なぜSNS時代のホラーは人を惹きつけるのか?『記憶汚染展』と世界48か国で興収1位を記録した映画『バックルームズ』に共通する、“共有される恐怖”の正体【ダ・ヴィンチ・恐山×頓花聖太郎対談】

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更新日:2026/8/7

 突然だが、パンダの尻尾は何色だろうか。

「白」と答える人もいれば、「黒」と答える人もいる。同じパンダを見ているはずなのに、記憶は驚くほどあいまいだ。

 そんな人間の“記憶”をテーマにした展覧会が、いま話題を集めている。会場に展示されているのは、一見すると何の変哲もない一枚のパンダの写真。しかし、その写真をきっかけに、自分の記憶や「現実」そのものが揺らぎ始める。

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「あなたが現実を信じている唯一の根拠は、あなた自身の記憶でしかありません」「では、記憶が汚染されれば、現実はどうなってしまうのか」――。

 来場者にそんな問いを突きつけるのが、『記憶汚染展』だ。

 本展は、『行方不明展』『恐怖心展』など、数々の話題の体験型展覧会を手がけてきた株式会社闇が、この夏、渋谷で開催する最新企画。脚本は作家・品田遊(ダ・ヴィンチ・恐山)氏が担当するなど、豪華なクリエイター陣が集結している。

 さらに本展は、9月4日(金)公開の映画『バックルームズ』とタイアップ。『バックルームズ』は、海外の掲示板サイトに投稿された一枚の写真をきっかけに生まれた都市伝説「Backrooms」を題材にしたホラー映画で、世界興行収入3億5000万ドル(約568億円※7月時点)、世界48か国で興行収入ランキング1位を記録した話題作だ。

 今回は、『記憶汚染展』の脚本を手がけた品田遊(ダ・ヴィンチ・恐山)氏と、株式会社闇代表の頓花聖太郎氏にインタビュー。『記憶汚染展』と映画『バックルームズ』に共通する恐怖の本質や、インターネット時代だからこそ生まれるホラーの魅力について話を聞いた。

SNSで話題沸騰中の『記憶汚染展』ができるまで

――本展のテーマは“記憶”ですが、なぜそのテーマになったのでしょうか?

頓花聖太郎(株式会社闇)さん
頓花聖太郎(株式会社闇)さん

頓花聖太郎(以下、頓花):近年AIが台頭し、あらゆることが便利になってきていますよね。一方で有能すぎるが故に、畏怖に近いものを感じる時もあります。そういった意味でハルシネーション(※AIが事実に基づかない情報を生成する現象)など、AIがもたらすものはホラーの語り口になりそうだなと考えました。

 そこから調べていく中で“マンデラエフェクト”(※見ず知らずの人たちが同じような記憶違いをしている現象)のように「人間の記憶自体も結構ハルシネーションを起こしているよな」と感じたんです。というわけで、この切り口で展覧会を作ったら面白いんじゃないかと。ちなみにマンデラエフェクトに関しては、恐山さんが死ぬほど詳しいので、ぜひ語っていただきたいです。歩くマンデラエフェクト辞典ですから(笑)。

ダ・ヴィンチ・恐山さん
ダ・ヴィンチ・恐山さん

品田遊(ダ・ヴィンチ・恐山 以下、恐山):(笑)そうですね。題材として好きですし、集合的な無意識によって、まったく根拠のないものがネットロアとして語られているようなものはもともと視聴者として楽しんでいました。今回、頓花さんから展覧会のお話をいただいた時、それを今の発展途上にあるAIの進化と絡めたら面白い見せ方ができそうだなと思ったので、参加させていただきました。

――恐山さんは、今回脚本をご担当されていますが、展覧会ではどのような部分を手掛けられたのでしょうか。

恐山:この展覧会には、ひとつのストーリーが背骨として通っているんです。その背骨をどう通すのかを話し合った上で、脚本という形に落とし込む役割を担わせていただきました。

展覧会の入り口近くに並ぶ大量のベートーヴェン。よく見ると少しずつ表情や持っているものが違う……正解は一つだけだ
展覧会の入り口近くに並ぶ大量のベートーヴェン。よく見ると少しずつ表情や持っているものが違う……正解は一つだけだ

頓花:必ずしも展示物とストーリーが全部紐づいているわけではなく、紐づいているものもある。歩きながら少しずつ展示物と物語を楽しんでいく形です。展覧会の中でストーリーを展開するにはどうしたらいいのかを、恐山さんに発明していただきました。

 観客は観客でありながら当事者になっていく。その構造によって、AI、ハルシネーション、マンデラエフェクトというモチーフをシームレスに楽しめるようになっています。

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