古賀及子「それでも私は東京が大好き」人気エッセイストが東京10ヶ所を“謎解き”しながら巡る。旅が苦手な人も楽しめるコツとは?【インタビュー】

文芸・カルチャー

公開日:2026/10/3

ドライな東京の街が肌に合っている

――古賀さんは母方のご家族が江戸っ子で、ご自身も東京で暮らしています。東京に対する思い入れはありますか?

古賀:めちゃくちゃあります。東京、好きなんですよね。うちの両親はもともと東京生まれで、神奈川や埼玉を転々としましたけど、結局東京に戻ったんです。祖父母はどちらも東京に住んでいたので、おばあちゃんちに行くときも東京。そういうホーム感はありますね。埼玉ではニュータウンに住んでいたんですけど、独特の雰囲気に馴染めなくて、10代後半で逃げ帰るよう東京に戻ってきました。私のような軟弱者は東京のようなドライな街が合ってるのかなって。東京は救ってくれた街だし、守ってくれている街でもありますね。

――たしかに東京って、つながっているけど干渉し合わない感じがあります。

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古賀:どんな人間でも指差されない。良し悪しですけど、私はそれが好きで。ギラギラして華やかだと思いますし、ハングリーな感じも好きですね。私もガッツがあるほうなので、一旗あげようという気持ちで(笑)。

苦手意識って? 憧れていた旅で見つけたもの

――もともと旅や散歩が苦手だったそうですが、そういったものにどんなイメージを持っていましたか?

古賀:「たゆたう」っていうことが苦手で。散歩や旅はまさにたゆたうことだと思っていました。心が赴くまま、あちこちブラブラして。予定も立てるでしょうけど、フラッとどこかに行くような、心の余裕があるイメージ。私はすごくせっかちで、計画通り、脇目も振らずに物事を進める性分。その自覚があるから、私と散歩はそもそも親和性が低い。それが苦手意識につながっていました。

――それでいいかなと思っていた一方で、旅上手な人たちへの憧れがあったそうですね。

古賀:旅の豊かさみたいなものを堪能している人たちの余裕のある感じに憧れていました。どうせ楽しいんだろうな、羨ましいな、って思いながらも、自分は無関係だと。若干拗ねているのに近い距離の取り方をしていました。一人でフラッと散歩に行くなんて、良くないですか? 私とは違う充実のかたちだなと。

――東京日帰り旅を経て、旅は少し身近になったのでしょうか。

古賀:ただ歩き出すだけで良かったんだとわかったので、苦手意識は思い込みだったんだなって感じましたね。荒療治ですけれど、行ってしまえ! と出かけたら結構楽しかったっていう。私は苦手を商売にして生きていますが、散歩に克服完了のチェックマークがつきました(笑)。自分には関係ないって勝手に線を引いていたのは自分だったと気づけて良かったです。

――古賀さんと同じように、苦手意識はあるけど旅に憧れる人がいるとしたら、どうやって一歩踏み出したらいいと思いますか?

古賀:私の場合はエッセイ執筆っていう得意なものと紐づけたからできたんですよね。だから、皆さんすでにやっているかもしれないけど、サッカーや野球で応援に行くとか、アイドルを追いかけるとか、美味しいものを食べに行くとか、好きなものと組み合わせて旅に出るとスムーズなのかなと。テーマパークが廃業してしまったりと気になっているものが今後なくなってしまう可能性もあるし、死ぬまでにやっておきたいリストみたいなものを作って、To Doを潰す感覚で行くのもありかもしれないですね。

取材・文=吉田あき、撮影=後藤利江

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