「メール1通を作成するのに1時間以上かかってしまう」。発達障害のお悩みを生成AIで解決する仕事術とは?【書評】
PR 公開日:2026/7/29

「AIを使いこなして仕事をする」というと、難しい印象を受ける方も多いのではないだろうか。特に発達障害を持つ方にとって、ハードルが高く感じるかもしれない。
しかし発達障害と生成AIは、かなり「相性がいい」そうだ。
『発達障害の人のための生成AI仕事術 「苦手」をAIに預ける新しい働き方』(AI&IT特化型就労移行支援事業所チームシャイニー:編集、遠藤俊、吉井 智紀、田之畑諒、崎尾昭彦:著/翔泳社)は、就労移行支援事業所でAI活用を教えてきた著者による、「利用者たちが実際に成果を出してきた」生成AI仕事術を体系化した一冊である。
本書は具体的な状況が想定され、問題事に適した生成AIの活用方法を紹介しているのだが、ただAIというツールの使い方を教えているだけではない。
発達障害の特性による「つまずきの“原因”」を明らかにした上で、“解決策”としての理論(今後少し違ったケースでも活かせる考え方)、そして具体的な使用方法を分かりやすく説明してくれているのだ。
例えば「頭の中に言いたいことはあるのに、メール1通に1時間以上かかってしまう」といった問題に悩んでいるなら。
文章を考えるのに時間がかかってしまう理由は、「脳の『ワーキングメモリ』がいっぱいになっているから」だそう。発達障害を持つ方の特性の一つとして(全員というわけではない)、記憶を一時保存する「ワーキングメモリ」の機能が定型発達の方より小さかったり、散らかりがちだったりする場合があるという。
解決策として「ピラミッドストラクチャー」という考え方を用いるそうだ。簡単に言うと「結果」と「理由」を明らかにすることなのだが、ちょっと難しそうと思った方も安心を。
「AIは、散らかったおもちゃ箱(あなたの頭の中)から、必要なパーツを見つけ出すのがとても得意」なのだそう。
詳しい流れは本書を参考にしていただきたいのだが、「決まったプロンプト(AIに指示するための定型文のようなもの)」をそのまま使い、バラバラな思考(今ある情報、上司から言われたこと、考えたこと、考えきれていないこと、心配なこと等々)を、そのままAIに教えるだけで、まずはAIが「結論」を出してくれるのだ。
その結論から「理由」を整理し、更にはメール文章として適切な文面も(あなたが普段使う口調に合わせて)作ってくれるのである。
ここまでの過程は丁寧に書かれており、「本書通りに」するだけなので難しいことは何一つない。
「1通に1時間の苦痛をAIとの『共同作業』で解消する」。そんなことが、生成AIのテクニックを知れば可能なのである。
他の問題として、「限界まで頑張りすぎて、急に動けなくなってしまう」方には、「AIはあなたの心の『優しい通訳』」になり、または「良かれと思ってやったのに『これじゃない』と言われてしまう」状況には、「『空気を読む』苦労をロジカルな確認に置き換える」ことができたりする。
はたまた「マニュアルがない仕事でフリーズしてしまう」方には、「完璧主義のブレーキを外す『取りあえず30点作戦』」などもあるそうだ。
使い方さえ分かれば、生成AIは自分専用の「補助ツール」になるのである。
発達障害を根性論や努力で変えようとする必要はない。その特性を受け入れ、得意なところは伸ばし、「苦手なところはAIを頼ろう」と考えてもらいたいというのが、本書の基本的な考え方である。そしてAIと対話しながら問題を整理し、解決する力を身につけてもらいたいという想いもあるそうだ。
「すごく困っている方」から、「時々困ることがある方」まで、気軽にAIを使ってほしいと思う。苦手や不安が無くなれば、今以上に前向きに、仕事に向き合えるのではないだろうか。
文=雨野裾
