電子書籍アワード2012 – 電子書籍大賞決定

2010/10/31

電子書籍の文化や市場を活性化することを目的として昨年創設された「電子書籍アワード」。読者を感動させた作品をより多くの人々に知ってもらうため、また作品を生み出した制作者のさらなる活躍を願って、今年も第二回を開催する運びとなりました。読者の皆様から寄せられた推薦作品の中から実行委員会による一次選考でノミネート15作品が選ばれた後、審査員による厳正な審査の結果、電子書籍大賞および各部門賞が選ばれました。

⇒【大賞発表】電子書籍アワード2012の記者発表会の模様はこちら(2012/3/21(水)開催)

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受賞作品一覧

電子書籍大賞

電子書籍版イチロー・
インタヴューズ

著者 石田雄太

企画・制作/株式会社文藝春秋、株式会社博報堂DYメディアパートナーズ、株式会社博報堂DYインターソリューションズ、データ提供/株式会社データスタジアム、映像提供/Major League BaseBall Advanced Media,LP.、開発/株式会社アルフレッドコア、デザイン/株式会社ウィッシュボーン・アド・コーポレーション

受賞者コメント

『電子書籍版 イチロー・インタヴューズ』は、雑誌『Number』に綴ってきたイチロー選手へのインタヴューの集大成です。この『電子書籍版 イチロー・インタヴューズ』は、そのインタヴューで語られたメジャーリーグの名場面を動画でも堪能できるという、実に斬新な作品でありました。プレーを活字で表現した書き手としては、これほど怖いことはありません。しかし活字と映像をリンクさせながら物語を読み進めるスタイルは、とても贅沢な体験でした。このたび大賞を受賞させて頂いたのは、書籍化に力を尽くして下さった文藝春秋のイシハラ氏、電子書籍化に奔走頂いた博報堂DYメディアパートナーズのコッシー氏のおかげでもあります。そして、イチロー選手に対しても、感謝の気持ちでいっぱいです。本当にどうも、ありがとうございました。

審査員による選評

「とにかく“すごい” のひと言に尽きる。メジャーリーグの映像あり、アメリカの全球場での成績ありと、かゆいところに手が届く構成。人物アーカイブとしてのひとつの到達点。他のスポーツ選手やアーティスト、作家など、あらゆる表現者の同様のものを読んでみたい。本よりも圧倒的にリッチでお得な1 冊」(横里)「 写真はどれも躍動感があり、野球初心者としては動画と連動しているのもありがたい。野球ファン、イチローファンにとってはもちろん垂涎ものだろうが、野球のルールもいまいちわからず、WBC が何かも知らなかった私が初めて“野球っておもしろい” と思えた」(一青)「 内容と連動し、読者が求める箇所にちゃんと動画が配置された構成や見やすさに好感。何年にもわたるインタビューも素晴らしく、イチロー選手という素材の魅力がさらに輝いて見える」(市川)

谷川俊太郎の「谷川」

著者 谷川俊太郎

企画・制作/株式会社ナナロク社、株式会社リアルコーヒーエンタテインメント、面白法人カヤック

受賞者コメント

川からは桃太郎も流れてきたんだから、俊太郎が流れてきてもいいんじゃないか、と思いついたのは実は私じゃありません。私は詩を提供しただけ。あとは三人(三社)寄れば文殊の知恵で、いつの間にかテスト版ができてきて、私は川音と小鳥のさえずりが欲しいと入れ知恵しました。 釣りでは待つことが大切なんだそうですね。私も詩の最初の数行は理詰めで考え出すのではなくて、意識下から上がってくるのを待つので、このアプリとは相性がいいんです。詩作品そのものというより、詩と読者をむすぶ面白い方法が受賞したことを、ことのほか嬉しく思います。 一同を代表して、「谷川」を推してくださった皆様に厚く御礼申し上げます。

