黒木メイサ「女性が主人公だからこそ浮き上がってくるものがある」深町秋生「小島健さん(Aぇ! group)ら男性陣の演技は色気があった」『組織犯罪対策課 八神瑛子』シリーズドラマ化【黒木メイサ×深町秋生インタビュー】

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更新日:2026/8/12

「そろそろ、上野の小説があってもいいんじゃない?」舞台が上野になった理由

――舞台が上野であることもこだわりがあったとのことですが、それはなぜなのでしょう。

深町:一作目が刊行されたのは2011年。まだスカイツリーも完成しておらず、今のようなインバウンドの波も訪れていないころの上野には、かなり混沌としたものを感じていたんですよね。美術館に博物館、動物園と文化的な施設が密集している一方で、東南アジアのような雰囲気の漂うアメ横商店街があって、御徒町にはインドのジャイナ教徒の方々が宝石商を営んでいて。コリアンタウンがあったかと思えば、観光地化されていない老舗のゲイタウンもある。多種多様という表現では追いつかないディープな土地なのに、フィクションの舞台に選ばれるのはたいてい渋谷、新宿、池袋。そろそろ、上野の小説があってもいいんじゃない? と思って書きはじめました。

黒木:上野だからこそ浮かびあがるものもたくさんありますよね。今回、実際に上野でロケさせてもらえたのは幸運だったなと思います。店と店の間に裏路地があって、すべりこむと表とはまたちがう混沌とした空気が漂っている。あの空気感は現場でしか醸し出せないものだと思うので、風景として撮影できたのはもちろん、私自身が肌で感じながら演じられたのが嬉しかったです。

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深町:アメ横をかなり激走されていましたね(笑)。僕はふだん、あまりアテ書きというものをしないのですが、八神瑛子シリーズに関しては、梶芽衣子さんの主演映画『女囚さそり』を頭の片隅に思い浮かべながら書いていたんです。特殊警棒を振る黒木さんはかっこよかったし、豹のような敏捷さがイメージとぴったりで僕も嬉しかった。

黒木:警棒を扱うのは初めてだったんですけど、意外と、人との距離感をつかむのが難しかったです。日本刀なら、過去に経験があるんですけどね(笑)。ロケ先が決まってから、その間合いを設定した稽古を事前に行えたので助かりました。

黒木メイサ、ノースタントで挑んだアクションシーン

深町:アクションシーンの迫力は想像を超えていました。ノースタントなんですよね。

黒木:そうなんですよ。暑い時期だったので、とにかく体力をつけなくちゃと、まずは自主的にキックボクシングに通って、そこから稽古に入って。

深町:僕もキックボクシングに4年通っているんですよ。だからこそ気になったのですが、膝蹴りを喰らうシーン、大丈夫でした? けっこうしっかり入ってましたよね? 遊びでエキシビジョンマッチをしたこともありますが、見た目は地味だけどいちばん痛かった記憶があるのでハラハラしました。

黒木:ネタバレになるので演者は伏せますが、あの方、かなり激しかったんですよ。でも、当てているフリの芝居をすると、やっぱり観る人にはバレてしまう。観る人の気持ちが冷めないよう、お互いにちゃんと入れていました。もちろんパッドは入っていますが、痛くない、ことはなかったです(笑)。

小島健さん(Aぇ! group)の演技は「色気があって心をわしづかみにされた」

深町:小島健さん(Aぇ! group)演じるグラニソのあやしげな色気と無敵感も凄みがありましたね。

――小島さんとは、アクション稽古でもずっとご一緒だったんですよね。

黒木:小島さんとアクションするシーンが多かったので、稽古を通じてお互いの距離感や呼吸をつかむことができたのもよかったなと思います。ただ、小島さんはアクション以上にフィリピンの殺し屋という役作りが大変そうでした。

