古今東西の作品をオマージュしたロードノベル『ペーパー・リリイ』の魅力を深掘り。集英社文庫プレゼンツVol.1 ダ・ヴィンチWeb立ち読み読書の会 イベントレポート
PR 公開日:2026/7/17

2026年6月19日、集英社本社で、「立ち読み読書の会」が開催された。
本イベントは、みんなで同じ作品を読み、感想を伝え合う読書会。今回が「集英社文庫プレゼンツ」としての初めての開催となった。
立ち読みしたのは、今年3月に文庫版が刊行された、佐原ひかりさんの『ペーパー・リリイ』(集英社文庫)。集英社文庫の夏のフェア「ナツイチ2026」にもピックアップされている作品だ。
本作の主人公・杏は、結婚詐欺師の叔父に育てられた女子高生。夏休みのある日、叔父に300万円を騙し取られた女性・キヨエが家にやって来る。杏は、家から500万円を持ち出し、彼女と一週間限定の旅に出ることに。目指すのは、幻の百合が咲く谷間。エモーショナルな夏の旅を描く、青春ロードストーリーだ。
著者の佐原ひかりさんも登壇した、イベントの模様をレポートする。
『ペーパー・リリイ』をみんなで立ち読み。作品誕生のきっかけは『贈与論』

イベントが始まり、佐原さんからの挨拶の後、さっそく40分間の立ち読み読書タイムに突入。
参加者が思い思いのペースで『ペーパー・リリイ』を読み進めた。
その後、著者の佐原ひかりさんが登場し、質問タイムに入った。
まず、司会者から「『ペーパー・リリイ』は2022年に刊行された作品ですが、どのようなきっかけから誕生したのでしょうか」という質問。本作の誕生秘話が明かされた。
「私は2021年デビューで、ちょうどこの6月でデビュー5周年になるんですけれども、デビュー作が『ブラザーズ・ブラジャー』(佐原ひかり/河出書房新社)という作品でした。2作目は何を書きましょう、という話になったときに、まず思ったのが“風景をたくさん書きたい”ということでした。それで、ロードノベルならたくさん風景描写ができるな、と思って、こんな話にしました」(佐原さん)
本作は、マルセル・モースの『贈与論』に影響を受けているという。
「『贈与論』は、簡単に言うと“社会は、与えることと受け取ることと返礼することで成り立っている”というものなんですけれど、私自身、誕生日プレゼントをもらったら返さないといけない、とか、自分が誕生日プレゼントをあげたのに、その人から私はもらってないかも、とか、本来は自由なはずのことになぜか義務のようにそう感じることに、すごく興味を持っていたんです」(佐原さん)

本作の原型は、デビュー作の『ブラザーズ・ブラジャー』のエピソードの中にも登場している。
「『ブラザーズ・ブラジャー』を読んでくださっている方はお気づきですかね……? それを生かす形で、『ペーパー・リリイ』という作品を書きました」(佐原さん)
本作と『贈与論』については、印象的なエピソードがあるという。
「雑誌の『ダ・ヴィンチ』さんで、『ペーパー・リリイ』についての取材をしていただいたことがあったんですけれど。インタビュアーさんが入ってきて開口一番『佐原さん、これって『贈与論』の話してますよね』って、岩波文庫から出ているモースの『贈与論』を持ってこられたんですね。そのとき私は、ダ・ヴィンチやばい! って驚いちゃって。女性どうしの関係性とか、作品内でのロードノベルのオマージュについてお話しすることが多かったんですけど、ダ・ヴィンチさんはすぐに『贈与論』に気づいてくださって、嬉しかったのを思い出しました」(佐原さん)