審査員による選評

「正直、嫉妬するくらいにいいと思った。Twitter 上にそれぞれの呟きが流れていくように、谷川さんの文章が川を流れていく。そしてその中で自分の気に入ったものだけを拾い上げていくという感触が、詩の雰囲気も含めて、アプリの特性と完全に一致している。自分もアプリ製作者なので、アプリを評価する際はちょっとだけ意地悪を言いたくなるのだけど、でも、これは完璧」(森川)。「メニュー画面となる川に、各作品のタイトルではなく、それぞれの印象深いフレーズが流れてくる。その点に、紙媒体とは異なる「デジタル・デバイス上の詩」を成立させる意気込みを感じた。フレーズと詩全体の印象が必ずしも一致しないことが、読む者にいい意味での驚きと発見を与えてくれるのも、階層性を持った電子書籍ならではの仕掛け」(市川)

panologue vol.0

制作/有限会社ノーザンライツ

受賞者コメント

パノラマ写真の魅力は枠にとらわれず広い視野で自由に風景を眺めることができること。より多くの人にその可能性に触れてもらいたいと、仲間たちとともに「panologue」のプロジェクトを立ち上げました。 まだ創刊準備号の段階ながら書籍賞をいただけたこと、創刊号と今後の展開へのエールと受け止め、身の引き締まる思いです。パノラマという言わば飛び道具の部分だけで注目されるのではなく、いい記事だった、いい写真だったという内容の部分で勝負できるよう、今後とも研鑽を重ねていきたいと思います。 4月上旬までに創刊号を発行し、その後は本誌を年2回程度のペースでじっくり作り込んでいく予定です。また別冊としてパノラマの写真集的なものを並行して出していきます。ご期待下さい!

審査員による選評

「パノラマ写真を自分で触り、動かし、視点を変えるというのが表現として新しく、ひとつの発見。また伝えるための手法としても有効。取材現場で写真を撮っても、平面だとなかなか伝えたいものが表現しきれず、かといって動画で360 度映すと撮る者の意図が入るため、そこにあるものを切り取ることはできない。ジャーナリズム的な観点でも空間の広がりにこれだ!と気づかされた」(津田)「 もともとパノラマは19 世紀パリ万博で人気を博して「俯瞰的近代」の訪れを告げた芸術の方法だった。映像コンテンツが動画ベースに大きく移行するだろう電子書籍時代の冒頭に、視点を回して全方位が見渡せながらも対象は静止している「動と静の境」を表現したコンテンツが作られることは、作品そのもののおもしろさ以上に、歴史的な意味がある。私たちの「現代」の揺らぎを捉えた作品だ」(市川)

ぴよちゃんの おともだち

著者 いりやま さとし

制作/株式会社学研教育出版、
株式会社フィジオス

受賞者コメント

世の中に星の数ほどある絵本アプリの中から、この作品をえらんでくださり、ありがとうございます。大変光栄です。今回の受賞は、学研さんの企画力とフィジオスさんの技術力の賜物です。9 年前に発売された『ぴよちゃんの おともだち』。僕の中では古い作品が、最も新しいツールでアプリになるなんて、不思議で新鮮です。僕がしかけ絵本を描くのは、「親子のコミュニケーションのツールであってほしい」と思っているからです。その点、『ぴよちゃんの おともだち』アプリは、子ども自身の発見もたくさんあり、読み手や声かけが必要で、そのバランスが絶妙だと思います。これからどんどん技術が進歩していって、デジタル絵本も一人遊びではなく、「親子のコミュニケーションを深める」方向に向かってほしいと思っています。

審査員による選評

「横スクロールは絵本との相性もいいし、ひとつひとつの場面でも、触っていて楽しくなるので、子供と一緒に遊びたいと思わされる。また、ただ触って動かすというギミックの部分にとどまらず、物語ときちんとリンクしているところが絵本としてのクオリティを押し上げていると感じた」(高橋)。「 インタラクション性をもたせる仕掛け絵本を電子書籍にするとどうなるか、という問いへのひとつの答えを示している。子供がもっとも心を奪われるのは、“つまむ”“押す” ことへの誘惑だったりする。その意味で、仕掛け絵本と電子媒体の相性の良さを改めて感じた。細部まで工夫が凝らしてあり、設計が見事」(津田)「 子供たちと一緒に遊んでみた中で、唯一“もう1 度やりたい” とせがまれた作品。蛙がぴょんと飛ぶ、雨をはじくなど、さまざまな仕掛けで子供を飽きさせない」(一青)

