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家族アート (シリーズ物語の誕生)

家族アート (シリーズ物語の誕生)

家族アート (シリーズ物語の誕生)

作家
伊藤比呂美
出版社
岩波書店
発売日
1992-07-06
ISBN
9784000041607
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家族アート (シリーズ物語の誕生) / 感想・レビュー

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miroku

生の人間の匂いがする。性の匂い。内臓の匂い。脳の発する本能の匂い。全ての匂いが混然一体化した生臭さがあるが、それはけして不快ではない。雑然混沌たる臭いの中心には、どこか醒めた著者の視線がある。

2013/09/10

オナニー、下痢、経血、風邪、汚ない雑然とした部屋。出てくる題材はただの日常。なのに文体、劇物のような生々しさ「私は人間である!」と宣言するオブジェはガラスに囲まれて、無味無臭の上品なものにも見えてしまう。一人称ながら客体としての家族。リバーシブル文体。主客どちら側についてるか判らないアンビバレンツな違和感は、最後の話、インディアンと非インディアンの関係性について語る<森の中>で明らかになってるようにも思える。が、どちらでもいい。彼女のキワキワな境界線上からの視点を読めるだけで十分楽しい。

2014/01/26

nightU。U*)。o○O

不思議に時系列が混線して、幾つもの物語が同時に展開しているのを俯瞰している気にさせられる。そこで起こっているのは、人間という仲間うちでの有象無象が織りなす困苦の縁起。その様は確かにアート。こういう彼女の文体は、どこかしらおかしみと悲しみが高いところにあるように思える。

2014/12/10

ybhkr

野生時代で連載されていたものが岩波から出る不思議。これはTHE伊藤比呂美だなあ、と。ディスイズTHE伊藤比呂美。もっと若い時期に読んでいたら心も細胞もズタズタに引き裂かれていただろう。しかし、今のわたしは、経血も湿疹も、あらゆる老廃物について、こんな風に生々しく語られても、シールドがあり、日常生活に支障がないようにセーブする機能がついている。小栗判官もヤンコも奥には入ってこれないの。いつかシールドを外せたらすごいことになりそうな1冊。

2014/04/10

くさてる

どこまでも迫ってくる生々しい情感。読み手の肌にまで侵食してくるような文章は、それでいて無意味なおどろおどろしさとは無縁。けれど、どこまでもぐらぐらしてくる。自分の立ち位置が溶かされて、私もずぶずぶとぬめった存在となり、降り続ける雨の下に血と粘液にまみれて、分泌液の匂いから逃れられなくなる。生理的に受け付けない、という言葉がいくらでも聞こえてくるかもしれないが、それはそれだけこの文章が、人間の生理に基づくものだからだ。それから逃げたい。でも逃げられない。生きている人間である限り。

2011/10/14

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