日没
日没 / 感想・レビュー
ヴェネツィア
最初から最後の1行に至るまで徹底して恐ろしい小説だった。しかも、物語の時間の経過とともに(当然主人公の境遇にも変化があるのだが)私たち読者が持つ不安の質も変容してゆくのである。冒頭はカフカや安部公房を思わせるが、そこからは一気に桐野夏生の小説世界に突き進んでゆく。この作品を書いた当時、桐野は齢70歳に近いはずだが、凄まじいばかりの情念とエネルギーである。しかも「書くこと」の意味を自らに問いかけつつも、あのエンディングを選ぶ。これまでの桐野にも通底しつつ、しかしこれは全く新しい境地に踏み込むものである。
2022/02/27
starbro
桐野 夏生は、新作をコンスタントに読んでいる作家です。著者の新境地でしょうか、本書は作家ブラックユーモア不条理ホラーでした。スティーブン・キングの「ミザリー」に通ずるものがあります。作家の先生達は、本書をどのような気持ちで読むのでしょうか(笑) 作中作、【読メエロ部】的作品、木目田 蟻江の「みつねむる」を読んでみたい。 https://www.iwanami.co.jp/sunset/
2020/11/12
bunmei
世の陰の部分を浮き堀にする印象の桐野作品。今回はどうしようもないくらいのイヤミスで、主人公を除く登場人物が嫌悪感満載のキャラクター。主人公が崩壊していく様をリアルに描写している。設定にはやや無理もあると感じながらも、『表現の自由』というテーマにおいては、日本学術会議の拒否問題とリンクしてしまう。本当にこんな国家権力が、日常を侵し始めているのか…。作家・桐野夏生が、本書を書こうとした背景には、執筆活動に際して、何か蟠りがあったのではないのかと勘ぐってしまう。あまりに衝撃的なラストに、言葉もなく本を閉じた。
2020/10/28
まこみや
私に赤紙が来たら、鉄砲をとって人を殺すのだろう。それが嫌なら他人に殺されるか、さもなくば自死するしか道はない。『日没』を読みながら浮かんできたのはそのようなことだ。妄想だと人は笑うかもしれない。しかし特定秘密保護法から学術会議任命拒否、2020年の東京オリンピック中止という歴史の流れは、戦前の治安維持法から滝川事件、1940年の東京オリンピック中止という歴史にダブって見える。腹立たしいのは、お偉方は以前もそうだったし、今度もまた、自死も責任も取る気はないということだ。ツケは全てこちらに回される。
2020/11/23
ムーミン
眠りが浅いままずっと変な夢を見続けているような気分でした。自分の考えに合わない考えを徹底的につぶそうとするような今の世の中の言論に違和感を感じるようになってきましたが、作品を読みながら、そんなモヤモヤ感がずっと漂っていました。
2021/06/19
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- 出版社
- 光村図書出版
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- 2023-06-26
- ISBN
- 9784813804383