食べる時は別人に変貌! 職場では眉間にシワを寄せているクールな女性の規格外の食欲と恋模様を描いたグルメラブコメ!【書評】
公開日:2026/8/13

無愛想に見えるだけで話しかけづらいと思われたり、真面目すぎる印象から近寄りがたいと思われたり。『春川さんは今日も飢えている』(おりはらさちこ/ぶんか社)の主人公・春川夏実は、職場ではそんな堅物な印象を持たれている24歳の女性会社員だ。しかし彼女は、周囲にはひた隠しにしている裏の顔を持っていた。
その顔とは、食べ物を前にするとテンションが跳ね上がる、規格外の大食い女子という一面だ。一歩オフィスの外に出れば、彼女は食への凄まじい情熱を見せる。牛丼を食パンで挟んでボリュームをアップさせる「牛丼サンド」を生み出したり、おでんとおにぎりを組み合わせてお茶漬けにアレンジしたりと、手軽で美味しいメニューを作っては次々と平らげていく。大きな春キャベツを丸ごと1玉投入したトマトとチーズの鍋に大満足する姿など、その胃袋には限界がない。
周囲にバレないように大食いライフを満喫していた春川だが、ある日、ひょんなことから同じ職場の同僚男性・芹沢に知られてしまう。想像を超える彼女の食欲に、芹沢は引くどころか、飾らない素の姿に少しずつ惹かれていく。ふたりの距離が縮まりそうで縮まらないもどかしいやり取りも本作の大きな見どころとなっている。
美味しそうなアレンジ料理をこれでもかと豪快に平らげる春川の姿は、見ているだけで気持ちがいい。カツ丼の付け合わせにトマトやアボカドを使うなど、思わず試したくなるアイデアも満載で、ひと口ごとに幸せがあふれる表情を見ていると、否応なく食欲がわいてくるだろう。加えて、食事シーンの楽しさはもちろん、普段は眉間にシワを寄せている彼女が、食べ物を前にすると天然な面をのぞかせるギャップもたまらない。
空腹時に読むのは注意したいほどの破壊力があるが、それもこの作品らしい楽しみ方だ。読み終える頃には、思いっきり美味しいものを食べたくなっているはずだ。
文=つぼ子
