしても『女じまい』というタイトルの強さよ。てっきり「女的なアレコレをやめる」という老いの諦観まじりの内容を想像していたが、実は「女は『こうでなきゃいけない』をやめる」という自分宣言的なポジティブな感覚が満載だった。70を越え、まだまだ自分らしく自由に生きる大先輩をみていると、「年を取るのも悪くない」と思えるのが何よりうれしい。

文=荒井理恵

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