姉に憎悪されてもポジティブに受け止める四女にゾッ? 姉妹の愛憎が一国の運命を左右する壮大なファンタジー小説『連天乱世の四姉妹』

文芸・カルチャー

PR 公開日:2026/9/9

連天乱世の四姉妹
『連天乱世の四姉妹』(瀬那和章/双葉文庫)

 きょうだい間に生まれるのは、愛情だけではない。近しい関係だからこそ、時には嫉妬や虚栄心など、ドロドロとした複雑な感情が芽生えることもある。『連天乱世の四姉妹』(瀬那和章/双葉文庫)は、そんな身内ゆえの歪な感情が一国の命運を左右する壮大なファンタジー小説だ。

 舞台は、三帝国の脅威に晒される小国・波多留(はたる)。この国の王家には特殊な能力を持つ「花の四姉妹」がいた。波多留が存続の危機に瀕していたことから、王は病弱な四女・白漣(びゃくれん)のみを自国に残し、他の三姉妹をそれぞれ敵国になり得る三帝国へ嫁がせる。

 それから二年後、王は逝去。自国に残っていた白漣は女王に即位した。か弱く、姉たちから守られる存在だった白漣。しかし、それはかりそめの姿。実は姉たちを上回る賢さを持ち、恐るべき信念を秘めていたのだ。

 白漣は姉たちと再会し、「波多留を守るための計画」を持ちかける。だが、その裏には長女・紫洋(しよう)に悲劇をもたらす思惑が秘められていた。その企みが明らかになった時、紫洋は白漣を激しく憎むようになる。

 ところが、白漣はその憎悪すらもポジティブに受け止めた。なぜなら、彼女の中には「互いの醜い部分を見せつけ合い、壊し合って初めて、心の底から理解し合える本当の姉妹になれる」という狂気的にも思える目標があるからだ。

 シリーズ第2巻の舞台は、それから三年後の世界である。1巻で複雑な胸の内が赤裸々に描かれていた三女・紅波(こうは)は、白漣からのサポートを受けつつ、国内の治安向上や交渉事業を担当するように。夫・オルハンは皇帝への即位を志すものの、厳しい現実に直面していた。

 同時期、白漣は紫洋の企みにより、自国存続の危機に陥る。しかし、知略に長けた白蓮は、自国の存続とオルハンの皇位継承の両方を叶える策を思いつき、紅波に協力を依頼する。ところがこの計画により、白漣と紫洋の間にはまたもや深い溝が…。読者は壮大な国取り合戦と四姉妹の複雑な関係の行方の両方にハラハラさせられてしまう。

 ファンタジー作はバトルシーンがメインになりがちだが、本シリーズは登場人物たちの心理描写が細やかなので、味わい深い人間模様が楽しめるのも醍醐味だ。

 例えば、1巻では武芸が得意でありながらも城内に幽閉され、剣に携われなくなった紅波が再び剣を振るうまでの葛藤や覚醒に心揺さぶられた。また、片足を失った紅波の夫・オルハンが戦う気力を取り戻していく過程では、深い絆で結ばれた夫婦関係にも心打たれることだろう。

 そして、2巻では、明るくて誰からも好かれる次女・桃汐(とうせき)の“これまで”が明かされ、衝撃を与える。さらに、桃汐の嫁ぎ先であるバシルレーン帝国には隠された“民しか知らない恐ろしい秘密”も……。理想とはほど遠い現実に葛藤しながらも、国を変えようと奮闘する桃汐の強くて健気な姿は、心に強く残る。

 四姉妹にはそれぞれ、国と愛する人を想う優しさやゆるぎない覚悟があり、誰ひとり引き下がらない。その生き様がかっこいいことも、本作に多くのファンがいる理由のひとつなのだろう。

 なお、本シリーズでは、白漣の側近である「星羅」という人物が、30年後に四姉妹の歴史を歴史研究者に語り継ぐシーンが折々に挟まれているのも印象的だ。作者はどのような意図から、こうした構成をとっているのか。その全貌が明かされる日が楽しみでたまらない。

 果たして、白漣が理想とする「姉妹関係」とは一体どんな形なのか。そして、白漣はこの先も、どんな画策をして自国を守り抜いていくのだろうか。大陸の歴史上、もっとも忌み嫌われたと言われている白漣たち姉妹。そんな彼女たちが築く歴史や波多留の行方から、今後も目が離せない。

文=古川諭香

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