僕らの漫画

制作/「僕らの漫画」制作委員会、
デジタルカタパルト株式会社

受賞者コメント

この度は特別賞を頂き、誠にありがとうございます。震災後「漫画家として何ができるか」という問いかけがツイッター上で飛び交う中で 「漫画を描きたい」という漫画家達の想いがあって実現した企画です。被災地の方々は、震災直後はもちろん、その後も大変苦しい状況が続いていく。それでも心の救済のための物語や娯楽がきっと必要とされる時がくる。その時のために時間をかけて、チャリティーだからといって変にかしこまらず、いつも通り思いっきりやろう、それが合い言葉でした。無償で制作費を負担してくださった小学館様、同様に協力してくださったデジタルカタパルト様にお礼申し上げます。賞金は寄付に回させて頂きます。

審査員による選評

「何かを試みたいと思った時のアクションのしやすさが電子書籍にはあると改めて感じた。チャリティー企画なので原稿料はないそうだが、気合の入った作品ばかりで読み応えは十分。漫画家たちが普段発表しているスタイルと違う作品も多い。商業から離れ、完全に“作品” となった時にこういうものを描くのかという驚きと、自由度が広がってくる面白さがある」(横里)

BCCKS

制作/株式会社BCCKS

受賞者コメント

先日、BCCKS は電子書籍を1 冊から印刷製本することができる『紙のBCCKS』というサービスを開始しました。これで、電子書籍のマルチデバイス展開、紙の本への展開のほか、本の販売や個人・法人への印税分配機能も備えたサービスとなりました。当初より掲げている「誰でもリスクなく出版することができる場を創出する」という理念に一歩近づいたところでの受賞を、本当にうれしく思います。今後も、既存の概念にとらわれない「あたらしい出版」市場の創出、開拓、ひいては出版市場の拡大の一助となることができるよう、よりよいサービスとは何かを考えながら前進していきます。応援をよろしくお願いします!

審査員による選評

「試みが野心的。自分で書き、自分で出版し、売り上げも確保するという、誰もが望む電子出版の要素をカバーしている。実現がかなり困難な分野だと思うが、試行錯誤を重ね、執拗に食いつく必死さが爽やかで潔い。声援したい。松本弦人氏のデザインも工夫されているし、電子媒体におけるリーダビリティだけでなく、紙に出力することも意識されている。料金もリーズナブルで、今後が楽しみ」(萩野)

伊集院静「男の流儀入門」

著者 伊集院静

制作/株式会社エムアップ

受賞者コメント

思わぬ賞を頂きどうもありがとうございました。読者の皆さんの選出ということで大変喜んでいます。この作品は東北大震災を基に私たちが震災に遭遇したとき、いかに行動すべきかを私なりに語ったものです。この「男の流儀入門」シリーズは今後“恋愛について”(恋愛編)、“男の旅とは”(旅人編)と続いていきます。 そちらもどうかよろしくお願いします。

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電子書籍アワード2012 概要

審査員(50 音順)

市川真人氏(「早稲田文学」プランナー/ディレクター、文芸批評家、教員など)/高橋 亮氏(AppBank 編集長)/津田大介氏(ジャーナリスト/メディア・アクティビスト)/萩野正昭氏(株式会社ボイジャー 代表取締役社長)/一青窈氏(歌手)/森川幸人氏(株式会社ムームー主宰)/横里 隆(ダ・ヴィンチ編集人)

対象作品

【期間】2011 年1 月1 日~12 月31 日の間に配信されていた作品
【ジャンル】全ジャンル
【デバイス】スマートフォン(iPhone、Android 端末)、タブレット(iPad、Android 端末)、専用端末(Reader、GALAPAGOS、Raboo)、PC

選考方法

2011 年11 月1 日より当サイトおよびtwitter にて候補作品のエントリー受付開始(2012 年1 月10 日受付終了)。一次選考を経てノミネート作品を決定したのち、審査員による二次選考を経て部門賞・大賞を決定。「読者賞」は2012 年2 月1 日より当サイトで実施する読者投票によって決定。

発表

2012 年3 月21 日(水)に行われる受賞作品発表会・授賞式にて発表

主催

電子書籍アワード2012 実行委員会

お問い合わせ先

densho@mediafactory.co.jp

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