深町:小島さんだけでなく、男性陣の演技は色気があって心をわしづかみにされましたね。瑛子の上司・川上を演じる池内博之さんは、中国・香港映画の『イップ・マン序章』に出演されているのを見たときから、ずっと気になっていた方で。若い頃は爽やかなイケメンだったけど、今は凄みのある貫禄を放つ、いい歳のとり方をされたなあと改めて思いました。新宿南署の五条を演じる高良健吾さんも、どこか得体が知れなくて、よかったな。

黒木:高良さんは隙のあるお芝居が上手なんですよね。誰が敵なのかわからないスリリングな展開も今作の見どころなのですが、瑛子として誰に対しても警戒心を怠らずに接しているはずなのに、高良さんのにこっとした笑顔を見ると、なんだか気がゆるんでしまう。ずるいなって思いました。あやしいと見せかけて、本当に味方なのか、それとも。という演出は、高良さんに限らずすべての人に通じるものなので、ぜひ楽しんでいただきたいですね。

深町:僕も、展開を知っているはずなのにハラハラしました(笑)。

黒木:上野の街並みとか、映像としてもおもしろい出来になっていると思うんですけど、誰の視点で見るかによって正義が変わるのもおもしろいですよね。監督が、瑛子の人間味を出していきたい、とおっしゃっていたのも、たぶん、正しさなんて視点によって変わるのだということを表現したかったからじゃないかと思うんですよ。この人はこういう人、とひとつの側面で演じるのではなく、善と悪も、強さも弱さも、揺らしながら表現したいという熱い思いが現場にはたぎっていた気がします。

深町「フィクションの中では好きなことさせてくれと思うし、思う存分悪党をしばきたい(笑)」

――何か印象に残っているシーンはありますか?

黒木:そういえば、廣木監督にいきなり橋のうえで「ここからばかやろうって叫んでみて」って言われてやったら、そのまま使われていたことがありましたね。生の感情を大事にされていたんじゃないかな。他にもお二人、監督がいらっしゃいましたが、それぞれのアプローチで演出しながらまとめあげていく過程も、興味深かったです。

深町:実は僕も本編に出演しているんですよね。

黒木:そうそう!(笑) 懸賞金をかけられているんですよね。

深町:撮影見学に行ったら、いきなり写真を撮られて、どうするのかと思ったら指名手配写真にされていた。700万円も懸賞金をかけられていて、どんな悪事を働いたのかと(笑)。これからご覧になる方は、ぜひ探してみてください。

黒木:探していただきつつ(笑)、一人ひとりのキャラクターだけじゃなく、人間関係にもいろんな側面があって、何事も「これはこう」と言いきることなんてできないってことが伝わってくるストーリーなので、そこを是非楽しんでいただきたいです。路地の裏に入れば本当にこういう闇の社会が存在しているのだろうと思わされるリアリティもありますし。上野の裏社会を牛耳る奥田瑛二さん演じる有嶋とのやりとりも、注目していただきたいです。他のヤクザとはまたちがう緊張感のある関係ですが、彼の存在が、瑛子を一歩先に進ませてくれるというのも、おもしろいなと思うんですよね。

――奥田さんの、あの顔の傷跡もすごかったですね。

黒木:現場で、どれくらいの傷跡にするか、監督と細かく話しあっていました。そういう細部にまでこだわりのつまった作品だと思います。

深町:僕はやっぱり、アクションシーンに注目していただきたい。凄腕の殺し屋と腕自慢の女性刑事のぶつかりあいをみるだけで、シンプルに胸がすく。原作も、読んでスカッとしてほしいという気持ちがあるんですよ。地元の山形では作家として面が割れてきたので、品行方正に生きなきゃいけないのですが、フィクションの中では好きなことさせてくれと思うし、思う存分悪党をしばきたい(笑)。警察という組織にも思うところがあるので、「腐った警官を許さない」という義憤を抱きつつ、清廉潔白ではいられない人の姿も描きたい。その想いを、黒木さんをはじめとするみなさんが見事に体現してくださっていると思うので、どうぞ期待していてください。

取材・文=立花もも 写真=島本絵梨佳

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