黒木メイサ「女性が主人公だからこそ浮き上がってくるものがある」深町秋生「小島健さん(Aぇ! group)ら男性陣の演技は色気があった」『組織犯罪対策課 八神瑛子』シリーズドラマ化【黒木メイサ×深町秋生インタビュー】
更新日:2026/8/12

シリーズ累計発行部数50万部を突破している深町秋生さんの人気警察小説『組織犯罪対策課 八神瑛子』シリーズ(幻冬舎文庫)がドラマ化。2026年7月24日(金)からHuluで独占配信中だ。主演を務めるのは、11年ぶりに連続ドラマで単独主演を果たす黒木メイサさん。
ダ・ヴィンチWebでは、原作者の深町秋生さんと主演の黒木メイサさんに単独インタビューを実施。黒木さんがスタントなしで挑んだ迫力のアクションシーンをはじめ、共演する小島健さん(Aぇ! group)や高良健吾さんら共演陣との撮影秘話、そして原作とドラマそれぞれの魅力についてたっぷり語ってもらった。
黒木メイサ「彼女が背負っているものを知れば知るほど、寄り添いたくなってしまう」

――警視庁上野署組織犯罪対策課の警部補であり、亡き夫の復讐を果たすためなら裏社会ともつながる八神瑛子を描いたシリーズ。ドラマは、3巻までの内容をぎゅっと濃縮したうえで再構成されていて、とても見ごたえがありました。
深町秋生(以下、深町):本作は、簡単に言ってしまえば、闇落ちした刑事の話。原作小説では、夫が死んだあとのアウトローな彼女の側面を軸に描いていますが、ドラマではもっとまっとうに刑事らしかった、心が壊れる前の彼女と、夫・雅也とのエピソードをしっかり描いてくれているので、大変おもしろかったです。準主役的な存在感を示す(雅也を演じる)毎熊(克哉)さんの姿に、その手があったか、とちょっと悔しくなりながら、うるっときてしまいました。

黒木メイサ(以下、黒木):よかったです。私は八神瑛子のような女性が好き……というと語弊があるかもしれませんが、最初に原作と台本を読んだときから、応援したくなるような気持ちを抱いていたんですね。誰もが正面衝突を避けるような相手にも立ち向かっていく強さにも共感してしまうというか、彼女が背負っているものを知れば知るほど、寄り添いたくなってしまう。撮影前に廣木隆一監督とお会いしたときも、八神瑛子はただ強いだけの女性ではないことを意識してほしい、と言われましたので、そんな彼女を大事に演じたいと思っていました。
深町:すばらしかったですよ。僕は、自分の書いた小説については我が子のような気持ちを抱いていますが、映像化作品は孫のように見守っている。この部分を削って、ここを足したんだな、と客観的に眺めながらおもしろがっている、という感じです。
黒木:孫ですか。おもしろい表現ですが、なんとなく腑に落ちるものがあります。じゃあ、脚本にも提案などはされなかったんですか。
深町「最初の構想では、主人公を男性にするつもりだった」

深町:まったくしていません。もちろん、確認はさせていただきましたが、僕が口出しすると映像ならではの創作を邪魔してしまうし、役者の演技も制限してしまうことになるでしょう。創造性を削りたくないので、ご自由につくってくださいというスタンスです。もちろん、自分で脚本を書かれる方もいますし、どっちが正しいということはないのですが……あ、でも、舞台が上野であるということと、女性刑事が主人公であることは変えないでほしいとは言ったかな。でも実は、最初の構想では、主人公を男性にするつもりだったんですよ。
黒木:そうなんですか?
深町:僕は大沢在昌先生の『新宿鮫』が大好きで、あんなふうに一匹狼の刑事を描きたいと思っていたんですよね。でも、いざ書こうと思ってもなかなかピンとくるものが浮かばなかった。でも、編集部から「これは女性でやったほうがいい」と言われたとき「それだ」と思ったんです。警察というのはまだまだ男性中心社会。2011年ごろは女性の警察官が10パーセントにも満たない時代でした。そんな状況で、組織犯罪を行う大悪党たちを相手に活躍させたらおもしろそうだな、と。
黒木:女性が主人公だからこそ浮き上がってくるものが、この作品にはたくさんあると思います。暴力団のところにも臆することなく乗り込んでいって、脅されても、裏社会とのつながりを指摘されても「だからなに?」と一蹴する。その姿にはめちゃくちゃ憧れました。いろんな人が生きづらさを感じている世の中で、誰になんと言われようと自分の目的のためにはためらわずに突っ込んでいく彼女の姿に、励まされる気持ちになる人もいるんじゃないでしょうか。一方で、瑛子が裏社会をただ取り締まるわけじゃないからこそ、必要悪という存在についても考えさせられますし……。
深町:それでいうと、夫を想ってふと悲しみをたたえるときの、黒木さんのまなざしが大変印象的で、本作は悲恋の物語でもあったのだと気づかされたんですよね。それもまた、一匹狼の男性刑事を主人公にしていたら、描けなかったことかもしれません。そして、演じてくださったのが黒木さんだったからこそ、新しい側面を浮かびあがらせてくれたのだと思います。
黒木:瑛子は、誰が敵か味方かわからないギリギリの状況で常に駆け引きをしていなきゃいけないんですよね。大切な人を失った悲しみと、一人になったときだけ吐露する弱さ、りょうさん演じるインリーという中国マフィアのボスと会うときだけは見せるちょっと気の抜けた顔なども、強い側面と同じくらい大事にしなくちゃいけないなと思っていました。そのためには、八神瑛子という一人の人間の人生を、楽しみながらちゃんと生きようと思ったんです。うまくできていたら、よいのですが。
